皮膚・肌の症状に使われる漢方薬
皮膚や肌の症状に使われる主な漢方薬です。
ここにあるのが全てはありません。
また、漢方薬の順番に意味はありません。
参考程度に漢方薬を選ぶときのポイントも一部記載していますが、実際に漢方薬を使用されるときは、説明書をよく読んでから服用してください。
気になることや疑問点がある場合は、あらかじめ専門家にご相談ください。
かゆみ(掻痒)
西洋薬(抗ヒスタミン薬やステロイドなど)の補助的に用いられることもあります。
また、保湿剤によるスキンケアのほか、生活の中で症状を悪化させる要因(不眠、ストレス、食事、生活環境など)があるとすればそれを減らしていくことも必要です。
- 当帰飲子(とうきいんし):皮膚が乾燥、冷え症、老人性皮膚掻痒症
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):炎症、充血、皮膚赤い、いらいら
- 温清飲(うんせいいん):黄連解毒湯+四物湯、皮膚カサカサ、熱っぽい、のぼせ、いらいら
- 茵蔯蒿湯(いんちんこうとう):体力中等度以上、便秘傾向
- 黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう):体力中等度以下、皮膚赤い、乾燥気味、眠れない
- 白虎湯(びゃっことう):体力中等度以上、痒み強い、熱感
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):白虎湯よりも津液欠乏し乾燥気味、口渇、煩渇
- 白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう):白虎湯証でさらにのぼせ
- 桂麻各半湯(けいまかくはんとう):体力中等度~やや虚弱、汗が出ないで痒い
- 六味丸(ろくみがん):体力中等以下、腎虚、陽は虚してない、または小児
- 八味地黄丸(はちみじおうがん):体力中等以下、腎虚、頻尿
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):八味地黄丸よりも尿量減少やむくみ、しびれ
- 滋陰降火湯(じいんこうかとう):高齢、皮膚が枯燥傾向で浅黒く潤いがない
- 五物解毒散(ごもつげどくさん):体力中等度以上、繰り返し出る痒み
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):陰部や肛囲のかゆみ
- 抑肝散(よくかんさん):体力中等度、興奮、怒りやすい、イライラ
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):体力中等度以下、精神神経症状(いらだち)、冷えのぼせ
- 蛇床子湯(じゃしょうしとう):外用処方、煎じ液で患部に温湿布または洗浄、激しい痒み、いんきん、たむし
- 苦参湯(くじんとう):苦参一味、外用処方、煎汁で洗う、または塗布や湿布、あせも、湿疹、毛じらみ
- 神仙太乙膏 (しんせんたいつこう):軟膏、発赤・熱感
ニキビ(尋常性ざ瘡)・ふきでもの
にきびは、思春期にホルモンの影響で起こるものの他、
思春期以降は、胃腸の問題、チョコレートなどの甘いものや油ものの摂り過ぎ、月経周期の問題、ストレスや睡眠の問題、便秘といったものが影響して起こるものがあります。
よって漢方薬では、皮膚(にきび・吹き出物)の状態とともに、これらの問題の解消を考慮しながら選ばれます。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血証、顔、あご、胸、背、月経痛
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):体力中等度以上、瘀血証、のぼせ、便秘
- 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん):桂枝茯苓丸+ヨクイニン、赤み強くない、ニキビ痕の凹凸
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):赤み強い、若者、鼻の周囲、頬、ひたい
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):一貫堂の解毒体質者、青年、脂性肌、顔中に慢性化
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):急性期(初期)、赤み強くない
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):赤み強い、化膿、痛みや痒みを伴う
- 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):体力充実、口周囲、刺激物の過食、暴飲暴食、便秘傾向
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力虚弱、冷え症、赤み薄い、月経トラブルに関連して皮膚が荒れる
- 加味逍遥散(かみしょうようさん):更年期、月経前、吹き出物、ストレス、いらいら、不眠、のぼせ
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):過労、ケミカルピーリングのしすぎ、赤み薄い小さいニキビなのになかなか治らない
- 排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう):排膿しないとき、 毛嚢炎
その他、胃腸に問題がある場合は、人参湯(にんじんとう)、帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)など
※ニキビに関しても、やはり
現在のニキビの症状を改善するための漢方薬を選ぶ方法と
ニキビのできにくくするための体質に合わせた漢方薬を選ぶ方法とがあります。
便秘に伴うニキビ・吹き出物
- 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
- 調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
- 麻子仁丸(ましにんがん)など
便秘⇒お腹(消化器)の症状に使われる漢方薬へ
酒さ(あかはな)
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):酒さ鼻(あかはな)に適応あり、体力中等度以上
- 葛根紅花湯(かっこんこうかとう):体力中等度以上、便秘傾向、エキス製剤なし
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):体力中等度以上、目の充血、イライラ
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):体力中等度以上、熱感、ほてり、口渇
その他、体力中等度以下(虚証)の場合で加味逍遙散、桂枝茯苓丸などの駆瘀血剤、温経湯、温清飲など
湿疹・皮膚炎
皮膚の症状に合わせて使用するだけでなく、体質改善を目的に漢方薬を使う場合が考えれますので、ここに挙げる以外にも応用される漢方薬はいくつもあると思われます。
体質面では、体力の有無、熱感や冷えの有無、皮膚はジクジク(湿潤)かカサカサ(乾燥)か、その他の随伴症状も総合して選択しなければいけません。
- 茵蔯蒿湯(いんちんこうとう):体力中等度以上、口渇、便秘
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):熱感強い、イライラ、のぼせぎみ
- 三物黄芩湯(さんもつおうごんとう):手足の湿疹、手足のほてり
- 黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう):かゆみ、カサカサ、冷えのぼせ、不眠の傾向
- 温清飲(うんせいいん):皮膚乾燥気味、赤み、熱感、かゆみ
- 黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう):体力虚弱、発疹、皮膚のびらん
- 帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう):体力虚弱、治りにくい化膿性皮膚疾患
- 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎ):体力虚弱、あせも、分泌液が多いもの
- 黄耆桂枝五物湯(おうぎけいしごもつよう):体力中等度以下、かゆみ、しびれ
- 升麻葛根湯(しょうまかっこんとう):感冒の初期で発疹をともなう
- 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう):体力中等度以上、分泌物が多い、浮腫状
- 紫根牡蛎湯(しこんぼれいとう):頑固な皮膚病
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血証が顕著
- 加味逍遥散加川芎地黄(かみしょうようさんかせんきゅうじおう):手湿疹で乾燥や亀裂
- 温経湯(うんけいとう):手湿疹、主婦湿疹
- 当帰飲子(とうきいんし:皮脂欠乏性湿疹
- 柴胡清肝湯(さいこせいかんとう):小児の体質改善
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):乾燥傾向、発赤、化膿、脂漏性湿疹
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):乾燥気味、皮膚が浅黒い、手の平・足裏が汗ばむ
- 消風散(しょうふうさん):風湿熱証、夏に悪化しやすい、発赤、ジクジク(分泌物多い)、水疱、貨幣状湿疹
- 梔子柏皮湯(ししはくひとう):体力中等度、湿熱、熱感、かゆみが強い
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):身体上部、赤く腫れる、化膿性炎症
- 治頭瘡一方(ぢづそういっぽう):体力中等度以上の大人または小児、頭部や顔面の湿疹
- 荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん):急性化膿性皮膚疾患の初期
- 乙字湯(おつじとう):肛囲
- 五物解毒散(ごもつげどくさん):体力中等度以上、繰り返す湿疹、かゆみ
- 白虎湯(びゃっことう):体力中等度以上、痒み強い、熱感
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):白虎湯よりも津液欠乏し乾燥気味、口渇、煩渇
- 白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう):白虎湯証で上衝(のぼせ)が顕著
- 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):慢性の皮膚病、体力充実、便秘がち
- 紫雲膏(しうんこう)
- 神仙太乙膏 (しんせんたいつこう)
じんましん
蕁麻疹は、皮膚に突然発症するもので、強い痒みを伴い、赤く膨れます。
通常は数時間以内に、長くても数日以内には消失し、痕跡は残りません。
何らかの刺激によって起こるわけですが、原因は様々で、ストレスによるものや、原因不明のものも多くあります。
一時的なものだと、原因が違っていても、基本的には西洋薬(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬)が有効です。
漢方薬は、慢性的なものや再発を繰り返す場合に、体質や症状によって選ばれます。
また、漢方では蕁麻疹そのものは「風邪」によって引き起こされていると考えますので、それに対する漢方薬も使われます。
- 茵蔯蒿湯(いんちんこうとう):体力中等度以上、口渇、便秘傾向
- 茵蔯五苓散(いんちんごれいさん):浮腫、お酒の飲みすぎ
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):特徴のない慢性蕁麻疹、繰り返し起こるりときに化膿
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):深紅色、夜間に増悪
- 消風散(しょうふうさん):赤みやかゆみが強い、温めると増悪、口渇
- 温清飲(うんせいいん):痒みと熱感、全身に蕁麻疹
- 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう):急性、アレルギー性の浮腫
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):熱感、かゆみが強い
- 当帰飲子(とうきいんし):血虚、乾燥肌、乾燥で悪化
- 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう):寒冷蕁麻疹
- 桂麻各半湯(けいまかくはんとう):手足や顔、少し熱感
- 葛根湯(かっこんとう):感冒など感染症で悪化
- 柴朴湯(さいぼくとう):息苦しさを伴うとき
- 香蘇散(こうそさん):魚やエビカニなどにあたって蕁麻疹
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):心因(ストレス)性、イライラ
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):気虚、疲労で慢性蕁麻疹
- 五苓散(ごれいさん):浮腫が顕著、皮膚描画症、ミミズばれ
- 大柴胡湯(だいさいことう):体格・体力は充実、胸脇苦満、ストレスや飲酒で悪化
手足のほてり
- 三物黄芩湯(さんもつおうごんとう):手足が火照って眠れない、皮膚がカサカサしてかゆい
- 六味丸(ろくみがん):腎陰虚、頻尿、口渇、皮膚や唇の乾燥
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん):腎陰虚、頻尿、むくみ、喉が渇く、顔や四肢のほてり
- 温経湯(うんけいとう):血虚、皮膚や唇の乾燥、冷え症
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):熱感と喉の渇き、暑気あたり(熱中症)
白虎加人参湯だけが、実際に熱くなっているとき(実熱)の漢方薬で、つまり冷やす薬です。
それ以外は、血や津液の不足(陰虚)によるほてりに対する漢方薬で、つまり陰を補う薬です。
三物黄芩湯・六味丸・知柏地黄丸はとくに、胃腸障害の副作用に注意が必要です。
しもやけ
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 当帰芍薬散加人参(とうきしゃくやくさんかにんじん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 甲字湯(こうじとう)
- 温経湯(うんけいとう)
- 四物湯(しもつとう)
- 紫雲膏(しうんこう)
しみ(肝斑)・肌あれ
美容的問題である場合は、保険適応にはなりませんのでご注意ください。
バランスのとれた食事や、十分な睡眠も必要です。
しみ(肝斑)や肌荒れ(皮膚の感想)の漢方薬も、皮膚の状態だけではなく、身体全体の症状も考慮し、月経周期が整ったり、胃腸の調子や、睡眠の質が改善するような漢方薬を体質に応じて選ぶのが良いでしょう。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷え症、浮腫傾向、顔色がわるい、めまい
- 当帰芍薬散加人参(とうきしゃくやくさんかにんじん):当帰芍薬散+人参
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血、目の下にクマ、月経痛、肩こり
- 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん):桂枝茯苓丸+ヨクイニン、手足の荒れ
- 甲字湯(こうじとう):桂枝茯苓丸+生姜・甘草、桂枝茯苓丸で胃もたれする場合
- 四物湯(しもつとう):血虚、皮膚の枯燥、胃腸障害はない
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):疲労倦怠、体力低下、手足の冷え、皮膚の乾燥傾向
- 加味逍遥散加川芎地黄(かみしょうようさんかせんきゅうじおう):加味逍遥散+四物湯
- 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう):皮膚の乾燥傾向、手足のあれ、体力中等度、連用はしない
- 葛根紅花湯(かっこんこうかとう):しみ、便秘傾向、体力中等度、エキス製剤なし
- 温経湯(うんけいとう):手荒れ・唇の荒れ、唇の乾燥、冷え症、手足のほてり
- 三物黄芩湯(さんもつおうごんとう):手足のほてり、皮膚カサカサして荒れる
- 大柴胡湯(だいさいことう):体力は充実、肥満、胸脇苦満、常習便秘
- 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう):月経困難症、瘀血、便秘
- ヨクイニン:ハトムギ、⇒ヨクイニンとは
疣贅(ゆうぜい)・いぼ
- ヨクイニン
- 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)※連用する場合はヨクイニン単味の方がいい
水虫
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
- 消風散(しょうふうさん)
火傷
- 紫雲膏(しうんこう)
- 神仙太乙膏 (しんせんたいつこう)
その他
以下のような症状にも漢方薬が有効なことがあります。
ご相談ください。
- 帯状疱疹後神経痛
- 皮膚異常感覚症候群(ムズムズ脚症候群)・アロディニア
- 乾癬
- 手湿疹・手掌角化症
- 掌蹠膿疱症
- 円形脱毛症
- etc