【五苓散(ごれいさん)の解説】~水毒に用いる代表的な利水薬~

五苓散の解説漢方薬の解説

五苓散(ごれいさん):GRS

分類的には「利水薬」として有名な漢方薬。

症状的には、水湿・水毒による尿量減少と口渇に対する代表処方。

二日酔い対策の漢方薬として常備している人も多いかもしれません。

基礎研究によって、細胞膜にある水の通り道「アクアポリン」への作用が明らかになってきていますし、

最近では脳外科、脳神経外科領域での使用量も増加しています。

五苓散には、身体の各組織での水の偏在を調整する作用があります。

浮腫(むくみ)または消化器の中に余分な水があった場合は、その水を血管に引き込んで回収しますので、水の巡りが正常にもどり、その結果として、尿量が増えます。つまり正常に排泄します。

一方、西洋薬の「利尿剤」は、腎臓に作用して、なかば強制的に尿を生成します。

ですので、漢方薬の「利水剤」と、西洋薬の「利尿剤」の作用は、大きく違います。

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五苓散の出典

『傷寒論』『金匱要略』(3世紀)

五苓散を構成する生薬

五苓散の名前の最初に「五」がつきますから、5つの生薬が配合されています。

  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 白朮(ビャクジュツ)または蒼朮(ソウジュツ):以下「朮」と書きます。
  • 沢瀉(タクシャ)
  • 猪苓(チョレイ)
  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ):以下「桂枝」で書きます。

水分代謝の観点でみると、

茯苓が、消化管の水の吸収や、組織の余分な水を血管に引き込むことに作用し、

沢瀉猪苓が、尿の生成に関わっています。

桂枝は、血液循環を促進するので、血中に引き込んだ水の循環も助けています。

ちなみに、

温性である桂枝が不要な場合は、五苓散から桂枝を抜いたものがあり、「四苓湯」(しれいとう)と呼ばれます。

五苓散から、桂枝と朮を抜いて、(消炎や止血のために)滑石と阿膠を加えると「猪苓湯」です。

五苓散から、桂枝と猪苓を抜いて、(補血のために)当帰・芍薬・川芎が合わさると「当帰芍薬散」になります。

五苓ですので本来は散剤です。
原典では煎じるのではなく、生薬の粉末をそのまま服用することになっています。
(吐き気があるときにも使用する方剤なので、おそらく煎じ薬よりも散剤の方が服用しやすかったのではないかということも推測されますが)
エキス製剤や煎じ薬とした場合は、桂枝の揮発成分などが飛んで、本来のものより薄くなってしまっている可能性を考えると、
エキス製剤や煎じ薬の五苓散(料)は、少し四苓湯に近いかもしれません。

五苓散の典型的な症状

五苓散が漢方薬でファーストチョイスとなる典型的な症状があります。

口渇と尿量減少

添付文書の最初に書かれている五苓散のもっとも典型的な症状が、口渇と尿量減少です。

実際には消化管や組織の細胞間には水分がたくさん余っているにも関わらず、

血管内の水分が不足している状態です。

水を飲んでもそれが血中にまわらない→口渇が治らない

尿の原料とするための血中の水分が足りていない→尿が少なくなる

そういう口渇と尿量減少があれば、五苓散がファーストチョイスとなります。

浮腫があれば、その水を血中に引き込みますし、

下痢であれば、消化管内の水を吸収します。

水分の偏在が改善され、血が潤えば、口渇が和らぎ、尿が出始めます。

古典にはこの口渇と尿量減少の症状を「消渇」と書かれています。
飲んだ水がどこかに消えたかのように水を飲んでも渇きがある、という意味です。

お酒を飲み過ぎた翌朝にもよく経験します。尿がしっかり出始めると、口渇だけでなく、吐き気や頭痛も同時にスッキリしてくると思います。(二日酔いには黄連解毒湯と併用されることも多いです)

また、夏は熱中症予防のために水分をたくさん摂っているのに、お腹にたまるばかりで、水分がうまく巡らないために、渇きが止まないということもあります。

水逆の嘔吐

上記の口渇を起こしている状態で、さらに重篤というか特殊なものに、水逆の嘔吐があります。

喉が渇いて水を飲みたいのだけど、飲むとその水を(苦痛をともなわずに)すぐに吐いてしまう症状です。

胃が水を受け入れられず、水の逆流を起こしています。

これを水逆(すいぎゃく)と言います。水邪の上逆です。

子どもの周期性嘔吐症もこれに相当します。

このとき五苓散を服用しても、それもすぐに吐いてしまう可能性が高いです。

すぐに吐いた場合はまた繰り返し服用するか、もしくは、例えば、服用するときの水分を極少量にする、または坐薬や腸注として投与するなどの工夫が必要になります。

口渇・尿量減少・水逆の嘔吐は、五苓散の典型的な症状ですが、

しかし、実際はそのような症状がみられなくても、

水毒、浮腫、水分の停滞などが疑われるときは、五苓散の適応になります。

口渇・尿量減少にはそれほどこだわらくても使用できます。

五苓散の適応症状

基本的には、水が過剰にあることが原因の症状であれば応用できるので、適応範囲は非常に広いです。

  • 下痢、急性胃腸炎、嘔吐、胃内停水
  • 浮腫、むくみ、口渇
  • 膀胱炎、腎炎、ネフローゼ症候群、尿毒症
  • 悪心、二日酔い、車酔い、船酔い(回転性)めまい、メニエール、頭痛、片頭痛、頭重、三叉神経痛
  • 帯状疱疹
  • 胃腸炎型のカゼ、小児の周期性嘔吐
  • 暑気あたり、熱中症、つわり(悪阻)
  • 慢性硬膜下水腫、慢性硬膜下血腫の治療または再発予防、術後の脳浮腫の予防、肺水腫

添付文書上の効能効果

【ツムラ】

口渇、尿量減少するものの次の諸症:
浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病

【クラシエ】他

のどが渇いて、尿量が少なく、はき気、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:
水瀉性下痢、急性胃腸炎 (しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ

【コタロー】

咽喉がかわいて、水を飲むにも拘らず、尿量減少するもの、頭痛、頭重、頭汗、悪心、嘔吐、あるいは浮腫を伴うもの。
急性胃腸カタル、小児・乳児の下痢、宿酔、暑気当り、黄疸、腎炎、ネフローゼ、膀胱カタル。

【三和】

口渇、めまい、頭痛、浮腫などのあるものの次の諸症
急性胃腸カタル、はきけ、ネフロ—ゼ

【薬局製剤】

体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、 むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:
水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しない こと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔

気圧が関係する頭痛

原則とは少し異なる特殊な使い方になりますが、

天候の悪化するとき、気圧の低くなりはじめたときに起こる頭痛に五苓散が効果があることが知られており、頻用されています。

「天気頭痛」と言われています。

気圧の変化で頭痛が起こることを自覚されている方もいますし、そうでない方もいると思いますが、

「雨の前の日の頭痛には五苓散」というのは覚えておいて損はありません。

そして、気圧が関係している頭痛ですので、

天候の問題だけではなく、

飛行機に乗った時、離着陸のときに頭痛が起きる人

山登りのときに頭痛がする人も、一度お試しください。

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五苓散使用時のポイント

「水」の滞りを治す効果があり、水分代謝異常に関する様々な症状に対応します。

慢性的な症状に長期間使用されることもありますが、どちらかというと、突発的な症状に頓服で用いられることの多い処方です。

一時的な症状であれば(保険的には問題があるかもしれませんが)1日3回食前に、とかよりも、

症状があるときに頓服で服用して、症状が治まるまで数時間おきに繰り返し服用し、症状が治まったら中止、という感じで使う方が効果が実感できるのではないかと思います。

また必要に応じて他の方剤と組み合わせてもよく用いられます。

小柴胡湯+五苓散→柴苓湯
平胃散+五苓散→胃苓湯
五苓散+茵陳蒿→茵蔯五苓散

五苓散の注意点

  • 嘔吐下痢や暑気あたりに用いる場合で、脱水症状があるときは、五苓散だけではダメで、経口または点滴による補水(補液)が必須です。
  • 熱証を呈するもの、身体の熱感や、高熱による発汗で口渇が激しいときは白虎加人参湯などを検討してください。
  • 五苓散を用いる「下痢」は、水分が多い、水様の下痢です。泥状便で冷えが原因のものには人参湯などが適します。
  • 尿に回る水の量が少ないために、尿の量が少なく、また色が濃くなり、排尿時に違和感が起こるくらいのときには、猪苓湯(ちょれいとう)の方が適します。
  • 吐き気において、実際に水を吐くわけでなく、ムカムカとする吐き気が続くときは、茯苓・朮の配合されたものよりも、半夏・生姜が配合された漢方薬の方が良い場合があります。
  • もし、五苓散の服用によって便秘になるなら、水をさばきすぎて腸管内が乾燥してきてしまっているのかもしれません。逆に腸内を潤したい場合は、麻子仁丸(ましにんがん)などを用います。
用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

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