【柴胡桂枝湯】の解説~やや虚証向きの柴胡剤~

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)の解説

柴胡桂枝湯さいこけいしとうは、「小柴胡湯しょうさいことう」と「桂枝湯けいしとう」とが合わさったものです。

柴胡湯+桂枝湯⇒柴胡桂枝湯

ただし、割合的には半分ずつではなくて、「小柴胡湯」が2/3、「桂枝湯」が1/2くらい。

ですので重点は少し「小柴胡湯」の方に寄っています。

分類としては、やや虚証きょしょう向きの「柴胡剤さいこざい」となります。

構成生薬

小柴胡湯の生薬と、桂枝湯の生薬とを、分かりやすいような順で並べます。

  • 柴胡(サイコ)△
  • 黄芩(オウゴン)△
  • 人参(ニンジン)△
  • 半夏(ハンゲ)△
  • 生姜(ショウキョウ)△◆
  • 大棗(タイソウ)△◆
  • 甘草(カンゾウ)△◆
  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ)◆
  • 芍薬(シャクヤク)◆

△小柴胡湯
◆桂枝湯

するとお分かりでしょうか?

柴胡桂枝湯は、小柴胡湯と桂枝湯を合わせたもの、といっても、

実は、ただ「小柴胡湯」ベースに、桂枝と芍薬を加えたもの、と考えることができます。

「柴胡桂枝湯」
||
「小柴胡湯」+(桂枝・芍薬)

桂枝が加わることで、

小柴胡湯の適応症状に、頭痛・発熱・悪寒を伴う症状にも対応できるし、

もしくは、芍薬が加わることで、

小柴胡湯の適応症状に、腹部の痛みを伴う症状にも対応できることになります。

柴胡桂枝湯のポイント

小柴胡湯」と「桂枝湯」の二つを兼ね備えるので、

小柴胡湯の症状と、桂枝湯の症状と、二つの中間のような症状と、幅広い症状に用いることができます。

ただ、各生薬の配合量は少なくなるので、作用はややマイルドです。

逆に、明らかな「小柴胡湯」でもなくて、明らかな「桂枝湯」でもない、症状がはっきりせず迷ってしまうときでも使いやすい方剤です。

カゼをこじらせてお腹にきた、

カゼが長引いて精神的につらくなった、

風邪薬や解熱鎮痛剤を服用して胃を悪くしてかえって具合が悪くなった、等々。

その他、柴胡剤として様々なストレス性の症状(ストレスによる腹痛など)にも応用されます。

効能・適応症状

よって柴胡桂枝湯の適応範囲は非常に広いもので、下のようなものに使用されることがあります。

  • 長引いたカゼの症状(微熱、悪寒、頭痛、身体痛)
  • 腹痛・吐き気・食欲減退などの消化器症状を伴うカゼ
  • 発熱や悪寒が軽微なカゼ、扁桃炎、耳下腺炎、中耳炎
  • (ストレスによる)胃痛、腹痛
  • 胃腸炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃酸過多症
  • 胆のう炎、胆石、肝機能障害、すい臓炎
  • 神経痛、関節痛、頭痛(側頭部)、肩こり、こどもの成長痛
  • 虚弱な小児・カゼを引きやすい人の体質改善
  • 自律神経障害、不安神経症、不眠、チック、不定愁訴

添付文書上の効能効果

【ツムラ】

発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:
感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎・胆石・肝機能障害・膵臓炎などの心下部緊張疼痛

【クラシエ】他

多くは腹痛を伴う胃腸炎、微熱・寒け・頭痛・はき気などのある感冒、風邪の後期の症状

【コタロー】

自然発汗があって、微熱、悪寒し、胸や脇腹に圧迫感があり、頭痛、関節痛があるもの、あるいは胃痛、胸痛、悪心、腹痛が激しく食欲減退などを伴うもの。感冒、肋膜炎。

【三和】

自然発汗があって微熱、悪寒がし、胸や脇腹に圧迫感があり、頭痛、関節痛、食欲不振、下痢、悪心などを伴うものの次の諸症:
感冒、胃痛、腹痛、神経痛、胆嚢炎、胃酸過多症

【薬局製剤】

体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・はきけなどのあるもの の次の諸症:胃腸炎、かぜの中期から後期の症状

注意点

腹痛に用いる場合は、

桂枝加芍薬湯けいしかしゃくやくとう」や「小建中湯しょうけんちゅうとう」は、腹部全体が痛いことが多いのに対して、

「柴胡桂枝湯」は、胃やみぞおちのあたり(上腹部)の苦しさや痛みに使われることが多くなります。

もし腹部全体の痛みがあって「柴胡桂枝湯」の芍薬の量を増やしたいときは、「小柴胡湯」+「桂枝加芍薬湯」で代用できます。

激しい症状(高熱のときや、ひどい嘔吐・下痢など)には対応しません。

柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう」と名前が似ていますが、柴胡桂枝湯に乾姜を加えると柴胡桂枝乾姜湯になるわけではありません。配合生薬がだいぶ異なりますので、代用はできません。

長期間使用する場合は、甘草の副作用に気を付けてください。

インターフェロンとの併用は禁忌ではありませんが、「小柴胡湯」と同様の注意は必要です。

柴胡剤の、実証向きか虚証向きかの目安

出典

『傷寒論』『金匱要略』(3世紀)

(『傷寒論』における太陽病~少陽病の合病に対する代表処方です。)

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