【柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の解説】~冷えのある虚証向きの柴胡剤~

漢方薬の解説

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう):SAKK

小柴胡湯」と同じく柴胡剤のグループに入ります。

柴胡剤の中では、虚証の傾向がある方に用いられることが多い漢方薬です。

別称として、柴胡桂姜湯(または柴胡姜桂湯)と書かれることもあります。

柴胡桂枝湯に乾姜を加えたもの」ではありません。名前は似ていますが、生薬構成が異なりますので気を付けてください。

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柴胡桂枝乾姜湯を構成する生薬

  • 柴胡(サイコ)
  • 黄芩(オウゴン)
  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ)
  • 乾姜(カンキョウ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 牡蛎(ボレイ)
  • 栝楼根(カロコン)(=天花粉)
「柴胡剤」に共通して配合される柴胡・黄芩の性質は、寒性燥性です。

柴胡桂枝乾姜湯にもやはり柴胡・黄芩が配合されていますが、

その寒性は、桂枝(桂皮)・乾姜の温性薬の配合によって、

また燥性は、栝楼根・甘草の潤性薬の配合によって、調整されています。

そのため柴胡剤の中でも、虚証の傾向のある人にも使いやすい方剤となっています。

柴胡桂枝乾姜湯の効能・適応症状

柴胡桂枝乾姜湯も、小柴胡湯などの柴胡剤と同じように、適応症は非常に幅広いものになっております。

大きく分けると、3通りの使い方が考えられます。

1.長引いたカゼ、こじらせたカゼ。過度の発汗で軽度の脱水があったり、体内の冷え(裏寒)がみられるとき。原典の『傷寒論』に近い使い方です。(後述

2.あるいは、柴胡・黄芩・牡蛎に鎮静作用があるため、神経過敏でイライラなど神経症や不眠のある人にも使われます。

3.または、生津(潤いを増す)や止渇の作用がある栝楼根が含まれるため、粘膜の乾燥症状に応用されることがあります。

具体的に柴胡桂枝乾姜湯が使われる可能性がある症状を挙げると次のようなものがあります。

  • カゼがこじれて慢性化したときの諸症状(微熱・咳・痰・胸部不快感・疲労感)
  • 気管支炎や肺結核など呼吸器疾患による体力消耗
  • 発熱や悪寒が軽微なカゼ、扁桃炎、耳下腺炎、中耳炎
  • 虚弱な人の不眠・精神不安・怖い夢をみる
  • 動悸・息切れ・寝汗・頭汗(首から上の汗)・焦燥感
  • 更年期障害・血の道症・過敏性腸症候群
  • 軽度の口渇、粘膜の乾燥(シェーグレン症候群、ドライアイ)

添付文書上の効能効果

【ツムラ】

体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏のものの次の諸症:
更年期障害、血の道症、神経症、不眠症。

【コタロー】

衰弱して血色悪く、微熱、頭汗、盗汗、胸内苦悶、疲労けん怠感、食欲不振などがあり、胸部あるいは臍部周辺に動悸を自覚し、神経衰弱気味で、不眠、軟便の傾向があって、尿量減少し、口内がかわいて空咳などがあるもの。
感冒、心臓衰弱、胸部疾患・肝臓病などの消耗性疾患の体力増強、貧血症、神経衰弱、不眠症、更年期神経症。

【薬局製剤】

体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇きがあるものの次の諸症:
更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎

柴胡桂枝乾姜湯のポイント

体力がない人が、風邪(カゼ)を引いて長引いてしまったときにも用いられますし、

慢性疾患で「柴胡桂枝湯」証よりも虚証の状態にも用いられます。

一般的には虚弱なタイプ、華奢でいかにも疲れていそうな感じがする人、気疲れの多い人によく用いられます。
  • 仕事はなんとか頑張って終わらせるけど、家に帰り着くとそのままソファーやベッドに倒れ込むようなタイプの人

  • 来客があるときは完璧なおもてなしをしているようだけど、一人になるとグッタリして寝込むような人

温める生薬である桂枝・乾姜が配合されるので、冷えがある人や、冷えると症状が悪化する人に適します

服用するときは温かくして服用した方が良いです。

栝楼根は潤す作用が強いために、口の渇き等、粘膜の乾燥症状に対応します。

神経質な人、神経過敏で神経衰弱、不眠、精神神経症状をともなう場合で、虚証の傾向がなければ「柴胡加竜骨牡蛎湯」が使われます。

柴胡桂枝乾姜湯の副作用・注意点

柴胡剤ですが半夏が配合されておらず、吐き気には対応しません。

慢性疾患に長期間使用する場合には、甘草の副作用に気を付けてください。

虚証向きの方剤ですが、人参や大棗などは配合されず、補気作用はあまり期待できません。

ですので、さらに体力の低下がみられ、強い倦怠感、食欲不振、下痢などがあり、「補気」の必要がある場合は、柴胡も含む方剤としてまず「補中益気湯」等を使った方が良いかもしれません。

柴胡桂枝湯と名前は似ていますが、生薬の構成は違うものですので混同しないようにしてください。間違えないように、柴胡桂枝乾姜湯のことをあえて「柴胡姜桂湯」と書き区別することがあります。(柴胡桂枝湯は、小柴胡湯桂枝湯が合わさった方剤です)

柴胡桂枝乾姜湯の出典

『傷寒論』(3世紀)

傷寒五六日、已に発汗して復た之を下し、胸脇満して微かに結し、小便利せず、渇して嘔せず、但だ頭に汗出で、往来寒熱して心煩する者は、此れ未だ解せずと為すなり。柴胡桂枝乾姜湯之を主る。

訳↓

傷寒(熱性疾患)にかかって5~6日、すでに発汗した後にまた下してしまった。
胸脇が張って、少しコリがある。
(軽度の脱水で)小便の出が悪く、口の渇きがあるが、吐き気はなく
ただ頭部にだけ発汗して、悪寒や発熱し、胸苦しい。
それはまだ治癒していないわけだから、柴胡桂枝乾姜湯を使いましょう。
解説↓
  • 胸脇苦満や往来寒熱というキーワードがありますので、小柴胡湯のような柴胡剤を用いるケースです。
  • しかし、脱水の傾向がみられますし、吐き気はありませんので、小柴胡湯から燥性の半夏は抜かれています。
  • 代わりに潤性の栝楼根が入ります。止渇と鎮咳の作用を期待しています。
  • 胸脇満の微結に対して牡蛎が用いられ、神経症状や動悸、また寝汗に対応します。
  • 下してしまう消化器の冷えには、生姜よりも温める作用の強い乾姜が使われます。
  • 桂枝(桂皮)がまだ残っている表証を治すと同時に、乾姜とともに温めつつ、気や津液を巡らせます。
  • 津液の巡りを悪くする可能性のある人参や大棗は配合されません。
  • それが柴胡桂枝乾姜湯です。

『金匱要略』(3世紀)

柴胡桂姜湯は、瘧の寒多く、微かに熱あり、或いは但だ寒して熱せざるを治す。(ぎゃく病篇『外台秘要』ノ附方)

⇒柴胡桂枝乾姜湯は、冷えの症状(寒症状)の多い熱性疾患を治療します。

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