【防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の解説】~脂肪を燃やすだけじゃない本当の効果~

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の解説漢方薬の解説

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):BTS

市販されている「防風通聖散」は、脂肪燃焼効果があるということに注目されて、今では肥満の改善薬として認識されています。

テレビのCMをみても、ネットで検索をしても、防風通聖散といえば、お腹の脂肪を燃やしてくれる、ダイエットに適した漢方薬、という触れ込みばかりが目について、

いかにも内臓脂肪を減らす漢方薬といえば、みたいなイメージになってしまっていますが

病院や漢方薬局では肥満症の人のほか、高血圧の人や、便秘症、または皮膚疾患など様々な症状に対して利用されている漢方薬です。

防風通聖散の名前の由来について

防風(ぼうふう)とは、防風通聖散に配合されている生薬のひとつ。

ですが、防風通聖散には18種類ものたくさんの生薬が配合されていて、なぜ、防風だけが漢方処方名を飾っているのか。

」は通じる。「」は聖人君子などに使う文字で、大変素晴らしい人やモノ。「」は粉にした薬を表します。

そのまま考えると、防風通聖散という名前は、「防風が含まれていて、とても素晴らしい効果が得られる薬」という意味になります。

これでは何に効く薬なのか、何が素晴らしいのかは全く分かりません。

そこで、18種類もの生薬が含まれていながら、なぜ防風なのか、と考えてみましょう。

防風通聖散の名前の由来である「防風」は、たんに防風という生薬が含まれているということではないのではないか。

防風とは、風(ふう)を防ぐ、風邪(ふうじゃ)を防ぐ、

つまり風邪(ふうじゃ)から身を守ってくれる。

風邪(ふうじゃ)は東洋医学の場合、カゼ(感冒)のことだけではありません。目に見えないものに侵される病気を含みます。

防風通聖散にはそんな病を防ぐ目的がある薬なのです。

防風通聖散の出典について

『宣明論』(せんめいろん)、正式名称は『黄帝素問宣明論方』

防風通聖散は、12世紀の中国の医学書に記されている処方です。

日本では、明治~昭和の時代に、森道伯(もりどうはく)という漢方家によって用いられました。

のちにその弟子の矢数格先生が『漢方一貫堂医学』という本を出版し、その治療が紹介されています。

内容を簡単に書きますと…

『漢方一貫堂医学』では、人の体質を「瘀血証、臓毒証、解毒証」の3つに分類しています。

瘀血証は、通導散(つうどうさん)が合う体質のこと。

解毒証は、柴胡清肝散(さいこせいかんさん)・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)が合う体質のこと。アレルギー体質に似ています。

そして、防風通聖散の合う体質というのが「臓毒証」体質です。

ここで言う臓毒の「毒」とはポイズンのことではなく、

例えば、水が余分に溜まっている状態を漢方で「水毒」と言うように、

体にとって必要以上に溜めこんだものを、

漢方では「毒」と表現することがあります。


「臓毒(ぞうどく)」はつまり、

新陳代謝が悪く、身体の臓器に毒となるほど滞積したものがある人、

またはそういう毒を溜めやすい体質のことを指します。

よって、飲食して色々と内臓に溜めこんで太っている人、いわゆるメタボには防風通聖散がいいのだ、と

今日、肥満症に防風通聖散がよく使われるようになったのは、このことを都合よく解釈したことがはじまりだと考えられています。

防風通聖散で痩せられる、とは『漢方一貫堂医学』にはもちろん書かれていません。

ダイエット目的で防風通聖散が注目されはじめたのは、近年のことです。

臓毒とは、食毒・風毒・水毒・梅毒の四毒のことだと書かれています。
詳しく知りたい方は、復刻版が楽天市場などで購入できますのでどうぞ。
こちら→漢方一貫堂医学(オンデマンド版)

防風通聖散の成分(構成する生薬18種)

18種類、一応書きますが、覚える必要はありません。

後半におおかまに各生薬のはたらきを解説しています。

  • 麻黄(マオウ)
  • 石膏(セッコウ)
  • 白朮(ビャクジュツ)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 大黄(ダイオウ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 芒硝(ボウショウ)または硫酸ナトリウム
  • 当帰(トウキ)
  • 川芎(センキュウ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 連翹(レンギョウ)
  • 薄荷(ハッカ)
  • 防風(ボウフウ)
  • 荊芥(ケイガイ)
  • 桔梗(キキョウ)
  • 滑石(カッセキ)
  • 黄芩(オウゴン)
  • 山梔子(サンシシ)

どの生薬の配合量が特に多いとかはなく、

すべての生薬が少量ずつバランスよく配合されています。

※ただし、芒硝(硫酸ナトリウム)は、無水(乾燥)のものか含水のものかで、表示の見かけ上の重さが異なります。

ダイエット目的で防風通聖散が多用されすぎていることに対して苦言を述べる専門家もいますが、これほど市販薬で多用されていて、本来防風通聖散が合わない体質の方もたくさん使っている割に、副作用が大きな問題になっていないのは、やはり、数多くの生薬がバランスよく配合されているからではないかとも思われます。

防風通聖散の効能・適応症状

防風通聖散は例えば次のような症状に利用されることがあります。

  • 肥満症、脂肪太りの体質改善
  • 高血圧の随伴症状や、肥満に伴う症状(肩こり、のぼせ、動悸)、高脂血症、糖尿病、動脈硬化症、痛風
  • 便秘、むくみ(浮腫)、二日酔い、痔、円形脱毛症
  • 炎症性の皮膚疾患(慢性湿疹、吹き出物、ニキビ、慢性蕁麻疹、成人型アトピー性皮膚炎)、鼻づまり(蓄膿症、副鼻腔炎)

防風通聖散の製品(医療用・市販薬)

医療用の製剤は、ツムラ、クラシエをはじめ、東洋・JPS・オースギ・コタロー・テイコク・マツウラ・三和・太虎堂・本草、と各漢方メーカーから出ています。

製品番号は62番。

ほとんどが顆粒状ですが、クラシエには錠剤(エキス錠)もあります。

漢方薬の中には、お湯で溶いてから服用した方が効果が出やすいものもありますが、防風通聖散に関してはその必要性はあまりないと思われます。

医療用エキス製剤の添付文書上の効能・効果

【ツムラ】【クラシエ】他

腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:
高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘

【コタロー】

脂肪ぶとりの体質で便秘し、尿量減少するもの。
常習便秘、胃酸過多症、腎臓病、心臓衰弱、動脈硬化、高血圧、脳いっ血これらに伴う肩こり。

【三和】

脂肪ぶとりの体質で便秘したりあるいは胸やけ、肩こり、尿量減少などが伴うものの次の諸症
肥満症、高血圧症、常習便秘、痔疾、慢性腎炎、湿疹

市販(OTC)のエキス製剤

市販薬に関しても書き切れないくらいたくさん販売されています。

「防風通聖散」の名前で販売されているもの以外にもたくさんあります。

ナイシトールZ(小林製薬)、コッコアポプラスEX錠(クラシエ)などは有名ですが、スリムゴールド(大協薬品)、ココスリム(サトウ製薬)、アンラビリゴールド(阪本)ラーメンドF(寧薬)、ボーツーンN(小太郎)、サンスラットEX(大峰堂)、エバユーススリムF(第一三共)

防風通聖散とは分かりくい名前のものもあります。

やはりターゲットを絞ったかようにスリムとかスラットとかの名前が付くものが多いですね…

商品のパッケージに「満量処方」とあれば、

医療用の製品と1日分あたりの配合量が変わらないことを謳っています。
(一般的に市販の漢方製剤で満量処方ではないものは、医療用に比べ、成分の配合量が1/2~2/3であることが多いです)

ただし、満量が必ずしも良いとは限りません。成分量が多ければ、それだけ副作用のリスクも増しますので注意してお使いください。

18種類の生薬から考えられる防風通聖散の作用

「防風通聖散」には、18種類の生薬が使われています。生薬の多さがポイントです。

例えば、便秘に使う漢方薬で一番有名な「大黄甘草湯」は、大黄と甘草の2種類だけしか使われていません。

「防風通聖散」は便秘の改善にも使われますが、使われている生薬の数をみただけでも、ただ便を出すだけの便秘薬ではないことは明らかです。

まず肥満について

単純な話をすると、(摂取カロリー)-(消費カロリー)がマイナスになれば痩せます。

摂取カロリーを少なくするか、運動して消費するカロリーを増やすか、またはその両方を実践すれば良いわけです。

逆に摂取カロリーの方が多い場合は、その余分なエネルギーが体に蓄えられます。過剰に溜めこめば肥満となります。

肥満は「自分は容姿などは気にしないから太っていても平気」という問題でもありません。

過剰に体に蓄えられたものによって、若いころは気づきませんが、そのまま年齢を重ねると、臓器には負担をかけ、血管は傷んでいきます。

動脈硬化によって高血圧、狭心症、脳梗塞、月経異常などの疾患につながります。

肥満を漢方的な解釈で

カロリーとは熱量のことであり、温度を上げるエネルギーをどれだけ持っているかということです。

糖類や油ものは、カロリー(熱量)のあるものです。

よって熱を発生させやすいものです。

これをいつも摂り過ぎていると、体内に熱が発生しやすくなります。

その熱を発散できなければ、体内に熱がこもります。

こもった熱は各臓腑の働きを弱らせます。

代謝が悪くなり、溜めやすい体質(肥満体質)になります。

熱が便を乾燥させると便秘になります。

便秘はまた体重増加の原因になります。

熱はまた血管内の水分を消耗するので、血液がドロドロになりますし、熱を持った血管は破れやすくなります。

高血圧や脳卒中の原因になります。

そこで「防風通聖散」を、単に脂肪を減らす、やせるための薬としてではなくて、

食べ過ぎが原因で起こる、高血圧や脳血管障害を予防する薬としての側面でみても、有益なものだと考えられます。

なぜなら、「防風通聖散」には、

①体内にこもった(発散できていない)熱を冷ます生薬

②溜め込んだものを体から出す生薬

がたくさん配合されているからです。

生薬の作用の解説

①体内にこもった熱を冷ます生薬

黄芩・山梔子・石膏 ⇒体内に発生した熱を冷ますことで、臓腑の機能を整えます。

②溜め込んだもの(熱)を体から出す生薬

人が食べ物を取り込むのは口(消化器)からのみですが、

消化吸収・代謝したものを体の外に排泄できる経路は3つ考えられます。

便として出す・尿として出す・皮膚から出す。

便として出す

大黄・芒硝 ⇒腸内を潤し、冷まし、瀉下させるのを助ける生薬です。

尿として出す

白朮・滑石 ⇒利尿効果のある生薬です。老廃物を体から尿として(熱とともに)排泄するのを助けます。

皮膚から出す

防風・荊芥・麻黄・生姜・連翹・薄荷・桔梗 ⇒老廃物や膿や熱を、体表から汗とともに発散させます。

③残りの生薬

当帰・芍薬・川芎・甘草 ⇒これらは滋養の効果がある生薬です。

つまり、発汗・瀉下・利尿で排泄させるばかりでなく、体液や体力の消耗を防ぐ滋養の生薬もきちんと補われています。

漢方的な表現で言うと、
防風通聖散の構成は、風邪(ふうじゃ)による表証の症状、風熱による症状、内熱(裏熱)の症状にすべて対応していることになります。
気血を補いながら、表証も裏証も同時に治せるという点で優れています。
エキス製剤の場合は、18種類の生薬が標準装備されている状態ですが、
例えば、麻黄は必要なさそうだから使わない、便秘は良くなったから芒硝は減らす、という具合に、
症状に応じてカスタマイズしながら用いることができれば、より一層、通聖散の名のごとく、聖なる力を感じられる薬となるかもしれません。

まとめ

以上18種類の生薬が少量ずつ、バランスよく配合された漢方薬となっています。

便や尿や汗が出やすくなるので、比較的に短期間で、脂肪が減っていなくても、体重が減る可能性はあります。

それだけで痩せたと喜んでいる人は、おそらくリバウンドします。

防風通聖散を使うならば、体重を減らすことが目的ではなく、

ダイエットしたあとの、その先に得られる疾病予防のために、防風通聖散を利用しましょう。
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防風通聖散の副作用・注意点

  • 18種類の生薬が配合されているので、他の漢方薬と併用すると生薬が重複しやすいという点があります。病院や薬局で他の薬をもらう際には「防風通聖散」を服用している旨はきちんとお伝えください。

  • 食欲があり食べ過ぎる人(で、便秘する場合)に用いる漢方薬です。胃腸が弱く、下痢をしやすい人には適しません。

  • 身体を冷やす生薬が使われているので、もともと冷え症の人は注意が必要です。

  • 当然ながら、たくさん服用したからといってそれだけ痩せられるという薬ではありませんので、用法用量を守り、ご使用ください。過剰摂取は肝機能障害を引き起こすおそれもあります。
用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

ぽっこりお腹について

ぽっこりお腹
防風通聖散が適しているぽっこりお腹は、俗に太鼓腹と言われます。

信楽焼のたぬきのような、

おへそを中心にまるくて、前に突き出しているお腹です。


それに対して、ぽっちゃりのお腹は、ぽっちゃりのお腹

はみ出した脂肪が下へ垂れ下がっています。

これは本来、防風通聖散のお腹ではありません。

水太りの肥満や気虚ならば、防己黄耆湯などの方が使われます。

 

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