「桃仁」と「杏仁」について(効能の違いと共通点)

桃仁(トウニン)と杏仁(キョウニン)

桃仁・・・バラ科のモモ(桃)の種子(仁)
杏仁・・・バラ科のアンズ(杏)の種子(仁)
生薬の分類としては、
桃仁は活血薬(駆瘀血薬)に、杏仁は化痰止咳薬として、分けられていますが
桃仁も杏仁も共にバラ科の果実の種子、ということで共通する作用も有します。2つのよく似た生薬の共通点と、効能の違いについてまとめます。

両方とも見た目はアーモンド

桃仁と杏仁。

「仁」は種を意味します。

桃の実も、杏の実(アプリコットとも言われますが)も、果物として馴染みがあると思いますが、漢方薬で使うのは種子の方です。

種子の形や色は、同じくバラ科のアーモンドみたいです。見た目によく似ていています。
桃仁の方がやや大きくて扁平、杏仁の方が先がより尖っている、などの特徴はありますが、一つ一つの形はバラバラなので区別が難しい生薬です。

ましてや実際に生薬として使用する際には、細かく砕いたり、すりつぶしたりしてから用いるので、そうなったらほとんど見分けがつきません。

漢方薬に使用する生薬の桃仁(トウニン)

局方の桃仁の刻み

桃仁・杏仁の共通の効果

植物の種子であるので、ともに油分が豊富に含まれています。

ですので、まず桃仁・杏仁ともに、腸内を滑らかにする潤腸通便(じゅんちょうつうべん)の効果が期待できます。
腸管内が乾燥して起こる便秘に使われます。例えば潤腸湯(じゅんちょうとう)が代表的ですが、高齢者や産後の血虚による便秘に用いられます。

逆に言えば、両方とも、軟便や下痢をしているときには使えないということです。

なお、アーモンドも薬膳では同様に、潤腸通便の効果があります。ただし、ビタミンEなども含んでいますが、油分が豊富ですし、やはり一度に食べ過ぎると胃もたれや下痢をするので気をつけてください。

桃仁の特徴

桃仁は、

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)

などに代表される駆瘀血剤に配合されますように、瘀血を除いて血流を改善させる作用がよく知られます。
瘀血による痛みがあるときにも使われます。

瘀血を除く作用と、通便の作用で、「瀉」するはたらきの多い桃仁であり、妊婦さんには禁忌となります。

桃を主薬にしている方剤はあまり多くはないようですが、
悪い鬼を退治するのは、桃太郎
女の子に悪いことが起きないように祈るお祭りは、桃の節句
下腹部の悪い瘀血を取り去るのは、桃仁です。

杏仁の特徴

※漢方で使う場合は「アンニン」ではなく、「キョウニン」と言います。

杏仁といえば鎮咳去痰作用がよく知られています。

麻黄湯(まおうとう)
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
「五虎湯」(ごことう)

または「キョウニン水」など、咳止め効果を期待して使われることが一般的です。
痰を除き、「気」を降ろして咳をしずめ、呼吸をラクにします。
(桃仁にも少し、咳止めの効果があるとも言われます。)

※一般にデザートで食べる杏仁豆腐は、現在は、生薬である杏仁(キョウニン)とは違って、匂いの似ている別のものが使用されていることがほとんどだと思います。杏仁豆腐に上記のような効能は期待されないでください。

バラ科のアミグダリンに注意

アーモンドの花

最近は(リアリティがないためか)見かけなくなりましたが、たまにテレビドラマや推理小説の中で、事件現場にかけつけた刑事または探偵のような人が「アーモンド臭がするぞ」「つまり、青酸化合物による毒殺だ」と推理する場面があったりしました。

バラ科の植物の種子に共通して含まれる成分のなかに、アミグダリンという青酸配糖体があり、これが摂取後にシアン化水素(アーモンド臭がすると言われる)に変化し、毒となり得るものだからです。大量に摂取してはいけません。

実際にはよほど多量の摂取でなければ事件にまではならないにしても、悪心・嘔吐、下痢、めまい、頭痛などの中毒症状を起こすおそれはあります。

食用とされているアーモンドや、杏仁豆腐に使われる甘い杏仁などは、アミグダリンの含有が極めて低い品種ですので心配いりません。
また梅干しや梅酒のウメでは、加工の段階で減毒されています。

しかし、モモ、ウメ、サクランボ、ビワ、リンゴなど、バラ科の果実の種子には、特に未熟なものには、アミグダリンが多く含まれていると言われていますので注意が必要です。

熟した実(果肉)の方であれば問題ありませんが、ご自身で種子を(生で)薬として摂取してみようとすることは控えてください。

⇒参考ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう(農林水産省)

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