潤腸湯(じゅんちょうとう)
便がとても硬い、ウサギの糞のようなコロコロの便で、硬くて出ないといった便秘に用いられます。
便が乾燥しているだけでなく、 顔にツヤがない、肌がカサカサ乾燥していて、全身状態をみても、体液(潤い)が不足しているような、 特に高齢者に多い、頑固な便秘です。
潤腸湯という名前のとおり、腸を潤してあげることを目標にしている漢方薬です。
高齢者や比較的体力が虚している人に対して用い、腸を潤してあげることが主なので、 下剤としての強さは、他の大黄剤と比較すると、少し穏やかなものになっています。
効能・適応症状
便秘
高齢者の便秘、皮膚乾燥などがある便秘、月経と関連する便秘、産後の便秘など
生薬の構成と特徴
構成生薬
- 当帰(トウキ)
- 地黄(ジオウ)
- 大黄(ダイオウ)※
- 甘草(カンゾウ)
- 黄芩(オウゴン)
- 麻子仁(マシニン)※
- 桃仁(トウニン)
- 杏仁(キョウニン)※
- 枳実(キジツ)※
- 厚朴(コウボク)※
※は麻子仁丸(ましにんがん)と共通する生薬です。
潤腸湯=(麻子仁丸-芍薬)+(当帰・地黄・甘草・黄芩・桃仁)
各生薬のはたらき
当帰・地黄・麻子仁・桃仁・杏仁・甘草など、潤す作用のある生薬がたくさん入っています。
麻子仁、桃仁、杏仁は、油分によって腸内を滑らかに、
当帰や地黄は、補血作用で滋潤し、
と同時に桃仁はその「血」を巡らせ、 枳実や厚朴は「気」を巡らせて、蠕動運動を助けます。
黄芩は、乾燥による生じる熱を取ります。
また、滋潤作用の行き過ぎを黄芩でセーブして、蠕動運動が強くなり過ぎないように甘草でセーブがかかっています。
便秘に用いる漢方薬の中では、配合生薬の種類が多いですが、大黄の配合量は控えめで、比較的瀉下作用はマイルドです。
高齢者に限らず、皮膚の乾燥感がみられ、便が硬めの人の便秘には、試してみることができます。
副作用・使用時の注意点
- 長期間処方されることもありますが、基本的には大黄剤ですので、便の状態に応じて適宜増減、調節しながら服用して構いません。
- 下痢ぎみのときには中止してください。
- 潤腸湯が効かないときは、麻子仁丸(ましにんがん)をお試しください。
- 高血圧の人の便秘に使うと良い、と説明されることがあります。便通が改善した結果、血圧が下がることはあるかもしれませんが、潤腸湯に直接血圧を下げる作用はないと思われます。
- 当帰や地黄により、腹痛、下痢、悪心、胃もたれを起こすことがあります。
- 大黄・桃仁が含まれますので妊娠中の服用は念のため控えておいてください。
- 他の漢方薬と併用するときには、甘草の重複による副作用にご注意を。
- 市販薬に「潤腸丸」という似た名前のものがあります。潤腸湯と作用は同じようなものですが、生薬構成が異なる別の方剤ですので、混同しないようにしてください。
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