【攻下薬】~大黄・芒硝~

3-(1)  攻下薬(こうげやく)

攻下薬は、苦・寒の性味をもち、瀉下薬の中では瀉下作用が強い部類になります。
「苦」は下降させるはたらき、「寒」は熱を冷やすはたらきを示します。
単に便を出すだけではなく、清熱の作用も兼ね備えていることが重要です。
つまり、便秘の時には、腸の中の熱があって、それによって津液が消耗して、便が固くなっているような場合(熱結の便秘)に適していることになります。

腸の中に、食べ物、水飲、便、熱などが停滞している、各種の裏実証に応用することができます。
苦・寒の性味は清熱瀉火薬と同様で、攻下薬に関しても「内臓の熱邪を下から出す」という目的で使用されることがあるので、必ずしも便秘でなくても使われることがありますし、腸以外の場所の症状に使われることもあります。

逆に便秘に使用される場合においては、
便秘の原因として、熱邪ではなく、寒邪によって腸の動きが悪くなって便秘になっているときには、細辛や乾姜などの温裏薬を使うべきですし、
気の滞りで、お腹が張って便秘しているときには、理気薬(陳皮、枳実の配合)なども考慮しなければいけません。

大黄と芒硝についてまとめますが、どちらも瀉下作用が比較的強いので妊娠中の使用はできるだけ避けてください。大黄の方は特に、月経中、産前産後、授乳期にも慎重に用いる必要があります。

大黄(だいおう)

加藤清正

タデ科ダイオウ属植物の根茎
※ルバーブという野菜(和名をショクヨウダイオウといって、茎の部分をジャムに使ったりする酸味のある野菜)も同じ仲間ですが、漢方に使うものとは別の品種です。

【性味】苦 寒
【帰経】脾 胃 大腸 肝 心包
【効能】瀉下攻積 清熱瀉火 解毒 活血袪瘀 清泄湿熱

①瀉下攻積
便秘と言えばまず大黄。清熱+攻下で、実邪(強い敵)であっても排除してしまう大黄は「将軍」という異名をもち、大黄単味で使用した場合の処方名を「将軍湯」と言います。特に熱結の便秘にピッタリです。

  • 大黄単味では瀉下作用が強すぎるので一般的には甘草を配合して作用を緩和させることが多いです。⇒大黄甘草湯
  • もし、腸内の熱だけじゃなくて、全身的に高熱、腹痛、うわごとなどがあって一刻も早く瀉下させたいときには、芒硝や厚朴、枳実の力も借ります⇒大承気湯
  • 逆に体がだるいとか元気がないとかの気虚(であれば人参)、血虚(であれば当帰)、また熱による津傷(津液が消耗されていれば地黄や麦門冬)など適切な補剤を併用するのがベターです。水がなく干上がっている川(腸)では船(便)は進みません。
  • また、湿熱の下痢のときに、あえて瀉下させて(通因通用の原理でもって)根本的な原因を速く除去する目的で使用されることがあります。

②清熱瀉火
火邪や熱邪の上炎で、のぼせ、顔面紅潮、目が赤い、鼻血などの症状に、黄連や黄芩と一緒に用いられます。⇒三黄瀉心湯

③解毒
熱毒による充血、炎症の痛み、化膿性疾患に応用されます。⇒乙字湯
牡丹皮などと一緒に使う大黄牡丹皮湯は、かつては虫垂炎の薬でした。

④活血袪瘀
各種の瘀血を伴う症状に使用されます。便通と瘀血証を一緒に改善することで、治りが早くなることは多いです。
女性の月経痛、月経不順、出産後の腹痛に使う桃核承気湯に配合されたり、
打撲など外傷の瘀血にも使われます。通導散治打撲一方

⑤清泄湿熱
湿熱の黄疸に茵陳蒿や山梔子などと一緒に配合されます。⇒茵蔯蒿湯
頻尿や排尿痛のある淋証(膀胱炎)に、木通や車前子と一緒に配合されます。⇒八正散

その他、近年には大黄に含まれるタンニンの向精神作用にも注目されています。大柴胡湯柴胡加竜骨牡蛎湯など。

芒硝(ぼうしょう)

塩

[芒硝:硫酸ナトリウム十水和物(含水硫酸ナトリウム):Na2SO4・10H2O]
または[無水芒硝:乾燥硫酸ナトリウム:Na2SO4
本来は天然の鉱物を加工して析出する結晶ですが、工業的に製造もされています。

【性味】鹹 苦 寒
【帰経】胃 大腸
【効能】瀉下通便 潤燥軟堅 清熱消腫
①瀉下+軟堅
鹹の軟堅のはたらきがあります。堅いものを軟らかくするイメージです。
実熱が胃や腸に積滞して、大便がウサギの便のように硬くなったのを潤し、軟らかくして排便しやすくします。
よく大黄と併用する形で配合されます。⇒調胃承気湯
②清熱
外用として使用する(適量を水に溶かして患部に塗るとかする)と、清熱瀉火の効果があります。
のどの痛み、口内炎、皮膚のはれもの、乳腺炎などに使うことができます。
以下は、芒硝または硫酸ナトリウムについての補足(ウンチク)です。
  • 正倉院に遺る芒硝の成分が「硫酸マグネシウム」であるため、昔の芒硝は「硫酸マグネシウム」だったのではないかと考えられています。で、そうした場合、古典での「朴硝」というのが硫酸ナトリウムを含む結晶混合物ということになるらしい。のですが、いずれにしても(作用に違いがあるのかどうか不明で)現在の芒硝を硫酸ナトリウムとすることに差し支えはないものとなっています。
  • 芒硝の「芒」の字は、鉱物から成分を分離するときにできる「芒(のぎ):イネ科の植物の種子の先にある針状の突起物」のような針状の結晶体を意味しています。
  • 芒硝の「硝」の字は、鉱物である「硝石」に由来しているようですが、硝石の成分である硝酸カリウムは使われてません。生薬名の芒硝の「硝」、成分名の硫酸ナトリウムの「硫」、「硝」と「硫」についても混同されやすいです。
  • 製品によっては成分表記に「芒硝」(ボウショウ)ではなく、「硫酸ナトリウム」と記載されているものがあります。生薬を知らない人にとっては「硫酸ナトリウム」と書かれている方が分かりやすい気もしますが、逆に、漢方薬なのに何か化合物が添加されているのかと不安になる人もいるかもしれません。硫酸は強い酸ですが、強い酸と強い塩基(水酸化ナトリウムなど)が中和してできた塩(えん)の水溶液は中性です。硫酸ナトリウムは、水分をよく吸収するので、乾燥剤として用いることがある一方で、食品添加物としても認められている成分です。また、入浴剤にも入っていますし、天然の温泉の代表的な泉質でもあります。肌にも良い成分です。バスソルトとして、グラウバー塩とか、グラウバーソルトという名前でも販売されています。温泉地に行くと、温泉につかる以外に、飲んでも良い温泉があります。硫酸ナトリウムを多く含む温泉は昔は芒硝泉と言って、これも飲めるところがあると思います。温泉の飲用による効能にはおそらく「便秘」なども書かれているのではないでしょうか。
  • 通常、硫酸ナトリウムの結晶は10水和物として(その方が安定なので)存在し、これを一般には芒硝、またはグラウバー塩と言います。ですので、芒硝または硫酸ナトリウムと書かれているものと、無水芒硝、無水硫酸ナトリウムまたは乾燥硫酸ナトリウムと表記が様々ありますが、前者のたんに芒硝(硫酸ナトリウム)と書かれている方は、含水硫酸ナトリウム、または硫酸ナトリウム十水和物であると考えていいと思います。水(H2O)がついているかどうかだけのことなので、薬の効果としてはどちらでも全然構わないのですが、大事なことは、当たり前ですが、水を含んでいるものとそうでないもので、重さが変わるということです。硫酸ナトリウムの量が同じだとしても、無水のものの方が見かけ上(約ですが)半分くらい軽くなります。だからもし他の製品と芒硝の配合量を比較したときに、量が倍くらい違ったとしても、硫酸ナトリウムの量が多いのか、たんに水を含んでいるので多いようにみえるだけなのか、間違えないようにしなければいけません。
  • 芒硝のラテン名「SAL MIRABILIS」のsalは塩、mirabilisには素晴らしい・驚くべき・奇跡的という意味があります。「奇跡の塩」「素晴らしい天然の薬」だということです。

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