便秘の漢方薬【大黄甘草湯】の解説~便秘薬としての効果と使い方~

大黄甘草湯の解説!

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)の解説

市販薬も含め、一般的に広く利用されている便秘薬です。

大黄だいおう甘草かんぞうの2種類の生薬で構成される大黄剤だいおうざいの基本方剤であり、便秘に対する基本方剤でもあります。

単純に、便秘薬として使用することは間違いではありませんが、

漢方では「瀉下薬しゃげやく」と表現しまして、たんに「便を排出する」ことだけではなく、

「腸内にこもった熱、炎症による熱を(便とともに)外に出す」という目的もあります。

また、大黄はセンナ・アローゼン・プルゼニド(センノシド)など一般的なセンノシド製剤とは異なっていて、

瀉下薬として用いる他、清熱薬せいねつやくとして、さらには活血化瘀薬かっけつかおやく駆瘀血剤くおけつざい)としての側面があることも重要です。
また、鎮静作用ももちます。

一緒に配合される甘草は、大黄の作用で蠕動ぜんどう運動が亢進することによって起こる腹痛や、腸管のけいれん、排便時の痛みを緩和させます。
また甘草が加わることで滋潤じじゅん作用(硬い便に潤いをつける効果)が足されています。

構成生薬

メーカーのものによっては大黄と甘草の割合が異なるものがありますが、
原典の『金匱要略きんきようりゃく』に従うと、大黄:甘草の配合比率は4:1です。

効能・適応症状

大黄甘草湯は、主に↓のようなものに利用されます。

  • 便秘(習慣性便秘)
  • 便秘に伴う腹部膨満・吐き気・便秘して食べ物を吐くもの・腸内異常醗酵・食欲不振
  • 便秘を伴うふきでもの(にきび)・湿疹・皮膚炎・痔
  • 頭重・のぼせ・精神的興奮・過食
  • 大腸内視鏡検査前の処置として

添付文書上の効能効果

医療用エキス製剤

便秘症

薬局製剤

便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和

効果のポイント

瀉下しゃげ作用を有する「大黄」だけでなく「甘草」が組み合わさっているので、センノシドなどの便秘薬で腹痛を起こしてしまう人にも使いやすくなっています。

用量依存的に、大黄の量が多いほど(甘草の量が少ないほど)、瀉下作用が強くなります。

しゃす作用の強い大黄を主薬とする漢方薬ですので、通常は体力がある人(実証)によく用いられます。

大黄は寒性かんせい(冷やす性質)の生薬ですので特に、胃腸に熱がたまりやすく、その熱で便が乾燥してきて便秘になっている人に適しています。

胃に熱がある人の特徴は↓のような感じです。

  • 食欲があり、食べる量が多い人
  • 若年者
  • きちんと食べているけどすぐにお腹がすく人
  • 飲酒をする人、お酒が入ると食欲が増す人
  • 辛いもの、濃い味のもの、油ものをよく食べる人
  • 口が渇く、胸焼けがする、口臭がある人
  • 食事しているとよく汗をかく、食後に冷たい水を飲みたくなる人

また、胃の熱が体表に及ぶと、にきびや吹き出物など、皮膚の炎症の症状として現れることがあります。

大黄甘草湯は、便を出し、腸内のこもった熱を冷まし、消化管のはたらきを正常にする。それにより、膨満感や吐き気を解消させる効果もあります。

シンプルな構成の漢方薬ですので、便秘の原因に応じて、他の漢方薬と併用しながらの服用も可能ですし、

とりあえず大黄甘草湯を試してみて、ダメだった場合に次の手を考えるという感じで使われることもあると思います。

副作用・使い方の注意点

基本的には頓服とんぷくとして(便秘のときだけ)用いてください。便が出れば中止します。(大黄甘草湯だけで体質改善の効果は期待できません。食事や運動の見直しも必要です。)

効き方には個人差があります。症状に応じて用量・用法は調整して構いません。

単独で長期使用してると徐々に効果が悪くなってくることがあります。使用量が増えるとかえって便秘をひきおこし腹痛が強くなることもあります。

大黄の配合量が多く、胃腸の弱い人では腹痛、下痢を起こすことがあります。少量から開始してください。

服用してから効果発現までの時間には個人差があります。大体センノシドの効果発現時間は8~12時間くらいですので、朝に排便習慣をつけるためには、前日の晩に服用するのが一般的です。

学校や職場、旅先など、外出先にて便意や腹痛がきたら困る方は、朝の服用は避けたり、帰宅後や、夕食~就寝前などの時間だったり、生活に合わせて逆算して服用してください。(食前や食間にこだわる必要はありません)

お腹が冷えている人には適しません。お腹の冷えによる便秘や膨満感には大建中湯だいけんちゅうとうのような温める漢方薬を用います。

妊娠中に服用してもよいかどうかは、専門家によっても意見は分かれるところです。適量を慎重に用いれば大丈夫だと思いますが、必ず医師にご相談を。大黄には子宮収縮作用があると考えられていましたが、最近の研究では否定されています。ですが保険適応上、添付文書の記載は「投与しないことが望ましい」のままとなっています。

母乳中に大黄の成分が移行する可能性は通常用量であれば(乳児への影響も)ほとんど考えられません。ですがこちらも添付文書上は一応「慎重に投与」となっています。

子供の便秘にも有効ですが、OTCの大黄甘草湯を小児に使用する場合は、製品ごとに使用できる年齢と用法用量をよくご確認ください。

長期に使うときは甘草による副作用に注意して下さい。

大黄の成分によって、尿の色が、オレンジ色~赤色っぽくに見えることがあります。

市販の大黄甘草湯

ドラッグストアでも売られている「大地の漢方便秘薬(旧名称:タケダ漢方便秘薬)」、「大正漢方便秘薬」なども大黄甘草湯の製剤です。いずれも大黄と甘草が4:1の割合で配合されています。

錠剤タイプのものは(顆粒に比べると)便秘の程度に応じて用量調節がしやすいというメリットがあります。

ただし、瓶を開封したあとは品質が劣化するおそれがあるので、保管方法に気をつけてください。

大地の漢方便秘薬には「信州大黄」配合と書かれています。↑の方で、大黄には駆瘀血くおけつ作用などもあると書きましたが、この「信州大黄」については、大黄のなかでもとくに瀉下しゃげ作用に優れている品種、つまり便秘薬に適した大黄だとされています。

コーラックハーブ(大正製薬)という商品も「2種類の生薬由来の成分で自然に近いお通じを」と説明されていますが、こちらは「大黄甘草湯」ではなくて「センノシド(センナ)」+「甘草」です。

大黄甘草湯が合わないとき

便が硬いときは、芒硝ぼうしょうを加えた調胃承気湯ちょういじょうきとうが用いられます。

大黄甘草湯が効かない場合で、くだす作用を強めたいときは、「○○承気湯じょうきとう」系の漢方薬を検討してください。(桃核承気湯とうかくじょうきとうなど)

大黄甘草湯で腹痛を起こしやすい人は桂枝加芍薬大黄湯けいしかしゃくやくだいおうとうなどをお試しください。

高齢者の便秘には、麻子仁丸ましにんがん潤腸湯じゅんちょうとうの方が適することが多いです。

 

その他⇒便秘のときに使われる漢方薬のリスト

出典

『金匱要略』(3世紀)の方剤です。

「食し已(おわ)りて即ち吐く者、大黄甘草湯之を主る」

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