【黄連解毒湯】の解説~炎症や熱っぽい興奮を鎮静化する漢方薬~

黄連解毒湯

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の解説

黄連解毒湯おうれんげどくとうは、つよい清熱せいねつ作用をもつ漢方薬です。

清熱作用とは、熱を冷やしたり、炎症を鎮めたりする作用です。

さまざまな炎症症状(皮膚炎、口内炎、急性胃炎、充血、出血症状など)

または自律神経系の興奮が亢進している状態も鎮静化します。

その他、不眠や二日酔いにも使われています。

構成生薬と作用

黄連解毒湯に配合される4つの生薬

4つの生薬すべてが苦味のつよい生薬で構成されていて、どれもつよい清熱作用があります。

各生薬の特徴をあげると、

  • 黄芩上焦じょうしょう(肺)の熱を冷やす
  • 黄連しん中焦ちゅうしょう(胃)の熱を冷やす
  • 黄柏下焦げしょう(腎・膀胱)の熱を冷やす
  • 山梔子三焦さんしょう全体を冷やし尿とともに熱を出す+止血作用

ということになります。

ただし「黄連・・解毒湯」という名前からも分かるように、この方剤ではやはり「黄連」のはたらきが主と考えることができるので、

単独で使う場合は、(漢方における)「心」や「胃」の症状に用いることが多いです。

効能・適応症状

黄連解毒湯はシンプルな清熱剤なので、幅広い症状に応用できます。

例えば以下のような症状に使われることがあります。

  • 痒みや炎症の強い皮膚疾患(蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、酒さ、ニキビ)
  • 高血圧、高血圧に伴う不眠・精神不安・イライラ
  • 各種の出血(喀血・吐血・鼻血・脳溢血・不正出血など)
  • 胃炎、口内炎、味覚障害
  • 過飲による動悸・興奮・二日酔い(特に胃の不快感やムカツキ、嘔吐)
  • 不眠・めまい・心悸亢進・ノイローゼ
  • 降圧剤(Ca拮抗薬)の副作用による顔面紅潮・ほてり
  • その他、さまざまな疾患に他の漢方薬と組み合わせてもよく応用されます

【添付文書上の効能効果】

比較的体力があり、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらする傾向のある次の諸症:
鼻出血、高血圧、不眠症、ノイローゼ、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒

黄連解毒湯の使い方

黄連解毒湯の作用についてもう少し詳しく補足します。

炎症(熱っぽい症状)を鎮静化する

怒っている表情をした赤い顔のトマト

すべて熱を冷ます作用をもつ4つ生薬からなり、

炎症・かゆみ・出血を抑える目的で使う漢方薬の基本方剤となっています。


熱実証(暑がり)タイプ、体力がしっかりあり、のぼせ傾向、赤ら顔、イライラしている傾向がある人に適します。

熱証(実熱)の症状のときに使える、というのは、 清熱薬として、おもに炎症症状(皮膚炎、口内炎、急性胃炎、充血、出血症状など)はもちろん、

それだけではなくて、 脳の充血、自律神経系の興奮が亢進している状態もまた、熱症状ととらえることができますので 興奮状態を鎮静化する目的でも使われます。

いらいら、怒りっぽい、のぼせ、顔面紅潮、目の充血、血圧上昇など、頭に血がのぼっている感じのときです。

不眠に対して

不眠に黄連解毒湯に使う場合

あくまでも清熱作用で鎮静化するというイメージで、黄連解毒湯を用います。

  • 頭が冴えて眠れない
  • 枕元で本を読むと、その内容にのめり込んでしまい、眠くならない
  • 日中の興奮(いらいら、怒り)を夜まで引きずって眠れない

などのような眠れないものに対して黄連解毒湯が用いられます。

興奮状態を鎮めるのが目的であって、睡眠薬のように眠くなるわけではありません。

二日酔いに対して

黄連解毒湯を二日酔いに使う場合

症状としては、飲酒による胃のむかつき、悪心、嘔吐がみられるときに適します。

ほとんどのアルコールは温性~熱性の飲み物です。

飲酒過多になると、体に熱が生じます。 熱の影響が胃におよんだとき、胃炎を起こしやすい状態になります。

機能低下した胃は、飲食物を下へ送ることができなくなり、悪心・嘔吐が起こります。胃気上逆いきじょうぎゃくといいます。

熱の影響が腸にまで及ぶと、水分の吸収が追い付かず、下痢しやすくなります。

熱が(漢方における)「しん」に及ぶと、動悸やのぼせ、または顔が赤くなります。

このような体に生じた熱が原因による二日酔いの症状に黄連解毒湯が応用されます。

このときは五苓散ごれいさんと併用されることがあります。

副作用・注意点

  • にがい漢方薬です。
  • 寒性(冷やす作用)がつよいので、黄連解毒湯単独では熱証ねっしょう以外には用いられません。つまり冷えがある人には適しません。
  • 頓服とんぷくで用いても構いません。
  • 出血性の疾患(鼻血などで)はとくに冷やして服用します。
  • エキス製剤であってもお湯に溶いて服用する必要性はありません。
  • まれに山梔子で下痢を起こすことがあります。
  • 山梔子含有の漢方薬なので長期(数年以上の)服用で腸間膜静脈硬化症のおそれがある、と説明されることがありますが、黄連解毒湯の場合、そもそもあまり長期連用するような漢方薬ではありません。
  • 黄芩による肝障害、間質性肺炎の副作用に注意が必要です。
  • 黄連湯おうれんとう」という名前がよく似た方剤がありますが、生薬の構成が異なる別の漢方薬なので注意してください。
  • 腸の熱による便秘があるときには、大黄を含む漢方薬(三黄瀉心湯さんおうしゃしんとうや、〇〇承気湯じょうきとうなど)を検討した方が良いです。
  • 四物湯しもつとう」と合方すると「温清飲うんせいいん」という名前に変わります。

三黄瀉心湯との違い

黄連解毒湯とよく似た漢方薬で、三黄瀉心湯さんおうしゃしんとうがあります。

黄連解毒湯 = 黄連・黄芩・黄柏・山梔子
三黄瀉心湯 = 黄連・黄芩・大黄

黄連解毒湯の「黄柏・山梔子」が「大黄」に入れ替わると三黄瀉心湯です。

三黄瀉心湯と黄連解毒湯の使い分けはこちら

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