吐き気や嘔吐、つわりに用いられる「小半夏加茯苓湯」の解説

吐き気のため口をおさえる女性漢方薬の解説

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう):SHB

基本処方の一つ。

少し大そうな処方名にも感じますが、 小半夏湯(生姜+半夏)に茯苓を加えて、小半夏・加・茯苓湯。 半夏、生姜、茯苓の3種類のみからなる非常にシンプルな処方です。

嘔気・嘔吐に対してよく用いられる漢方薬の中で最も基本的な構成です。

小半夏加茯苓湯の出典

金匱要略(3世紀)

「卒に嘔吐し、心下痞し、膈間に水あり眩悸する者は、小半夏加茯苓湯之を主る」

「先ず渇して後嘔するは、水心下に停まると為す。此れ飲家に属すなり。小半夏加茯苓湯之を主る」

心下部(みぞおち、胃のあたり)に水(水飲・痰飲)の停滞があるというのがポイントです。

通常であれば下向きに流れる胃の気の流れに問題が起こると、悪心という症状があらわれると考えます。

水の停滞(胃内停水)があることで、胃の気の流れをジャマをしています。

食べ物を胃が受け入れることができず、吐き気や嘔吐が起こりやすい。痰飲が上逆すれば動悸やめまいを伴うことがあります。 この状態を小半夏加茯苓湯が改善します。

小半夏加茯苓湯の成分(構成する生薬)

  • 半夏(ハンゲ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 生姜(ショウキョウ)

最も分量の多いのは半夏です。気を降ろし、悪心や吐き気を抑えます。

茯苓が加わりますので停滞している水の吸収~排泄を促して胃腸機能を補います。また痰飲による、めまいや動悸を抑えます。

生姜は半夏との相乗効果で吐き気を抑えると同時に、半夏の刺激性を緩和させています。

明らかな水の停滞(胃内停水)がない場合は、茯苓を入れずに小半夏湯(半夏+生姜)でも良いわけですが、それでも小半夏湯よりは小半夏加茯苓湯を使う方が一般的なようです。

小半夏加茯苓湯の効能・適応症状

悪心、嘔吐〈妊娠悪阻(つわり)・乗り物酔い(動揺病)・胃下垂・胃炎など〉

吐き気や嘔吐を伴う動悸・めまい、メニエール、食欲不振

注意

上記の症状に応用されることがあるという意味であり、すべての症状が小半夏加茯苓湯で治せる、ということではありません。 保険適応外の症状を含みます。

小半夏加茯苓湯が用いられる吐き気

吐き気がして青ざめる

シンプルな構成ゆえに、胃腸機能が低下しているような吐き気であれば、とりあえずはどんな吐き気にも使うことができます。

  • 胃腸炎
  • 消化不良
  • 乗り物酔い
  • 妊娠のとき(つわり)
  • 胃腸の神経症
  • 片頭痛
  • 蓄膿症
  • 手術後
  • 薬の副作用で

    などなど。

半夏・生姜は胃を温めますので、どちらかというと、胃が冷えているときに向いています。

ただし、根本的な胃腸機能の低下を補うものではなく、あくまでも吐き気を抑えるための対症療法的な方剤です。

一般的には頓服で用います。

吐き気が起こりそうなときに予防的に服用することもできます。

効果が弱いときには、(生の)生姜のすりおろしを少し加えるのも良いです。 冷たい水は飲み過ぎてはいけません。 しかし、吐き気のあるときは、お湯よりも水の方が飲みやすいです。少量ずつ回数を分けて服用して構いません。

小半夏加茯苓湯からの展開

小半夏加茯苓湯は、嘔気嘔吐に対する基本処方ですので、小半夏加茯苓湯の要素を含む漢方薬がたくさんあります。

例えば、小半夏加茯苓湯に理気薬(気の巡りを良くする薬)である厚朴・蘇葉を加えると半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)になりますし、

痰飲があって胃の働きが障害されているものには小半夏加茯苓湯に陳皮・甘草を加えて二陳湯(にちんとう)になります。 二陳湯はあまり馴染みがなくても、そこにさらに人参・白朮・大棗を加えていくと六君子湯(りっくんしとう)です。

その他、半夏白朮天麻湯・参蘇飲・釣藤散などの中にも、小半夏加茯苓湯(半夏・茯苓・生姜のユニット)を見つけることができます。

小半夏加茯苓湯が向かない吐き気

小半夏加茯苓湯の3つの生薬はどれも燥性であり、半夏・生姜は胃を温めますので、胃陰虚や胃熱によるものには使えません。

例えば飲酒過多による吐き気(二日酔い)には不向きです。 胃の熱による吐き気には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)など黄連の入った方剤を使います。

嘔吐して口が乾く、ひどい口渇があるときは五苓散(ごれいさん)などの方が適します

悪心や吐き気よりも嘔吐(吐出)がひどい場合、乾姜人参半夏丸が使われることもあります。

用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

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