【芳香化湿薬】~蒼朮・厚朴・藿香・縮砂/砂仁・草果~

芳香化湿薬

5-(1)  芳香化湿薬(ほうこうかしつやく)

芳香化湿薬の各生薬の中薬学的な効能について。
芳香化湿薬の一般的な説明はこちら⇒芳香化湿薬とは

蒼朮(そうじゅつ)

蒼朮(ゾウジュツ)

キク科ホソバオケラ(またはそれらの雑種)の根茎
※含有成分(セスキテルペノイド)が白色の綿状の結晶として析出する(ので稀にカビの発生と間違えられる)ことがあります。

【性味】辛 苦 温
【帰経】脾 胃 (肝)
【効能】燥湿健脾 袪風散寒

①燥湿健脾
湿阻中焦証に用いられます。湿邪によって、中焦の気機の流れが阻まれ、脾の運化機能が失調した状態です。
症状としては胃のつかえ、食欲不振、吐き気、お腹が張る、消化不良の下痢、倦怠感などが起こります。
このときよく厚朴陳皮と配合して用いられます。例⇒平胃散
また脾の湿が原因となっている痰飲や水腫に対しては茯苓などと用いられます。例⇒胃苓湯

②袪風散寒
辛温の性味があり、寒湿を発散させる効能によって、風寒湿痺証にも用いられます。
風寒湿邪による関節痛、筋肉痛などのときに配合されますし(例⇒桂枝加朮附湯二朮湯薏苡仁湯
外寒表証(感冒)を兼ねるときは、防風羌活などと一緒に配合して用いることができます。
蒼朮は(白朮との相違点ですが)発汗作用にも働くとされています。

その他
湿熱下注(湿熱が下焦を侵すこと)による足や膝の腫れて痛む症状にも応用されます。⇒越婢加朮湯、二妙散(黄柏と配合)
他に、明目の作用があって目のかすみや夜盲症に良いと言われています。

白朮と蒼朮の違い

厚朴(こうぼく)

厚朴(コウボク)

モクレン科ホウノキなどの樹皮

【性味】辛 苦 温
【帰経】脾 胃 肺 大腸
【効能】行気 燥湿 消積 平喘

①下気除満
行気・燥湿・消積の効能によって、脘腹脹満証の要薬とされ、「お腹が張って苦しい」ときによく用いられます。
脾の湿を乾かしながら、胃の滞った気を下に動かします。
湿阻中焦による脘腹脹満(実証)には、蒼朮陳皮などと配合されます。⇒平胃散
食積便秘による脘腹脹満(実証)には、枳実大黄などと配合されます。⇒大承気湯、厚朴三物湯
虚寒による脹満(虚証)のときは、人参甘草生姜などの温補薬と一緒に用います。

②平喘
苦味は気を下降させることを示します。
気を降ろすと同時に痰を消す効能があり、肺に帰経しますので、咳や喘息の痰の多い証に応用することができます。
桂枝湯に厚朴と杏仁を加えて使用されることがあります。⇒桂枝加厚朴杏仁湯

その他
「痰+気滞」による、いわゆる梅核気の症状によく使用されています。⇒半夏厚朴湯

 

蒼朮と厚朴のペアは漢方薬だけでなく、健胃薬として市販の胃腸薬にもよく配合されています。
スクラートG(LION)、セルベール(エーザイ)など

藿香(かっこう)

藿香(カッコウ)

シソ科パチョリの地上部
ハーブのひとつで、パチョリの精油はアロマオイルや香水としても使用されています。

【性味】辛 微温
【帰経】脾 胃 肺
【効能】化湿 解暑 止嘔

①化湿+解暑
体表の風寒と、内臓の湿を、両方同時にとることができます。
主に夏や梅雨の時期
体表は冷房(クーラー)で冷やされ、外感風寒証に相当する悪寒、発熱、頭痛があったり、
同時に、内臓は冷たいものの飲食によって、胃がつかえ、嘔吐や下痢をしたりがあるものによく適しています。
蘇葉厚朴などと一緒に配合して用いられます。⇒藿香正気散

一方、温熱病の初期、湿+熱邪が同時に発生して、発熱、心煩(イライラ)、頭重、脘腹痞満などのときには、黄芩滑石茵蔯蒿などと併用して用いられます。

②止嘔
また止嘔の効果があり、各種の嘔吐証に使われることがあります。
脾胃の湿濁による嘔吐のときは半夏と、湿熱の嘔吐には黄連竹筎などと、脾胃虚弱に属する嘔吐には党参甘草と、妊娠時の嘔吐には砂仁半夏などと用いればさらに有効です。

※類似生薬⇒香薷(こうじゅ)

縮砂(しゅくしゃ)/砂仁(しゃにん)

縮砂(シュクシャ)

ショウガ科Amomum xanthioides Wall. の種子の塊
※中国ではAmomum villosum Lour.(陽春砂)などの成熟果実を「砂仁」としている

【性味】辛 温
【帰経】脾 胃
【効能】化湿行気 温中安胎
  • 藿香と同様、温性で、芳香の理気作用があるので、湿阻中焦証に用いることができます。例⇒安中散
  • 脾胃の気滞で、脘腹脹満、みぞおちの痞え、嘔吐、食欲不振などに適します。
  • 六君子湯香附子藿香と一緒に加味して用いられます。⇒香砂六君子湯
  • 温中の効果で止瀉の力があるので、脾胃虚寒の下痢に、人参白朮などと応用されます。⇒参苓白朮散
  • また、理気+安胎の効能があり、妊娠時の嘔吐や、気滞による胎動不安に用いることができます。

草果(そうか)

ショウガ科のAmomum tsao-ko の成熟果実
※日本では漢方薬には配合されていません。中華料理の香辛料や薬膳料理には(食品として)使用されることはあるかも。

【性味】辛 温
【帰経】脾 胃
【効能】燥湿散寒 除痰截瘧さいぎゃく

燥湿散寒は化湿・温中ということと同じで、寒湿が脾胃を阻んでいることが顕著な、腹満、腹痛、嘔吐、下痢などに用いることができます。特に肉類を摂取時の消化不良に効果があると言われています。
また、瘧疾(マラリアのような不定期に悪寒発熱の発作を繰り返す疾患)に常山じょうざん柴胡黄芩などと使用されます。

 

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