【薏苡仁湯(よくいにんとう)の解説】~関節や筋肉のやや慢性化した痛みに使います~

漢方薬の解説

薏苡仁湯(よくいにんとう):YT

風邪ふうじゃ湿邪しつじゃ、またはふうかん湿しつの3つの邪による、しびや関節の痛みに用いる漢方薬です。

麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)の杏仁を抜き、蒼朮・当帰・桂枝・芍薬を加えたものとなります。

「薏」の字がJIS第1・第2水準の漢字ではないために「よく苡仁湯」と書かれることが多いです。

ネットで検索するときも「よく苡仁湯」で探した方がたくさんヒットします。

イボなどの皮膚の症状に使われる「ヨクイニンエキス」などとは異なる漢方方剤ですので、間違わないように注意してください。

薏苡仁湯の出典

明医指掌(17世紀)

薏苡仁湯の成分(構成する生薬)

  • 麻黄(マオウ)
  • 薏苡仁(ヨクイニン)
  • 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)
  • 当帰(トウキ)
  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 甘草(カンゾウ)

方剤の名前に使われる薏苡仁の配合量が最も多いです。

麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)から杏仁を抜いて、蒼朮・当帰・桂枝・芍薬を加えた構成です。

麻杏薏甘湯も同じように風湿邪による痛みやシビレに用いる方剤ですが、

そこから、潤す性質のある杏仁を抜いて、逆に湿を除く作用を強化する蒼朮が加わります。

気と血を巡らせるための桂枝と当帰、それに芍薬の鎮痛作用も足されています。

よって、麻杏薏甘湯が、比較的初期の症状が軽いものに使用されるのに対して、

薏苡仁湯の方はそれよりもさらに慢性的で、症状が重くなったものに応用できることになります。

麻黄・桂枝 → 風寒を去る
薏苡仁・蒼朮 → 湿邪を除く
当帰・芍薬 → 血を補う
芍薬・甘草 → 痛みを鎮める

薏苡仁湯の適応症状

関節痛、神経痛、関節リウマチ、変形性膝関節症、脚気、脊椎症、
肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、肩こり、寝違い、腰痛、膝関節水腫、結核性関節炎、腱鞘炎など

添付文書上の効能・効果

【医療用エキス製剤】

関節痛、筋肉痛

【薬局製剤】

体力中等度で、関節や筋肉のはれや痛みがあるものの次の諸症:関節痛、筋肉痛、神経痛

薏苡仁湯のポイント

痛み(炎症)は比較的軽度ではあるがなかなか改善せず、やや慢性化している疼痛や腫脹に適応となります。

湿邪による痛みは「湿痺」と言いまして、組織に浮腫があり、それによって経絡の流れが悪く、血行障害や筋肉の痛みが生じているものです。しびれ感や重だるい感覚が特徴です。

薏苡仁湯は患部の浮腫を除きながら、痛みやこわばりを軽減する漢方薬です。

高齢者に使われることも多く、やや実証からやや虚証の方に広く使われています。

患部の熱感や腫れはないか、または(あまりひどくない)熱をもっている関節痛や筋肉痛に用いられます。

桂枝が配合されているので、どちらかというと上半身向けの方剤とも考えられますが、腰や膝にも使われています。

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)と併用して使われることもあるかもしれません。

薏苡仁湯の副作用・注意点

蒼朮ではなく、代わりに白朮を使用しているメーカーがあります。この薏苡仁湯の場合、白朮でも間違いではありませんが、蒼朮の使用がより望ましいとされています。。

まれに当帰により胃腸障害を起こすことがあります。

麻黄による副作用(悪心、食欲低下、不眠、動悸、血圧上昇、排尿障害など)の発現に気を付けなければいけません。

甘草が含まれますので、長期使用時や他の漢方薬と併用するときは、偽アルドステロン症に注意が必要です。

熱感が強い、炎症が強いものには、効果があまり期待できません。

関節に発熱がある場合は「桂芍知母湯」、冷えが強いことで起こる痛みの場合は「桂枝加朮附湯」、初期の軽症の痛みには「麻杏薏甘湯」など、必要に応じて検討してください。

 

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