「ヨクイニン」と「薏苡仁湯(よくいにんとう)」の間違いに注意!

ヨクイニンと薏苡仁湯

「ヨクイニン」と「薏苡仁湯(よくいにんとう)」

名前は似ていてもまったく違うものです。

「ヨクイニン」は、肌あれやイボに使われます。

「薏苡仁湯」は、関節痛や筋肉痛に使われます。

成分や効能の違いについてまとめておきますので、間違えて使用しないように気をつけてください。

ヨクイニンとは

ヨクイニンは、イネ科のハトムギの種子です。

種皮(種子の皮)がついたままのもの(実)が「ハトムギ」で、

そのハトムギの成熟したものから種皮を除いたものが「ヨクイニン」と呼ばれます。

ハトムギとヨクイニン

ハトムギ(左)とヨクイニン(右)

はと麦茶は、左側のハトムギを殻付きまま炒って作るので、香ばしいお茶になります。

「ヨクイニン」と言った場合は、右側のハトムギ由来の単味の生薬です。(薬としてだけではなく、薬膳などの料理に使われることもあります)

「ヨクイニンエキス」はそのヨクイニンから成分を抽出して、粉末や錠剤にしたものになります。

後半に説明しますが、「薏苡仁湯」の方は7種類の生薬を配合して作られる漢方処方です。

ヨクイニンの効能

ヨクイニンには、化膿した膿(うみ)を排出させる作用(排膿作用)があります。

またサメ肌などに対して、肌を滑らかにキレイにするといわれています。

日本ではよく民間薬としてニキビやイボなどに用いられてきています。

その他、鎮痛、消炎、利尿、健胃の効果があります。

「はとむぎエキス」や「ヨクイニンエキス」、「ヨクイニン末」

または生薬としての「ヨクイニン」など様々なかたちで販売されています。

エキスの方は皮膚科で処方されたりもします。

はと麦は、名前には麦と付きますが、コムギなどとは異なるイネ科ジュズダマ属の植物。
栽培化されている穀物です。
半分以上は炭水化物ですが、アミノ酸バランスのよいタンパク質や、ビタミンB2、カリウムなども含まれ、栄養分に富んでいます。
皮膚に対する機能成分として、coixenolide(コイクセノライド)が認められています。

医療用のヨクイニンエキスの適応について

ヨクイニンはイボに効く、イボとりの薬というイメージを持っている方もいると思いますが、

イボという言い方は正確ではありません。医学的には疣贅(ゆうぜい)といいます。

その原因の多くはウイルス性です。

人のみに感染するある種のヒトパピローマウイルスが原因だということが分かっています。

ウイルス性なのですが、それに対する抗ウイルス薬みたいな特効薬がないため、現在のところ症状に応じて治療法も様々存在していて、そのうちの一つがヨクイニンエキスの内服による治療法です。

ウイルスに直接作用するのではなくて、肌のウイルスに対する抵抗力を高めるような作用だと思われます。

また全てのウイルス性疣贅にヨクイニンが使われるわけではありません。

ヨクイニンエキス錠の効能効果:青年性扁平疣贅、尋常性疣贅

保険適応となるのは、青年性扁平疣贅と尋常性疣贅だけです。

一般的に首いぼと言われるような老化によるイボは、ウイルス性ではありませんし、ヨクイニンの適応ではありません。

老人性イボに対するヨクイニン単独での効果は、ほぼ認められておりません。

もし、ヨクイニンの広告にお年寄りの方が登場して「首のイボがとれました」とか書いていたら、そこの会社は怪しいかもと一度疑ってみた方がいいでしょう。

また、医療機関から処方されるヨクイニンは、あくまでイボ(疣贅)の治療に使用するためです。美容目的での使用は医療保険の対象ではありません。

ヨクイニンの量について

ヨクイニンやハトムギを配合した市販薬やサプリメントを選ぶ場合、

メーカーによって成分量の記載が、ハトムギの量、ヨクイニンの量、ヨクイニンエキスの量など

書き方が異なっていることも多いと思いますので、商品ごとに含量を比較するときは注意してください。

ちなみに、仮にヨクイニン量換算として1日20gとなっていれば、↓のくらいの量になります(船の重さは引いています)。

ヨクイニン20g

錠剤(エキス剤)ではなく、この粒のヨクイニンを毎日取り続けるとなるとちょっと大変な量かもしれないですね。

漢方薬の「薏苡仁湯」に含まれるヨクインニンの量は8g/日くらいなので、

一般的には、ヨクイニン単品の製品の方が、ヨクイニン量としては多く使われていることになります。

ヨクイニンエキス剤は吸湿しやすく、また吸湿によって変色しやすいので、開封後の保管の際は気をつけてください。

薏苡仁湯(よくいにんとう)とは

一方、漢方薬の「薏苡仁湯」(よくいにんとう)は、効能が全く違います。

「薏苡仁湯」は、

麻黄・甘草・桂枝・当帰・芍薬・薏苡仁・蒼朮の7種類の生薬からなる漢方処方で、

関節痛や筋肉痛に用いられています。

この場合、薏苡仁(よくいにん)は、浮腫(水滞)を改善したり、疼痛の緩和、消炎の作用を目的に配合されています。

「薏苡仁湯」の漢方的な詳しい解説はこちらをご参照ください⇒薏苡仁湯の解説

副作用のおそれがあるのは薏苡仁湯

例えば、甲状腺機能に影響があるとか、血圧が上昇することがあるとか、不眠がおこるおそれがあるとか、

そういう副作用に注意するようにと書かれていることがあれば、

それはヨクイニンではなく、「薏苡仁湯」のことです。

ネットなどで読むことのできる一般の人の書いた文章では、混同した解説になっていることもあるかもしれませんので、注意してください。

薏苡仁湯に含まれる麻黄には、交感神経刺激作用がありますので、甲状腺機能亢進症や高血圧、心臓病など疾患のある方は注意が必要ですが、

ヨクイニン単味で、通常の量を服用する分には問題ありません。

ただし、イネ科などに寄生する菌である麦角菌が実に感染していれば、麦角アルカロイドによる中毒症状などはあり得ますので、海外などで自生している(感染対策をしていない)ハトムギを見つけてきて自分で食べることなどがもしあるならば注意が必要かもです。

妊娠中の摂取について

これも同様に、ヨクイニン単品を(通常考えられる量で)摂取したことによって、妊婦さんに流産や早産が起こる、ということはありません。

もちろんはと麦茶も問題ありません。

ただ、やはり安全とはいっても、妊娠中、または妊娠が分かったときは、ヨクイニンを服用して良いかどうかを一応主治医に相談されてください。

それはヨクイニンに限らずのことで、あえて今服用する必要性があるのかどうかという問題で、意味もなく漫然と使用することは避けた方がよいです。

そして、やはり麻黄が含まれる薏苡仁湯に関しては、妊娠中の服用はあまりおススメできません。

(なお、先ほど触れました、麦角アルカロイドには、子宮収縮作用(陣痛促進作用)もあります。)

医療機関を受診時にも注意を

医療機関でも時々、間違えて処方されることがあるので注意しましょう。(調剤薬局の方ならまちがいなく疑義照会をしてください)

関節痛にヨクイニン単味では絶対用いませんし、肌荒れに薏苡仁湯は用いません。

薏苡仁湯にはヨクイニンが入っているから肌にもイイのかな? という疑問が出るかもしれませんが、

肌を良くしたいなら薏苡仁湯である必要性がありません。

特に、薏苡仁湯には麻黄が入っていますので、体質を考慮して使われなければいけません。

ヨクイニンを配合した漢方薬で、例えば、もしニキビあとの皮膚の凸凹を滑らかにするのに用いるとすれば、薏苡仁湯ではなくて、桂枝茯苓丸加薏苡仁けいしぶくりょうがんかよくいにんを検討されてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました