麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう):MBST
麻黄附子細辛湯の概要
- 麻黄・附子・細辛の3種類の生薬で成り立っていて、その生薬名がそのまま名前になっている漢方薬です。
「麻黄細辛附子湯」と書かれていることもあります。(並びが違うだけで同じです) - 麻黄と附子と細辛とで、新陳代謝を高め、熱産生を促します。
高齢者の感冒の他、さまざまな症状に用いられますが、基本的には、体力が弱くて冷えの強い人、または冷えを伴う症状、に用いられます。 - 医療用エキス製剤では、コタロー・ツムラ・三和の3メーカーがあります。
(コタローのは漢方薬ではめずらしいカプセル剤があるのも特徴です)
麻黄附子細辛湯の出典
『傷寒論』(3世紀)に記載されている方剤です。
陽虚証(陽気が弱っている人)の感冒の初期に用いる処方とされます。
→最後に詳しく解説します。
麻黄附子細辛湯を構成する生薬について
- 麻黄(マオウ):マオウ(マオウ科)の地上茎
- 附子(ブシ):ハナトリカブト(キンポウゲ科)の塊根を加工したもの
- 細辛(サイシン):ウスバサイシン(ウマノスズクサ科)の根及び根茎
3つとも体を温める生薬です。
附子→陽虚の改善。新陳代謝を高める。横になりたくなるような倦怠感、冷えによる頭痛を改善します。
麻黄→細辛と共に軽く発汗させて、体表の寒邪を追い出します。
麻黄・細辛には止咳作用があります。
一般的に、高齢者の風邪(カゼ)の初期に適した配合になっています。
また、風邪以外では、
麻黄・附子・細辛によって、水の代謝を高めて、水分の偏在を正す、冷えによる水滞を除く効果(利水作用)も期待できます。
附子・細辛には鎮痛作用もあります。
ですので、寒湿証とそれによる痛みにも応用することができます。
よって麻黄附子細辛湯は次のような症状に用いられています。
麻黄附子細辛湯が適応する症状
- 感冒、気管支炎、咳嗽、のどの痛み、流感、のどがチクチクするような感冒や熱性疾患の初期
- アレルギー性鼻炎、水様性鼻汁、慢性副鼻腔炎、花粉症、寒冷刺激で出る鼻水
- 冷え、四肢の疼痛・冷感、冷えをともなう頭痛、関節痛、神経痛、めまい
- 帯状疱疹(ヘルペス)後の神経痛(冷えを伴う場合)、寒冷じんましん、日光過敏症
- 腹圧性尿失禁
添付文書上の効能・効果
【ツムラ】
悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷感あるものの次の諸症:
感冒、気管支炎
【コタロー】
全身けん怠感があって、無気力で、微熱、悪寒するもの。
感冒、気管支炎。
【三和】
悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷感あるものの次の諸症:
感冒、気管支炎、咳嗽
麻黄附子細辛湯を使用するときのポイント
高齢者や、体力の弱い人、病後や過労によって新陳代謝が衰えて、冷えの傾向の強い人に用いられます。
風邪(カゼ)に用いる場合
~麻黄附子細辛湯が用いられるカゼの特徴~
- 倦怠感があり、だるい、横になりたい、座っておきたい
- 背中全体にゾクゾクとした強い寒気を感じる
- 冷えによって頭痛が起こる
- 喉がチクチクと痛い
- サラサラの透明な鼻水、または薄い痰やそれによる咳がある
風邪ではない場合でも、
水滞を除く作用によって、
冷えを伴うアレルギー性鼻炎、寒冷刺激によって流れてくる透明な鼻水などにも使えます。
3つの生薬だけで構成される麻黄附子細辛湯の効果は、シャープに現れます。
通常は症状のある期間だけ服用すればオッケーで、
症状によっては、頓服でも数時間内で効果がみられます。
体質改善の目的で、症状がないのに常用する必要はありません。
鎮痛目的で使用される場合であっても、
冷えを伴う、または冷えによって症状が増悪する痛み、というのがポイントです。
麻黄附子細辛湯の副作用・注意点について
- 附子が配合される虚寒証向き(体力がなく、冷えがある・さむけがある人向き)の方剤です。
のぼせ、ほてり、高熱など、熱証のある人には使えません。
元気な人の服用には向いていません。 - 麻黄により胃痛、不眠、動悸、排尿障害などの副作用が起こることがあります。
特に血圧が高い人、心疾患のある人は注意が必要です。(短期間の使用で止めてください)
症状が治まったら中止して構いません。
漫然と長期間の服用を続けるべきものではありません。 - 他の漢方薬と併用する場合は、麻黄・附子・細辛が重複していないか確認してください。
あえて(小青竜湯など)重複するように処方されることもあり得ますが、分量が多くなれば副作用のおそれも増しますので、慎重にお使いください。 - 麻黄も附子も細辛もドーピング検査でひっかかる薬です。
アスリートの方は注意してください。 - 市販薬(第2類医薬品として)で購入できる麻黄附子細辛湯の製品には「サンワロンM」(三和生薬)などがあります。用法用量や使用上の注意、薬剤師や登録販売者の指示、または添付文書の説明を守ってください。
『傷寒論』の麻黄附子細辛湯について解説
少陰病始めて之を得るに、反て発熱し、脉沈の者は麻黄細辛附子湯之を主る。
とあります。
少陰の病というのは、陽気が虚してしまっており、脈が細く、ただ横になって寝ていたい状態です。
本来は、体は弱って冷えており、熱は出ないはず。
しかし、この少陰の病に入っているのに、発熱が生じており、脈が沈であれば、麻黄細辛附子湯が良いでしょう。
本来は、体は弱って冷えており、熱は出ないはず。
しかし、この少陰の病に入っているのに、発熱が生じており、脈が沈であれば、麻黄細辛附子湯が良いでしょう。
というような内容です。
高齢者や、体力が弱く冷え症の方の感冒は、(太陽病からではなく)少陰病から始めることも多くあります。
陽虚で体は冷えて弱っているのに、体表も風寒の邪に侵されてしまった状態です。
そこで、
高齢者や、体力が弱く冷え症の方の感冒は、(太陽病からではなく)少陰病から始めることも多くあります。
陽虚で体は冷えて弱っているのに、体表も風寒の邪に侵されてしまった状態です。
そこで、
表寒を温めるのが麻黄
裏寒を温めるのが附子
表裏ともに温める細辛
麻黄で体表の寒邪を発散させ、
同時に附子で体内の冷えを温めて体の機能を改善(陽気の回復)、
それに細辛を加え麻黄と附子の効果を相乗的にバックアップ、
3つの精鋭生薬の協力プレーによって、寒気と発熱を同時に治します。
少陰病の、表裏双解剤と言われます。
同時に附子で体内の冷えを温めて体の機能を改善(陽気の回復)、
それに細辛を加え麻黄と附子の効果を相乗的にバックアップ、
3つの精鋭生薬の協力プレーによって、寒気と発熱を同時に治します。
少陰病の、表裏双解剤と言われます。
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