参蘇飲(じんそいん):JSI
「胃ぐすりを兼ねたカゼ薬」と言われることもある「参蘇飲」(じんそいん)です。
気虚の湿痰に対する方剤。
「参蘇飲」の名前の「参」は人参(ニンジン)のことで、「蘇」は蘇葉(ソヨウ)のこと。
人参は脾胃のはたらきを補って気虚を改善させる生薬であり、
蘇葉は、気を巡らして、胃腸の蠕動を強め、悪心・膨満感を解消するとともに、発汗・解熱など、感冒初期の症状を改善します。
人参+蘇葉の2つの生薬が、「参蘇飲」の効能の特徴をよく表しています。
参蘇飲の出典
和剤局方(12世紀)
参蘇飲を構成する生薬
- 蘇葉(ソヨウ)
- 葛根(カッコン)
- 半夏(ハンゲ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 人参(ニンジン)
- 前胡(ゼンコ)
- 木香(モッコウ)
- 陳皮(チンピ)
- 桔梗(キキョウ)
- 枳実(キジツ)または枳穀(キコク)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
- 甘草(カンゾウ)
※木香が入らないメーカーのものもあります。
構成生薬の解説
構成生薬の種類が多いので、2段に分けて整理します。
人参・茯苓・甘草・半夏・生姜・大棗・陳皮
そして
葛根・蘇葉・桔梗・枳実・木香・前胡
まず、上段の生薬について。
これら[人参・茯苓・甘草・半夏・生姜・大棗・陳皮]の生薬に、あと白朮という生薬を加えると、六君子湯(りっくんしとう)になります。
「六君子湯」は、胃腸が弱い、食欲がない、疲れやすい、慢性胃炎などにファーストチョイスで使われることの多い処方です。
「参蘇飲」には、この「六君子湯」の要素が含まれていることになります。
逆に、参蘇飲に六君子湯の要素を含ませておきながら、白朮を配合していないワケですが…
基本的に風邪(感冒)のときや炎症や痰、膿などのあるような症状、邪気を追い出したいときに用いられる漢方薬には、白朮を配合しません。
詳しくは⇒白朮(びゃくじゅつ)の「利水作用」の解説で
次に、その他の生薬[葛根・蘇葉・桔梗・枳実・木香・前胡]について、
おおまかに書きますと
- 葛根⇒項背部のこりや頭痛
- 桔梗・前胡・半夏⇒咳や痰
- 枳実・木香は⇒腹部膨満感など
- 蘇葉⇒気分の落ち込みなど
を改善します。
葛根が含まれますが、もともと胃腸虚弱の人(脾気虚)向きの処方であり、
桂枝や麻黄は配合しておらず、葛根湯(かっこんとう)のような強い発汗作用はありません。
風邪薬としては穏やかな作用。逆に言えば、カゼ一般に使いやすい処方であります。
参蘇飲の作用は比較的マイルドなので、
高齢者、幼児、胃腸虚弱の人の、咳や痰を伴うカゼ(感冒)に有効です。
西洋薬の感冒薬で、胃を悪くしやすい人には良いかもしれません。
参蘇飲の適応症状
胃腸が弱い・元気がない・疲れやすい・食欲がない、などの人の感冒、カゼ症状(咳嗽、痰、鼻水、鼻閉)
例えば…
上気道炎、気管支炎、気管支喘息
不安感・うつ傾向などを伴うカゼ
長引いているカゼ
夏バテなどで体力が低下したときのカゼ
小児や高齢者、妊婦さんのカゼ
添付文書上の効能効果
【ツムラ】他
感冒、カゼ
参蘇飲のポイント
参蘇飲のポイントをまとめます。
主にカゼ症状に使われますが、「六君子湯」(りっくんしとう)から白朮(ビャクジュツ)を除いたものが含まれていることから、胃腸虚弱な人向きの方剤となっています。
蘇葉・枳実・陳皮(・木香)などの理気薬により、気の流れも改善します。
悪心、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、下痢、食欲不振、胃腸炎など、慢性的な胃腸の不調に対して(胃薬として)も使われることがあります。
比較的、長期間の服用も大丈夫ですが、効き目が穏やかなので、
高熱や悪寒、身体痛の症状が強く、症状の改善がないときは、ダラダラと服用を続けるのではなく、専門家にご相談ください。
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