【黄連湯】~胃部の停滞感や重圧感、食欲不振のあるときの漢方薬~

黄連湯(おうれんとう)

黄連湯(おうれんとう)の解説

黄連湯おうれんとうは、胃痛、腹痛、胃部の重苦しさ、胸苦しさ、吐き気などの胃腸症状に使われます。

主に急性胃炎のときのような症状です。

配合されている生薬が半夏瀉心湯はんげしゃしんとうと類似していて同じような症状に使われることもありますが

黄連湯の特徴についてまとめます。

構成生薬

生薬の種類としては、半夏瀉心湯はんげしゃしんとう黄芩おうごんを、桂皮(桂枝)に入れ替えたものに相当します。

ただしそれではなく黄連湯では、黄連の量が、半夏瀉心湯よりも3倍多く配合されます。

黄連の配合量が多いのがいちばんの特徴です。

黄芩も黄連もともに清熱薬せいねつやく清熱燥湿薬)ですが、

黄芩はとくに下焦(大腸)の湿熱を治すことに優れるのに対して、
黄連はとくに中焦(脾胃)の湿熱を治すことに優れる、とされています。

ですので、例えば
黄芩の配合量の多い黄芩湯おうごんとうは、急性の下痢に
黄連の配合量の多い黄連湯は、急性の胃炎に、
それぞれ適しています。

また、黄連は胸部の熱症状をおさえる(しゃする)作用があるので、

半夏瀉心湯に比べると、より胸部や体の上部の熱症状(胸やけ、胸苦しい、のぼせ、口内炎など)が顕著な場合に用いることができます。

桂枝を加えている点からも、体の上部に効きやすくなっていると考えることができます。

人参・乾姜・甘草・大棗などは消化器のはたらきを整えていて、

さらに半夏(と乾姜)で吐き気をおさえます。

効能効果

【医療用エキス製剤】

[ツムラ]胃部の停滞感や重圧感、食欲不振のあるものの次の諸症:
急性胃炎、二日酔、口内炎

[コタロー]胃部に圧重感があって、食欲減退、腹痛、悪心、嘔吐、口臭、舌苔などがあり、便秘または下痢するもの。
胃腸カタル、口内炎、消化不良、胃酸過多症、宿酔。

口内炎の適応があるので、歯科から処方されることもあり得ます。

【薬局製剤】

体力中等度で、胃部の停滞感や重圧感、食欲不振があり、ときにはきけや嘔吐のあるものの次の諸症:
胃痛、急性胃炎、二日酔、口内炎

口内炎や口臭、舌苔などの口の症状も、漢方的には脾胃と関連する症状になります。

補足

半夏瀉心湯と構成生薬が類似していますので、適応症状の大半も半夏瀉心湯と重複します。

半夏瀉心湯の(寒性の)黄芩の代わりに、黄連湯では温性の桂皮(桂枝)が配合されていますので、乾姜による胃腸の冷えを温める作用が強められています。また冷えのぼせの傾向にも対応できます。

桂枝は辛温解表薬ですし、感冒などで発熱や頭痛など(表証)を伴うときの胃炎症状にも適します。

逆に、胸(みぞおち)のつかえ感がつよいときは、黄芩の配合されている半夏瀉心湯のほうが適する可能性があります。

甘味の生薬も含まれますが、黄連の苦味がつよく、乾姜の辛みもある漢方薬です。

口内炎のときや嘔吐のときの服用は、冷たくしての方(冷服)が飲みやすいかもしれません。

食あたりの胃痛に対しては、頓服で使われることがあります。

甘草が含有されているので長期間服用するときや、他の甘草を含む漢方薬と併用するときは、偽アルドステロン症や低カリウム血症などの副作用に注意が必要です。

黄連解毒湯おうれんげどくとうとは異なる漢方薬ですので気をつけてください。(黄連解毒湯は清熱薬だけで構成されていて、補ったり温めたり胃腸を整えたりする生薬は配合されていません。)

出典

『傷寒論』(3世紀)

傷寒、胸中に熱有り胃中邪気有りて、腹中痛み嘔吐せんと欲する者は黄連湯之を主る。

⇒急性熱性疾患で、胸中に熱邪があって、胃中には邪気(寒邪)がある。これでは、胃気は下降できませんし、脾気は上昇できません。そのため腹痛や下痢、悪心や嘔吐が生じます。

このときは、
胸部の熱を黄連で冷まし、
胃の冷えを乾姜で温める。
そして桂枝で上下の気を巡らせる。
半夏で胃気の上逆による吐き気をおさえ、
人参・甘草・大棗などで脾胃を補い胃腸を整える。

つまり、黄連湯で治します。

(ちなみにこの条文の続きには用法として昼3回夜2回と指示されてます。)

また、急性熱性疾患ではなくとも、この解釈によって

急性胃炎、ストレスで胃酸過多による胃痛がある、逆流性食道炎で胸やけ、二日酔いで吐き気…など

胃痛や胸やけの症状に広く応用されます。

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