清熱薬(せいねつやく)の概念

清熱薬の解説

2.清熱薬とは

漢方の治療原則では、「熱なる者はこれを寒す」でありまして、

熱のある者に用いる薬が、清熱薬です。

よって清熱薬は、だいたい寒涼の性質を持っているものが分類されます。

清熱薬を使用する際には、
その熱が、どこの、どういう熱なのか、ということを考えながら使用することが大事です。

例えば「熱」は次のように分けて考えることができます。

表熱と裏熱、実熱と虚熱、気分の熱と血分の熱、各部位ごとの熱(心熱、肝熱、胃熱・・・)など。

もし表熱(体表の熱)である場合、その熱は体表から発散させて治しますので、通常まず使用する薬は「解表薬」です。

清熱薬を用いるのは、裏熱のあるときです。

表熱(ひょうねつ)と裏熱(りねつ)

まず、一番基本的なこと。

清熱薬は、裏熱に使用する薬です。

表熱⇒解表薬
裏熱⇒清熱薬

表熱は、感染症の初期にみられる、悪寒・発熱・頭痛・のどの痛み・目の充血などの症状で、

この熱を体表から発散させるのは解表薬であり、

解表薬のなかの辛涼解表薬、例えば葛根柴胡升麻薄荷などを用います。

では、清熱薬を用いる「裏熱」とは、

シンプルに言うと、表熱以外の熱です。

実熱(じつねつ)と虚熱(きょねつ)

実熱と虚熱の陰陽のバランスを図にしました。

実熱と虚熱の概念図

実熱は、熱邪の発生(侵襲)によって生じる実証の熱。

虚熱は、陰虚(陰の不足)にともなって起こる熱証です。

実熱は、だいたいは炎症性の疾患でみられます。

虚熱の方は、慢性的な疾患で津液が消耗していたり、自律神経の乱れ(亢進)などで生じることがあります。

なお、実熱には(上で述べたように)症状の違いによって表熱と裏熱に区別がありまして、

虚熱の場合には、裏熱の範疇にあります。

清熱薬を用いるのは実熱のことの方が多いです。

熱の発生原因

体内からどうして熱が生じるのか。

熱の発生原因には、体の外からのものと、内からのものとがあります。

体の外から影響を受けるものを一般的に「外邪」と呼び、熱邪と言えば通常こちらです。

自然界から生体が影響を受ける外邪は6つあり、「風邪・寒邪・湿邪・燥邪・暑邪・熱邪」(六淫ろくいんと呼びます)のうちの一つが熱邪ですが、

熱邪以外のもの、例えば湿邪・燥邪が体に侵入後、熱を帯びて熱邪となることもあります。

一方、内因性(内邪)のものは「火邪」と呼ぶことが多いです。

臓腑や気血のバランスをとって、体温を維持しているのは正常の「火」であり、それ自体は問題ないものですが、

それが邪となったときに問題となるものです。

七情(喜怒憂悲思恐驚)という7つの感情が激しく揺れ動いたり、ストレス、過労などで、臓腑の機能が低下した場合に「熱」が生じたり、

便秘(食積)、瘀血、痰飲、気鬱など、滞っていたり体内に蓄積したものから「熱」が生じることもあります。

それと、虚証の、陰虚による生じる虚熱があります。

(また「気虚の熱」というものもありますが、これには補気薬を用います。)

  1. 外邪(熱邪)の侵入、もしくは、燥・湿などの外邪の侵入後、熱に転化(五気化火)
  2. 七情の変化、過労、飲食の不摂生⇒臓腑機能の低下⇒外に出すべきものや滞ってはいけないものが体内に蓄積⇒熱(五志化火)
  3. 体の虚弱(陰虚)による虚熱

熱の症状

熱があるとどういう症状が現れるのか、

または、どういう症状があれば熱邪なのか。

熱邪の発病の特徴

①炎上

火・熱は陽邪に属していて、よく燃え上がります。
勢いが強いときは、炎上によって、上に向かっていくという特徴があります。
よって、症状は体の上部に表れることが多くなります。(目が赤くなる 口内炎、喉が渇く、唇が乾燥するなど)

②傷津

火熱は、陰・陰液を損傷します。症状には、脱水や渇きをともなうことが多くなります。
また高熱では汗という津液を損傷するとともに、津液の中の「気」も一緒に損傷するため、だるく感じたりもします。

③動血生風

気血の運行を大きく乱してしまうことがあります。
血の流れを狂わせて、吐血、下血、鼻血、血尿、月経過多などの出血症状を引き起こすことがあります。
また、火は燃えると風を生じます。熱が激しくなると脳にも影響してしまうこともあります。(ひきつけ、けいれん、意識の昏迷)

④熱毒

熱より強力な「熱毒」がみられることがあります。
「毒」とは、邪気から生じた発病力が強いもの、また皮膚の炎症からしばらくすると膿ができたり、変化が速いものです。(腫れや痛み赤味を伴う、にきび、皮膚の感染、アトピー、瘡瘍)

⑤心神をかく乱

火は「心」に相対するので、それが神の活動の邪魔をします。
イライラ・不安・煩躁・不眠など。もし重度であれば意識が混とんし、昏睡のおそれがあります。

清熱薬の分類

熱はまた、気分の熱と血分の熱に分けることができます。

気分は血管の外側の熱。

血分は血管の内側の熱で、気分の熱より侵入が深いので、病状としてはより深刻です。

明確に区別できないこともありますが、どちらに作用する清熱薬か、ということは考えなくてはいけません。

また、臓腑の各部位の熱によって起こる症状が違いますので、どこの熱に作用する薬かというこも考えなくてはいけません。

(詳しくは、各論のところにまとめますが、)

以上のように、熱の特徴(場所や症状)は様々なものがあります。

これに対して清熱薬の方も、それぞれどこのどういう熱に効果がある清熱薬か、ということを考える必要があります。

そんなわけでその性質に合わせて、清熱薬はさらに以下のように分類されています。

  1. 清熱瀉火薬:主に気分の熱
  2. 清熱涼血薬:主に血分の熱
  3. 清熱解毒薬:主に熱毒
  4. 清熱燥湿薬:主に湿熱
  5. 清虚熱薬:主に虚熱

清熱薬の注意点

  • 上述したように、熱の部位を意識して使用する必要があること
  • 寒性のものが多く、脾胃に負担をかけ、胃もたれや食欲低下を起こすことがあること
  • ですからなるべく長期間は使用しないこと
  • 長期間使用するときは脾胃を補う薬を一緒に使うこと
  • それと湿熱に用いる苦味の薬は乾かす作用があり、津液の損傷するおそれもあるため、補陰薬を一緒に使うこと などが必要です。

 

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