【清熱解毒薬】~金銀花・連翹・白鮮皮・牛黄・板藍根~

清熱解毒薬

2-(4)  清熱解毒薬(せいねつげどくやく)

清熱解毒という場合の「毒」とは、有毒物質のことではなく、熱毒(または火毒)のことを指します。
体内(のどこか)に過剰な水がある状態を「水毒」と言ったりするのと同様で、熱があまりに盛んになっている状態が熱毒です。
ですので清熱解毒薬とは、「熱邪を清し、熱毒を解する」作用をもつ薬という意味です。

熱毒は、その存在する部位によって様々な症状(または病名)がありますが、基本的に、赤くて、腫れたりして、そして痛い、という症状がみられます。
いわゆる「炎症を起こしている」状態です。化膿している場合もあります。

西洋医学的には、抗炎症薬や抗菌薬の適応となるものですが、
漢方薬の場合は
熱毒+血熱であれば、涼血作用のある薬と配合したり
熱毒+火熱であれば、瀉火作用のある薬と、
熱毒+湿邪であれば、燥湿薬と、
気虚や血虚があれば、補気薬や補血薬と
といった具合に、他の作用も兼ね備えることができる生薬との組み合わせによって応用されます。

金銀花(きんぎんか)

スイカズラの花

スイカズラ科スイカズラの花蕾(つぼみ);双花とも呼ばれます。
※葉や茎を生薬としたものは忍冬(にんどう)になります。

【性味】甘 寒
【帰経】肺 胃 大腸
【効能】清熱解毒 疏散風熱

外感風熱の表証(発熱、悪風、喉の痛みなど)または発熱を主症状とする温熱病の初期、には欠かせない生薬。
大抵の場合、連翹や荊芥薄荷などと一緒に使用されます。例⇒銀翹散

温熱病の、衛分証(風熱表証に辛涼解表薬と配合する)だけじゃなく、気分証(に石膏知母などを配合したり)、営血分証(に生地黄牡丹皮などを配合すれば)、各段階に使用することもできます。

熱毒による(できもの、はれもの、と言ったりする)皮膚の炎症、腫れ、化膿症、耳・鼻・喉の炎症にも、やはり連翹や荊芥、薄荷などと一緒に配合して使用されます。例⇒荊防敗毒散、(忍冬としては治頭瘡一方)

連翹(れんぎょう)

連翹(レンギョウ)

モクセイ科レンギョウの果実

【性味】苦 微寒
【帰経】心 肺 (胆)小腸
【効能】清熱解毒 疏散風熱 消廱散結

清熱解毒や疏散風熱の効能は金銀花と同じで(金銀花の相方のように)お互いに協力し合う形で一緒に配合されます。
例⇒銀翹散

また、炎症している(赤く腫れて痛みを伴う)各種の化膿性疾患に用いる方剤には必要不可欠な生薬です。
例⇒十味敗毒湯清上防風湯荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、駆風解毒湯、防風通聖散など

白鮮皮(はくせんぴ)

ミカン科ハクセンの根皮

【性味】苦 寒
【帰経】脾 胃
【効能】清熱解毒 除湿 止痒

清熱+燥湿+止痒で、苦参に似た効能を持っています。
清熱解毒とともに湿を抑えるので、湿熱による湿疹、掻痒、びらんで、膿が多い、浸出液がだらだら出るなどのときに(苦参や蒼朮などと配合して)用いることができます。(現実的には皮膚科や形成外科の受診をお勧めしますが)

牛黄(ごおう)

牛のシルエット

偶蹄目ウシ科ウシの胆嚢もしくは胆管中に病的に生じた結石(胆石)

【性味】苦 涼
【帰経】肝 心
【効能】清熱解毒 熄風止痙 化痰開竅

開竅薬や熄風薬に分類されることもあります。

心は火に属し、肝は風に属すことから、心熱によって火が生じ、肝熱によって風が生じる。熱病(高熱)によって、喉の腫れや痛みが起こるだけではなく、火と風が猛威を振るったときには、けいれん、意識の混濁、昏睡などが起こることもあります。牛黄は本来はこういったときの「意識を取り戻させる」という効能をもちます。

一般的には市販薬に、
頭がぼーっとする、意識がもうろうとする、などに使える「救心」であるとか、子供の激しい夜泣きがぜんぜん止まらないときに使う「樋屋奇応丸(ひや・きおーがん)」などにも少量、
また滋養強壮の成分として栄養ドリンクなどにも極少量、配合されています。

結石を患ったウシから(屠殺するときに)たまたま見つかる牛黄を、天然牛黄と言います。稀少で貴重な生薬です。天然ものの中でも品質には良し悪しがあり(オーストラリア産が評価が高いらしいが)、最近では人工的に作られた人工牛黄とか(もしかしたら天然牛黄っぽく偽装した人工牛黄とか?)も出回っているようです。高価なものですので、——ちなみに、解熱・鎮痙・強心を目的として用いる牛黄カプセルなど(1回分が数千円くらいの)は、用量としては1日量200㎎(0.2g)~。動悸、息切れ、きつけの市販薬に入っているのは4㎎(0.004g)~。滋養強壮として安めの栄養ドリンクなどに使われるのは0.5㎎(0.0005g)程度~さまざまです——購入される際は使用目的と牛黄の配合量に対して妥当な金額のものなのかよく検討されてください。

板藍根(ばんらんこん)

ホソバタイセイの花

アブラナ科タイセイの根、またはキツネノマゴ科のリュウキュウアイの根など

【性味】苦 寒
【帰経】心 胃
【効能】清熱解毒 涼血

生薬としては、清熱・解毒・涼血の効能があり、高熱、頭痛、喉の腫れや痛み、煩躁などに用いることができます。ですが、現在はもっぱら、風邪やインフルエンザの予防に良いとして、のど飴や健康食品に使われています。

 

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