【清上防風湯】~ニキビ・吹き出物など顔や頭部の皮膚症状に使われる漢方薬~

清上防風湯

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)の解説

思春期や青年期にみられるニキビに使う漢方薬として代表的なものが、

清上防風湯せいじょうぼうふうとうです。

防風が主薬の生薬になっていて、体の部の熱をする(炎症を除く)はたらきをします。

若くて、体力のある人で、

赤ら顔、または発疹に赤みがあり、熱感や痒みがあるような炎症性の皮膚の疾患、

実証か虚証かでいうと、「実証」のニキビに使われる方剤です。

構成生薬

「浜防風」と「防風」の違いはこちらで

生薬構成の特徴

おおまかに生薬の効能を整理すると、

黄連・黄芩・山梔子・連翹といった清熱せいねつ作用のある(炎症をしずめたり、熱を冷ましたりする)生薬と、

防風・荊芥・連翹・薄荷・白芷などの解表薬げひょうやく(邪を体表から発散させる効果がある薬)

が大半を占めています。

それに、桔梗や枳実など、排膿効果を高める生薬も配合されています。

また桔梗や川芎、白芷は、一緒に配合する生薬の効果を身体の上部に導くはたらきがあります。

つまり、

体の部の熱をする(炎症を除く)という、漢方薬の名前が効能をよく表しており、

ニキビに対しても適していることが納得できるかと思います。

効能・効果

医療用エキス製剤(ツムラ・オースギ)

ニキビ

薬局製剤

体力中等度以上で、赤ら顔でときにのぼせがあるものの次の諸症:
にきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、あかはな(酒さ)

作用のポイント

赤ら顔身体の上部の熱に対して、清熱作用のある生薬がしっかりと配合されていますので、

清上防風湯が適応になるのは、顔が赤っぽい状態の人です。

赤ら顔、のぼせ(顔面や目の充血)、顔面や頭部の湿疹、

そしてニキビの場合にも青年期でよくみられるような実証のニキビ、赤い炎症性のニキビに使う、というのがポイントです。

荊芥連翹湯との違い

少し遠回しな説明になりますが、

同じように頭部や顔にみられる炎症や皮膚疾患に対して使われる薬(清熱剤)に、

荊芥連翹湯けいがいれんぎょうとうがあります。(⇒荊芥連翹湯の解説

構成生薬が、、、

黄芩・黄連・黄柏・山梔子(黄連解毒湯)
当帰・芍薬・地黄・川芎(四物湯)

連翹・薄荷・防風・荊芥・白芷・桔梗・枳実・甘草・柴胡

となっていまして、

黄連解毒湯おうれんげどくとう四物湯しもつとうで、つまり温清飲うんせいいんをベースにしている方剤です。

このうち、

太字になっている生薬のみを抜き出したもの、

黄芩・黄連・山梔子
川芎
連翹・薄荷・防風・荊芥・白芷・桔梗・枳実・甘草

これが、

「清上防風湯」です。

皮膚疾患に特化

荊芥連翹湯に含まれる四物湯は、補血剤でありまして、要するに補う作用もあります。

ですので荊芥連翹湯は、アレルギー体質の改善を目的としても使われます。

一方の清上防風湯では、補う生薬は除かれていて、

熱を冷ます、炎症を抑える、排膿させる、皮疹を発散させる

などの効能をもつ生薬のみで構成されています。

というふうに考えると、清上防風湯は(荊芥連翹湯に比べて)

皮膚の疾患(化膿症)を治療するために特化させた漢方薬だと言えます。

身体の上部に特化

また、抗炎症効果を期待したいのであれば、黄連解毒湯の部分はそのまま残しても良さそうですが、

わざわざ黄柏だけは抜かれています。

それは、黄柏は下焦の熱を除く生薬だからです。

体の下部(下半身)に炎症があれば黄柏が配合されます。

その下焦にはたらく黄柏をあえて抜いているのだと考えれば、

やはり清上防風湯は、身体の上部の炎症に特化させたいという意図が感じられます。

つまり、顔や頭部の症状にいちばん適しているわけです。

注意点

逆に、清上防風湯には、何かを補ったり、胃腸をフォローしたり、という配慮がありません。

胃腸の弱いは注意が必要です。

食欲がなかったり、倦怠感があったりするときは、他の漢方薬を検討されてください。

ニキビは、胃腸の問題、便秘、睡眠や食事の不摂生、ストレス、月経トラブルなどによっても起こります。

清上防風湯で改善しない場合は、これらの問題からアプローチする方法もあります。

例えば、もし清上防風湯よりも実証タイプで便秘傾向であれば、防風通聖散とか。

ニキビや吹き出物に使われる他の漢方薬を探すならこちら

甘草の配合量は少ないですが、長期服用する場合や、他の漢方薬と併用するときは、偽アルドステロン症などの副作用に気をつけてください。

出典

『万病回春』(16世紀)

面に瘡を生ずる者は上焦の火なり。上焦の火を清し、頭面瘡癤、風熱の毒が生ずるものを治す。

清上防風湯は上焦の風熱に対して用いることができる方剤です。
添付文書の適応上はニキビなどの皮膚疾患に特化した漢方薬のようではありますが、
配合生薬の内容としては身体上部の炎症症状に対して幅広く応用されてもおかしくはありません。

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