【四物湯】の解説~血虚に用いる漢方薬の基礎となる~

四物湯(しもつとう)

血虚けっきょに対して補血するためのもっとも基本となる漢方薬。

補血(けつを補う)作用をもつ漢方薬の多くも、この四物湯をベースにして構成されています。

また、月経異常に対して、調経(月経を調える)の基本処方としても使われます。

「血」に関わる4つの生薬から構成されているために「四物湯」です。

補血剤なので、当然「血虚証」つまり「けつ」の不足による症状に用いられるわけですが、

東洋医学的な「血の不足」と、西洋医学的な「貧血」は必ずしもイコールではありません。

効能・適応症状

四物湯は、下のような(血虚による)症状に用いられます。

  • 月経異常(月経不順、月経痛)、更年期障害、血の道症、不妊症
  • 貧血、産後または流産による疲労倦怠、月経時の倦怠感 冷え症、しもやけ、シミ、皮膚の枯燥(荒れ・カサつき)
  • 血虚によるめまい・ふらつき・頭痛・頭重感・目のかすみ

添付文書上の効能効果

【ツムラ】【クラシエ】他

皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症:
産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、冷え症、しもやけ、しみ、血の道症

【コタロー】

貧血、冷え症で腹部が軟弱でやや膨満し、便秘の傾向があるもの。
高血圧症、貧血症、更年期障害、月経不順、月経痛、過多月経、産前産後の諸種の障害。

【薬局製剤】

体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:
月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復

血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。

血虚(けっきょ)とは

萎びたリンゴ

「血虚」の概念は、ただ単に血液の量の不足だけではなく、 血(けつ)の持つ作用の不足という状態を含めた概念です。

血は、栄養物質を絶えず身体のすみずみにまで運び、全身を養い、潤し、生命活動に必要なものを提供しています。

そうしたはたらきの低下している状態を「血虚」ということができるわけです。

顔色が悪い、艶がない、潤いがない、爪が割れやすい、目が乾燥する、目が疲れる、ふらつく、ぼーっとする、筋肉がけいれんする、月経不順、髪が抜けやい、集中力がない

このような症状や徴候から分析されるものです。

「貧血」のように、数値で測るものではありません。

構成生薬とそのはたらき

  • 地黄(ジオウ)または熟地黄
  • 当帰(トウキ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 川芎(センキュウ)

4つの生薬の中で、補血作用をもつのは、地黄・当帰・芍薬の3つです。

では川芎はというと、活血薬であり、血の流れを良くするために配合されています。

川の流れにおいても、川の水量が少なくなるほど流れが悪くなり、淀んでしまうことがあるように、 血虚(血が不足)の状態があれば、血の流れも滞りやすく、血瘀が生じている可能性があるわけです。

例えば、そうめん流しをするときに、たくさん食べたいからといって、 やみくもに、そうめんばかり大量に投入しても、水の流れが悪いために、自分の所にまでそうめんが流れて来なければ台無しです。

四物湯の中にも、滞らないように流れを確保しながら補血する、というセオリーが組み込まれており、 当帰だけでも血を巡らせるはたらきはありますが、 川芎については、血の中の「気」も同時によく動かすので、「血中の気薬」という言い方をします。

これにより「血」を補うだけでなく、補った「血」が必要なところに供給されていきます。

注意点や副作用

四物湯は、冷え症の人向きと言われることがありますが、四物湯にはショウガのようなポカポカと体を温める作用はそれほどありません。血が行きわたらずに冷えていたのが、血が巡りだして徐々に改善されてくるというイメージです。

補血作用に即効性はありませんので、やはり(少なくても数日~)数週間以上の服用は必要かと思います。

味は甘めですが、当帰・川芎はセリ科で、セロリのような特有の香りがします。

血虚は女性に限ったものではありません。男性が服用しても全く問題ありません

血虚を招いている根本に、体質的な脾虚(気虚)の問題が存在している場合もあります。食欲がない、下痢しやすい等。このときはまず補気薬をメインに考えるか、または、補気作用のある漢方薬を併用しながら使った方がいいでしょう。

西洋医学的な「貧血」が疑われる場合、鉄欠乏性貧血の他、様々な原因が考えられるので、医療機関できちんと検査も受けられてください。

気を付けないといけない副作用は、胃腸障害です。

水分代謝の悪い人や、胃腸の弱い方が服用すると、胃部不快感、悪心、胃もたれ、食欲不振、下痢など起こすことがあります。

ただ、四物湯を単独で服用するとダメだけど、別の漢方薬なら大丈夫という場合もありますので、症状に応じて他の補血作用のある漢方薬を検討してください。(胃腸が弱くて浮腫のある人には当帰芍薬散などを)

出典

『和剤局方』(12世紀)です。

四物湯は、血虚に対する基本方剤とされますが、四物湯が補血剤として最初に登場したわけではありません。

歴史的には『金匱要略』(3世紀)にある「芎帰膠艾湯」(きゅうききょうがいとう)から、阿膠・艾葉・甘草が抜かれてシンプルな補血剤となり、それが四物湯として定着したかたちになります。

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