【当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の解説】~冷え症のむくみやめまい、腹痛などに用いられる漢方薬~

芍薬漢方薬の解説

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):TSS

当帰と芍薬の組み合わせで入っている漢方薬。

「血」の不足を補う作用があり、冷え症で貧血ぎみの女性にもっとも使われている漢方薬ではないでしょうか。

もとは、婦人の妊娠時腹痛のための方剤で、安産の薬、安胎薬としても知られています。

そのため女性用の漢方薬のイメージが強いですが、男性にも用いられますし、非常に適応範囲の広い方剤です。

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当帰芍薬散の出典

金匱要略(3世紀)

当帰芍薬散を構成する生薬

  • 当帰(トウキ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 川芎(センキュウ)
  • 沢瀉(タクシャ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 白朮(ビャクジュツ)または蒼朮(ソウジュツ)

当帰:セリ科トウキの根[セリ科特有の芳香あり、やや甘く後少し苦い;温性]
芍薬:ボタン科シャクヤクの根[わずかに甘く後渋く苦い;微寒性]
川芎:セリ科センキュウの根茎[特異な芳香、わずかに苦い;温性]
茯苓:サルノコシカケ科マツホドの菌核[臭い、味はほぼなし;平]
白朮:キク科オケラの根茎[特有の臭い、わずかに甘く苦い;温性]
沢瀉:オモダカ科サジオモダカの塊茎[わずかに甘い;寒性]

生薬の構成の特徴

当帰芍薬は「血」を補い、川芎が血行を確保します。それにより体全体に血液をめぐらせると同時に体を温めてくれます。

特に当帰は月経周期を整える生薬として欠かせないものです。婦人科系で使われる漢方薬にはたびたび登場します。

芍薬にはまた平滑筋、腹直筋などの緊張をほぐす作用があるので、当帰、川芎との組み合わせで下腹部の痛みを和らげる効果もあります。  

茯苓、白朮、沢瀉はどれも利水薬として、水分の滞りを取り去る作用があります。

構成している6つの生薬のうち、利水作用をもつ生薬の割合が多いことが当帰芍薬散の特徴です。

補血薬(「四物湯」-地黄)+利水薬(「五苓散」-桂枝・猪苓)

と整理することができます。

当帰と川芎はともにセリ科であり、婦人科で使う漢方薬には一緒に使うことが多いです。
ニンジン、セロリ、パセリなどのセリ科の野菜なども、男性よりも女性の方が好まれるように思います。セリ科の植物に含まれる成分が女性にとって良い成分であるということが言えるのかもしれません。

当帰芍薬散の使用のポイント

足のむくみのイメージ

補血と利水の効果を合わせた生薬構成です。

やせ型で筋肉が軟弱(柔らかい)、色白または青白い(顔色がすぐれない)、むくみやすい女性に用いられることが多い漢方薬です。

血虚の(血が不足している)ために起こる腹痛に用いられます。

血虚の方の月経痛は、下腹部全体がシクシクと絞られるように痛み、出血が始まってから痛む傾向があります。

利水の効果によって、冷えると腸の水分の滞りによって軟便、下痢になりやすい方、また冷えると足にむくみができやすい方にも適しています。

胃腸の水分停滞を取り去ることで、胃腸機能が改善し、食べ物からの栄養を吸収する力も助けます。倦怠感がある、疲れやすいといった、やや虚弱なタイプの方に向いています。  

車酔いやめまいなども、漢方的には水の滞り(水毒)と考えます。

頭痛や肩こりが、天気が悪い日に悪化する傾向があるのも水毒の可能性があります。

ですので、月経まえ、むくみの他にめまいや頭痛、頭が重くなるという症状にも対応します。
(ただし、水毒の症状がメインのときは、利水薬中心の方剤を使用した方が良い場合もあります)

当帰芍薬散の副作用・注意点

冷え症(特に腰から下)、または冷えると症状が悪化する方に用いますので、日常生活でも体を冷やさないようにすることが大事です。

利水作用の成分が多いので逆に、唇や皮膚の乾燥感が強い、口の中が乾燥している、尿の色が濃い、便秘傾向の方には向いていません。

また処方全体として体を温める漢方薬ですので、暑がりの方、のぼせる場合、例えば月経周期の高温期が37℃を超えるような場合とかも向いていません。

むくむ傾向がなく、逆に皮膚の枯燥傾向のある方には四物湯(しもつとう)や温経湯(うんけいとう)などを検討されてください。

昔から安胎薬として、妊娠中でも服用して安全な薬だと言われていますが、体質に合っていない場合はわざわざ服用する必要もありません。 (不妊症に用いる場合も同様)

当帰、川芎によって、胃部不快感、悪心、食欲不振など胃腸障害を起こすことがあります。空腹時ではなくて食後に服用すれば大丈夫な場合もあります。または、人参湯安中散六君子湯半夏瀉心湯などが併用こともあります。

当帰芍薬散に、胃腸のはたらきを助ける人参を加えたものは「当帰芍薬散加人参」。
タケダの「【第2類医薬品】ルビーナめぐり 」(Amazon)など。

白朮を使うメーカーと蒼朮を使うメーカーがあります。当帰芍薬散の場合はどちらが正しいかということは言えませんが、専門家によってはメーカーを使い分けることもあるようです。(一般的には、白朮は健脾に優れていて、蒼朮は燥湿に優れていると言われます。)

特に冷えが強い場合、当帰芍薬散に附子(ブシ)を加えた「当帰芍薬散加附子」というものもあります。(三和)

当帰芍薬散の効能・適応症状

さいごに適応症をまとめておきますが、
適応外も含めて、当帰芍薬散さまざまに症状に応用されています。

  • 月経異常(月経不順、月経痛)、子宮内膜症、更年期障害、血の道症
  • 冷え症、四肢冷感、しもやけ、むくみ、めまい、立ちくらみ、車酔い、耳鳴り
  • 貧血、産前産後または流産による貧血・疲労倦怠感、
  • 頭痛、頭重感、肩こり、腰痛、高血圧、低血圧、動悸、自律神経失調症、心臓弁膜症
  • 妊娠時の腹痛、習慣性流産、不妊症、つわり、吐き気
  • 花粉症、気管支喘息、腎疾患、習慣性膀胱炎、脱肛、痔核、脚気、半身不随、嗅覚障害

添付文書の効能・効果

【ツムラ】

筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:
貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症

【コタロー】

貧血、冷え症で胃腸が弱く、眼の周辺に薄黒いクマドリが出て、疲れやすく、頭重、めまい、肩こり、動悸などがあって、排尿回数多く尿量減少し、咽喉がかわくもの、あるいは冷えて下腹部に圧痛を認めるか、または痛みがあるもの、あるいは凍傷にかかりやすいもの。
心臓衰弱、腎臓病、貧血症、産前産後あるいは流産による貧血症、痔核、脱肛、つわり、月経不順、月経痛、更年期神経症、にきび、しみ、血圧異常。

【クラシエ】【オースギ】他

比較的体力が乏しく、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴える次の諸症:
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害 (貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ

【三和】

貧血、冷え症で顔色が悪く、頭重、めまい、肩こり、動悸、足腰の冷え等の不定愁訴があって、排尿回数が多くて尿量が少なく、下腹部が痛むものの次の諸症:
貧血症、冷え症、婦人更年期症、不妊症、流産癖、妊娠腎、ネフロ—ゼ、月経不順、子宮内膜炎、血圧異常、痔脱肛、尋常性ざ瘡

【薬局製剤】

体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

 

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