茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)の解説
茵蔯五苓散は、
利水剤(水毒を改善する薬)の代用的方剤である「五苓散」に、茵陳蒿(インチンコウ)を加えたものです。
たくさんお酒を飲み過ぎて、むかつき、吐き気、嘔吐、
さらに、疲れやストレスが蓄積されているときに飲んだお酒が原因で、
蕁麻疹ができたり、むくみ、痒みがあらわれた、
そういうときに使える漢方薬のひとつです。
構成生薬
五苓散に茵陳蒿を加えたものです。
茵蔯五苓散 = 五苓散 + 茵陳蒿
茵陳蒿は胆肝系の「熱」と「湿」を除く生薬で、黄疸に対しては要薬とされます。
五苓散に配合されると、清熱と利水の効果が加わります。
もともと茵蔯五苓散は黄疸を治療する方剤ですが、
黄疸が無くても、湿邪と熱邪、尿量が少ないといったことがあれば使用することができます。
効能効果
【医療用エキス製剤】(ツムラ)
のどが渇いて、尿が少ないものの次の諸症:
嘔吐、じんましん、二日酔のむかつき、むくみ
【薬局製剤】
体力中等度以上をめやすとして、のどが渇いて、尿量が少ないものの次の諸症:
嘔吐、じんましん、二日酔、むくみ
※漢方的な補足
茵蔯五苓散は、漢方でいうところの「(脾胃の)湿熱」タイプに使う方剤です。
甘いもの、油っこいもの、そしてアルコールも原因となるものです。
水分が体内を循環できずに滞って生じた「湿」と、過飲などによって生じた「熱」、
それらが結びついて「湿熱」。
「湿熱」が胃にこもると、胃のはたらきが悪くなるので、悪心や吐き気(むかつき)を起こします。
水分代謝の悪い状態があるのでむくみますし、
腹腔にこもった「湿熱」は冷やされずに体表から出てきます。これが一種の蕁麻疹だと考えます。
ポイント
茵蔯五苓散は、利水剤である五苓散に、茵陳蒿で清熱作用を加えたものです。
水液代謝が悪くなっているための「湿邪」(水毒)が中心にあり、
そこへ少し「熱邪」が加わったときに適します。
症状として現せば、
口の渇き、むくみ、尿量の減少、頭痛、下痢などが中心にあり、
そこへ、過飲による悪心・むかつき、もしくは蕁麻疹が加わったとき、茵蔯五苓散が適します。
あとは基本的に、体調がすぐれないときには、お酒は飲まない、飲みすぎないことが大切です。
市販薬では「アルピタンγ(ガンマ)」として販売されているのも茵蔯五苓散です。
茵蔯蒿湯との違い
同じく茵蔯蒿が配合される漢方薬で茵蔯蒿湯があります。
詳しくは茵蔯蒿湯の解説ページに書いていますが、
茵蔯蒿湯の場合は、湿よりも熱証が顕著な場合に用いられます。
また、黄疸を治すという観点では、ビリルビンを…
茵蔯蒿湯は胆汁⇒腸管⇒便から
茵蔯五苓散⇒尿から
排泄を促していると考えられます。
もしくは単純に、茵蔯蒿湯には大黄が配合されているので、軟便や下痢で茵蔯蒿湯が使用できないときに、代わりに茵蔯五苓散が使用されることがあるかもしれません。
茵陳蒿の苦味が強いせいで、どちらも飲みにくい味ですが、茵蔯五苓散の方がまだマシかと思います。(嘔吐があって飲みにくいときは、ムリして温服しなくても構いません。)
出典
『金匱要略』(3世紀)
黄疸病は茵蔯五苓散之を主る。
原典では、五苓散1に対して茵陳蒿末2の比率になっています。
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