足腰の冷えと腰痛に「苓姜朮甘湯」

椅子にかけて腰をおさえる黒いスーツの女性漢方薬の解説

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう):RKYJK

下焦の寒湿に対する代表処方。

腰から下が冷えて痛い、または腰から下が重だるい、といった症状によく用いられています。

構成生薬は、処方名の通りで、茯苓・乾姜・白朮・甘草の4種類。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)の桂枝を乾姜に入れ替えたもの、でもありますし、 人参湯(にんじんとう)の人参を茯苓に入れ替えたもの、と言うこともできます。

配合する生薬が一つ変わるだけですが適応症状が大きく異なり、苓姜朮甘湯の場合、病が腰から下であるのが特徴です。

「苓姜朮甘湯」という処方名は、どうやら日本独特のものらしく、もともとは「甘草乾姜茯苓白朮湯」つまり「甘姜苓朮湯」が本来の名前のようです。

また、腎著の病に使う方剤として、「腎著湯(腎着湯)」(じんちゃくとう)という別称があります。

苓姜朮甘湯の出典

『金匱要略』(3世紀)

「腎著の病は、其の人身体重く、腰中冷え、水中に坐するが如し、形水状の如く、反って渇せず、小便自利、飲食故の如し、病下焦に属す。 身労して汗出で、衣裏冷湿し、久久にして之を得、腰以下冷痛し、腰重きこと五千銭を帯ぶるが如きは、甘姜苓朮湯之を主る。」

分かりやすく書きかえるとこんな感じです。

→寒湿の邪が(腎のある)腰に付着して離れない病というのは、体が重だるく、腰が冷え、まるで水中に座っているようで、浮腫がありシャキッとしない。ただ、口渇はなく、尿はよく出て、食欲はそれまでと変わらず、病は下半身だけです。 疲労して汗をかき、衣服が湿って冷える、この状態をしばらく続けていればこの病になります。腰から下が冷えて痛み、五千枚もの銭の束を腰に下げているみたいに重い。これを甘姜苓朮湯で治療します。

苓姜朮甘湯の成分(構成する生薬)

  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 白朮(ビャクジュツ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 乾姜(カンキョウ)

茯苓と白朮は冷えの原因となっている滞った水分を除きます。

乾姜は身体の内部(主に腰やお腹)を温めて冷えを除くとともに、血液循環も良くなることによって茯苓と白朮の利水作用をつよめます。

白朮と甘草の健脾効果で、寒湿が付着しないようにして、重だるく感じる倦怠感を防ぎます。

寒湿が離れると、阻まれている気の流れがもとに戻り、痛みが改善します。

甘草は痛みの緩和、または、乾姜の刺激性を緩和しています。

苓姜朮甘湯の効能・適応症状

腰の冷え、腰部倦怠感、下肢倦怠感、冷え症

腰痛、坐骨神経痛 (冷えが原因による)夜尿症、頻尿

帯下、月経不順、浮腫

注意

上記の症状に応用されることがあるという意味であり、すべての症状が四物湯で治せる、ということではありません。 保険適応外の症状を含みます。

苓姜朮甘湯を使用するポイント

水中で携帯を見ている女性

苓姜朮甘湯が適するポイントは『金匱要略』の通りです。

  • 腰から下が冷えて、重い
  • 腰の痛み
  • 尿量が多い
  • 食欲は正常

腰の冷えは、水中に座っているかの如しです。

また、腰の重さは、重いものを腰に下げているかの如しなので、立ち上がる時は、近くのものに手をついて「どっこいしょ」と声に出しながら腰を持ち上げる、というような動きの鈍さがあります。

倦怠感や、軽度の浮腫を伴うことがあります。 しかしながら、八味地黄丸や真武湯を使わなければいけない程の、その他の全身的な機能低下はみられません。

湿気の多く、気温の低い場所で過ごすことが多い人に起こりやすい症状です。

苓姜朮甘湯と人参湯との比較

苓姜朮甘湯は、腰以下の組織中の過剰な水分を除いて温める配合、とすれば 、

人参湯は、人参+乾姜によって、胃腸機能の低下を改善して温める配合となります。

苓桂朮甘湯と苓姜朮甘湯との比較

苓桂朮甘湯は、 桂枝が「気」をめぐらせ、体の上部への血行をつよめるので、 水滞の症状が、上半身に現れたような、めまい、ふらつき、立ちくらみ、頭痛などの症状に使う処方になります。 このタイプの方は、身体を循環する水分量の減少しているために、尿量は減少の傾向があります。

一方、苓姜朮甘湯は、 乾姜が、消化器を温め、冷えをとるので、 水滞が、腰部または腰以下の下半身にあり、腰が冷えて、重だるい状態に使う処方になります。 循環水分量の減少はなく、冷えで発汗も少ないため尿量は多くなる傾向があります。

苓姜朮甘湯の副作用や注意点

苓桂朮甘湯と名前が似ていますので、間違えないように注意してください。

腰の冷え以外に、脾虚や腎虚などの症状がある場合、それらに対する処方の使用または併用が必要なことがります。脾虚だと六君子湯や人参湯など。腎虚なら八味地黄丸や牛車腎気丸など。

服用するとともに、日常生活でも体(特に腰~下肢)を冷やさないように気をつけましょう。

甘草が含まれているため、偽アルドステロン症、ミオパチーなどの副作用に気をつけてご使用ください。 (症状:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる)

用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

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