【当帰飲子】の解説~乾燥肌の皮膚のかゆみに用いる漢方薬~

当帰飲子(とうきいんし)の解説

当帰飲子とうきいんしは、「血虚けっきょ」にともなって発生する「かゆみ」に用いる漢方薬です。

漢方的には血虚生風けっきょせいふうに対する方剤とされます。

血虚証に用いる四物湯しもつとうをベースに、皮膚の症状により適するよう改良されています。

血虚の皮膚について

乾燥した大地

中高年~高齢者の皮膚にみられることが多い、

皮脂(や汗)の分泌が減少して乾燥し、

皮膚の保護機能がおとろえた状態。

乾皮症と言ったり、皮脂欠乏性湿疹と言ったり、老人性皮膚掻痒症と言ったりしますが、

いずれも皮膚がカサカサとして、粉をふいたように白っぽくなり、痒くなって、

掻きむしってしまうと乾燥した皮膚がぽろぽろと落ちる。

このような状態は、漢方的には「血虚けっきょ」にあてはまり、

けつ」が皮膚を養えていない状態のことを指しています。

血虚により乾燥した皮膚は、本来の皮膚の機能が不十分で、

例えば防御機能が低下するため、

外からの刺激に対して過敏に痒みを起こしやいとか、細菌が侵入しやすいとか、炎症を起こしやすいとかがみられます。

効能・適応症状

血虚をともなう↓のような症状に当帰飲子が用いられます。

  • 慢性湿疹、尋常性痒疹(皮膚のかゆみ)
  • 慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬
  • 乾皮症、老人性皮膚掻痒症、皮脂欠乏性湿疹
  • 人工透析に伴う皮膚掻痒症など

添付文書上の効能・効果

【ツムラ】

冷え症のものの次の諸症:
慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ

乾燥肌

構成生薬

生薬の解説

当帰・川芎・芍薬・地黄の4つで、補血ほけつの基本処方である四物湯しもつとうです。

何首烏も、(肝の)けつを増やす生薬です。

黄耆・甘草補気薬ほきやくとして入ります。

血を補うときには、それだけではなく、気を一緒に補っておくことで血の産生をより増やせますし、

皮膚の保護(防衛)機能を補うことができます。

十全大補湯じゅうぜんたいほとうにも、同じように四物湯+黄耆・甘草の組み合わせがみられます。)

甘草には潤す(保湿)効果もあります。

防風・荊芥・蒺䔧子が、痒みを抑える目的で配合されています。

防風・荊芥は、「清上防風湯せいじょうぼうふうとう」や「荊芥連翹湯けいがいれんぎょうとう」など、皮膚疾患に使われる漢方薬にはおなじみのコンビです。

現在の処方には含まれませんが、原典では生姜しょうきょうを一緒に煎じることになっています。これには地黄や当帰による胃腸障害を防ぐ目的があるのかもしれません。

副作用や注意点

スキンケアのイメージ

当帰飲子は、補血剤の基本である「四物湯」をベースにしている方剤です。

  • 唇が乾燥している
  • 髪にツヤが少ない
  • 爪が割れやすい
  • 月経不順

のような血虚の徴候があって、

皮膚がカサカサしている乾燥性の湿疹や痒みに適します。

一般的には中高年~高齢者(の乾燥肌)、
または、冬の乾燥時期(特に夜)に皮膚の痒みが増悪する人に使われることが多いです。

保湿剤のような外用薬を一緒に使うのも効果的です。

処方全体としては温める方剤ですので、冷え症の人に向いています。

潤す作用を期待していますので、分泌物の多い化膿性の皮膚疾患には適していません。

清熱せいねつ(炎症をしずめる)を目的とする生薬は配合されていませんので、炎症性の強いときにも不向きです。

ただし、皮膚に炎症や赤みのある場合には、当帰飲子に清熱剤である黄連解毒湯おうれんげどくとうなどを併用して用いることがあります。

(ちなみにこの場合、当帰飲子の中の「四物湯」+「黄連解毒湯」で「温清飲うんせいいん」ベースになります。)

地黄や当帰、川芎による胃腸障害に注意が必要です。

空腹時に服用して胃もたれを起こすときは、食後に服用してみてください。

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