【小建中湯の解説】

小建中湯の解説漢方薬の解説

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

建中湯類のひとつ。

建中とは、中(中焦のお腹、脾胃、消化器機能)を建立する(建て直す)という意味で、
消化器機能の低下(脾虚)、体力の低下など虚弱者の体質改善に用いることができる方剤です。

落語に「葛根湯医者」というのがありまして、誰にでも葛根湯ばかり処方する医者の小噺ですが、
同じように、漢方薬を処方する小児科のドクターは「小建中湯(ばかり処方する)医者」と言われてしまうかもしれません。

小児の体質改善には非常によく使われている方剤です。

ただ当然、小児用の薬というわけではありませんので、症状が合えば、成人や高齢者でも適します。

小建中湯の成分(配合される生薬)

  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 大棗(タイソウ)
  • 膠飴(コウイ)

桂枝湯」の芍薬を倍量にした「桂枝加芍薬湯」に、膠飴を加えたものです。

小建中湯 = 桂枝加芍薬湯 + 膠飴

水飴

膠飴(コウイ)について

膠飴はたくさん加えられていまして、
重さでいうと「小建中湯」の半分近くは膠飴の重さであり、
エキス剤の1日の服用量が多くなってしまうのは膠飴のせいです。

その分、小児にも飲みやすい甘い味になります。ただし、やはり「桂枝湯」の匂いは少し残ります。

膠飴とは、米や小麦のでんぷんに麦芽を加えて醗酵させたもので、いわゆる「アメ(水飴)」のことです。

甘くして飲みやすくしているだけではありません。

  • 栄養を補う
  • 腸内環境を改善する
  • お腹の痛みを和らげる

などの効果が期待されています。

膠飴の成分は、ほぼマルトース(麦芽糖)、とデキストリン。
ですが、これが薬と言われるほどの明確な作用機序はいまだ分かっていないことも多いです。

小建中湯の効能・適応症状

  • 虚弱体質、疲労倦怠感、病後の体力低下、冷え症、小児の鼻出血
  • 小児の夜尿症、夜泣き、尿失禁
  • 食欲不振、下痢・便秘・腹痛、過敏性腸症候群、神経質、朝に腹痛を訴える登校拒否
  • 急性胃腸炎、慢性胃腸炎、脱肛、乳幼児の便秘
  • (下痢や腹痛をともなう)虚弱者や小児のカゼ
  • 頻尿、多尿、寝汗、口や唇の乾き
  • アレルギー性疾患の体質改善

小建中湯のポイント

手をつなぐ親子

消化器機能を高め、胃腸虚弱による諸症状を改善させます。

小児の腹痛、便秘、夜尿症などにはファーストチョイスとなる方剤です。

膠飴には、気力を増して元気をつける効果と、急に起こる腹痛などの症状を緩和させるはたらきもあります。

甘味があり飲みやすく、小児の服用に適しており、小児に用いられることが多いですが、もちろん大人でも使われます。

小児の体質改善に用いられることが多いですが、たんに小児の体質改善といっても、その適応症状を具体的に言えば…風邪を引きやすい、疲れやすい、冷え症、顔色が悪い、貧血、不活発、常習頭痛、神経質、頻尿、食が細い、便秘、下痢、腹痛、夜泣き、夜尿症(おねしょ)、寝汗手足のほてり、鼻血、等々、非常に幅広いものになります。

幅広い作用の例えとして、腹痛と頻尿が同じ薬で改善できる理由の一つに芍薬があげられます。芍薬には、芍薬甘草湯に代表されるように、鎮痛・鎮痙、そして平滑筋弛緩作用があります。腸に作用すれば腹痛を抑えるし、膀胱に作用すれば頻尿を抑えると理解できます。

小建中湯が処方されるもう一つの理由

小児が腹痛などの体調不良を訴える背景には、

時として、母親に十分に構ってもらえていない、

甘え足りない、というストレスの表現である場合があります。

そこで例えば、「小建中湯」を体質改善のために1日3回服用しましょう、となれば、

子供にとっては1日3回、母親に薬を飲ませてもらう、構ってもらえる機会が増えるわけです。

つまり、

薬のそのものの効果と一緒に、心を満たす効果も期待されています。

「黄耆建中湯」について

「小建中湯」に黄耆を加えると「黄耆建中湯」(おうぎけんちゅうとう)です。

「小建中湯」を使うよりも、脾(胃腸)の機能低下があり、気虚の程度が強い場合、

例えば、寝汗が多いとか、湿疹などの皮膚症状が多いとかのときは「黄耆建中湯」が使われます。

小建中湯を服用するときの注意点

エキス剤(粉薬)

膠飴が含まれている分だけ、1回の服用量が多い漢方薬です。

お湯に溶かすと桂皮のシナモンの香りが出ます。小児で匂いが苦手な場合は、お湯に溶かさない方が飲みやすいです。

(胃熱による)膨満感や嘔吐があるときは慎重に。(膠飴の含まない「桂枝加芍薬湯」を使う方がいいかもしれません。)

長期間服用するときは、甘草による副作用に注意してください。

煎じる場合、膠飴以外を先に煎じ、出来上がった煎じ液に膠飴を溶かし入れます。

用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

 

小建中湯の出典

傷寒論(3世紀)

「傷寒、陽脈渋、陰脈弦、法まさに腹中急痛すべし、先ず小建中湯を与へ、瘥へざる者は小柴胡湯之を主る」

「傷寒、二三日、心中悸して煩する者、小建中湯之を主る」

金匱要略(3世紀)

「虚労、裏急、悸し、衂し、腹中痛み、夢に失精し、四肢痠疼、手足煩熱、喉乾口燥する者は、小建中湯之を主る」

「男子の黄し、小便自ら利すは、まさに虚労の小建中湯を与うべし」

「婦人、腹中の痛むは、小建中湯之を主る」


原則としては、虚証か実証か分からない、迷うときには、先に小建中湯のような虚証向きの方剤が使われることになります。

『傷寒論』では、こじれたカゼで、本来は小柴胡湯を使うべきところでも、虚弱体質の胃腸が弱い人で、腹痛があるときは、まずは小建中湯を用いた方が良い場合があって、それで治らなければ(少し実証向きの)小柴胡湯を用いる、と書かれています。

小建中湯の構成がもともと、桂枝湯→(+芍薬)→桂枝加芍薬湯→(+膠飴)→小建中湯であるというのがポイントで、小建中湯だけでお腹の症状とともにその他の症状もすべて改善することがあります。

柴胡剤(に限定するわけではありませんが)の前にまず小建中湯によって脾胃(消化機能)を整えておいた方が、いきなり柴胡剤を使うよりも効果が高いことがあり、この点でも、小建中湯の建中(脾胃を建て直す)作用の役割はとても大事です。

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