【黄耆建中湯】~小建中湯よりも気虚がすすんだ状態に用いる漢方薬~

黄耆建中湯

黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)の解説

黄耆建中湯おうぎけんちゅうとうは、

小建中湯しょうけんちゅうとうに、黄耆を加えたものです。

「〇〇建中湯」のグループは、どれも胃腸虚弱がもとにある諸症状に用いられています。

黄耆建中湯も、小建中湯と同様、虚弱体質の改善に使われたりしますが、

黄耆が配合されていることによって、とくに、皮膚の状態(汗がとまらない、皮膚の病気が治りにくい等)の改善にも利用することができます。

構成生薬

※膠飴が入らない場合があります。

黄耆建中湯は、小建中湯に黄耆を加えたものです。

黄耆は補気薬ほきやくで、かつ益衛固表の効能をもちます。表を固めて、皮膚の機能を高める生薬です。

効能・適応症状

【医療用エキス製剤】

身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症:
虚弱体質、病後の衰弱、ねあせ

【薬局製剤】

体力虚弱で、疲労しやすいものの次の諸症:
虚弱体質、病後の衰弱、ねあせ、湿疹・皮膚炎、皮膚のただれ、腹痛、冷え症

 

小建中湯に黄耆を加えたものですから、

基本的には小建中湯と同様の使い方も可能でありますし、

また、黄耆が配合されている分だけ、小建中湯よりもさらに気虚がいちじるしい状況に応用することもできます。例えば…

  • 虚弱体質(カゼをひきやすい、咳がとまらない等)の改善、病後の体力回復、冷え症、息切れ
  • 多汗(汗をかきやすい)、寝汗、夜尿症
  • 腹痛、食欲不振、腹直筋の緊張
  • 湿疹、皮膚のびらん、褥瘡、痔ろう、アトピー性皮膚炎
  • 慢性中耳炎(小児の反復性中耳炎)、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、アレルギー性鼻炎

黄耆建中湯のポイント

虚弱、虚労による諸症状を改善させる漢方薬です。

小建中湯を使うよりも、さらに体力の衰えがみられるとき(気虚の程度がつよいとき)に用いられます。

漢方で、体の衰弱の程度の目安にされるのが、自汗じかんです。安静時、何もしていないのに自然と出てくる汗のことです。

体表をめぐる気が虚したときには、汗を制することができなくなります。

そのため、ちょっとの動作だけでも汗が自然に漏れてきて、なかなか止まりません。

黄耆は、そのような体力の低下と汗のかきやすい状態、両方に対して効果があります。

黄耆建中湯は、まず小建中湯の部分で胃腸の虚弱を補いつつ、

黄耆の配合により、気を補って、表を固め、皮膚の機能を高める効果が加わります。

ですので、

  • 胃腸のはたらきをととのえて、虚弱体質を改善する
  • 気を益して、汗の漏れをとめ、疲労倦怠を改善する
  • 皮膚の抵抗力を高めて、皮膚の炎症や化膿、創傷などの治りにくいものを改善する

といったことに応用されています。

副作用・注意点

味は甘くて飲みやすいです。ただ、逆に甘すぎると感じることがあるかもしれません。

体質改善の目的で長期処方されることがあります。連用する場合は甘草による副作用(低カリウム血症、偽アルドステロン症など)に注意してください。

医療用エキス製剤には、東洋とツムラがあります。東洋には膠飴が含まれていません。ツムラには膠飴が含まれているので、その分量だけ1回の服用量が大きくなります。ツムラの場合は通常成人量は「1日6包」ですのでご注意ください。(膠飴の有無によって効果に違いがあるのかどうかは分かりません。)

出典

『金匱要略』(3世紀)

虚労の裏急、諸の不足は黄耆建中湯之を主る。

⇒極度の疲労があって、お腹が急に痛くなったり、もろもろが衰弱しているときは黄耆建中湯がよい。

もろもろの不足」とありますが、黄耆が主薬ですので、やはりいちばんは気の不足(気虚)がいちじるしい虚労が主治です。腹痛はなくても使用できます。

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