漢方で整える養生法|食欲不振・逆流性食道炎・胃痛・過敏性腸症候群・便秘・下痢・痔
「なんとなく胃が重い」「お腹の調子がずっと不安定」——そんな不調、放っていませんか?
現代人の胃腸は、ストレスや食生活の乱れ、冷えなど、さまざまな要因でダメージを受けがちです。
漢方では、胃腸の不調を「脾(ひ)」とともに「気」「水」「熱」などのバランスの乱れと捉えて、体質や原因に合わせたアプローチを行います。
ここでは、食欲不振・逆流性食道炎・胃痛・過敏性腸症候群・便秘・下痢・痔といった症状に対し、生活の見直し・食事・漢方的視点から基本的ケアをまとめています。
気になる項目から、ぜひご覧ください。
食欲不振
生活
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- ストレスを減らす、リラックスした環境を整える
- テレビゲームやスマホはほどほどに
毎日決まった時間に食事がとれることも大事です。
多忙なとき、急な環境の変化があるときは注意してください。
多忙なとき、急な環境の変化があるときは注意してください。
食事
- 無理して食べようとしないで、一度に食べる量を減らす代わり、食べる回数を増やす
- 消化しやすく、栄養価の高いものをとる
- よく噛んで、ゆっくりと食べる
- 生野菜や果物などの胃腸を冷やしやすいものは控えめに、常温や温かい食事を選ぶ
- 食欲をそそるような香りのある食材、酸味のある食材を取り合わせる
- 楽しい雰囲気を演出する(食器、盛り付け、花、BGMなど)
- 食前酒として梅酒やワインを少量飲む
漢方的視点:「脾気虚」や「胃陰虚」による消化機能の低下と、ストレスも要因。脾胃を元気にする養生が大切。
逆流性食道炎
生活
- 食後すぐに横にならない
- ベルトや下着で腹部を締めつけすぎない
- お酒やタバコを控える
- ストレスを減らす
- 背筋は伸ばし、前かがみの姿勢にならない
- 運動をして肥満を改善する
自覚症状が無いと思っても炎症は繰り返し起こっていることがあるので、定期的に内視鏡検査は受けてください
食事
- 夜遅い時間に食べ過ぎない
- 消化に良い食事を少量ずつゆっくり食べる
- 緑黄色野菜を中心にして、脂が多いものや甘いものは摂りすぎない
- 香辛料、コーヒー、アルコールは控えめに
- 油で揚げた料理よりも、茹でて調理したものや蒸した料理、煮物などを選ぶ
- 暴飲暴食を避ける、腹八分目をこころがける
- 就寝時に頭を少し高くして寝る
漢方的視点:「胃熱」や「気逆」が原因となることが多い。胃の熱を冷まし、気の流れを整えることが重要。
胃痛・胃炎・胃もたれ
生活
- ストレスをためない
- 食後はのんびり過ごす
- 十分な睡眠をとる
- ウォーキングなどの軽い運動をする
- 腹式呼吸をする
- お腹を冷やさない
食事
- 消化の良いタンパク質をとる(豆腐、白身魚など)
- 胃粘膜の機能を高めるビタミンAやビタミンEを含んだ食品をとる
- 基本的には薄味で、温かくやわらかいもの(おかゆ、うどんなど)
- 冷たいもの、とても熱いもの、刺激の強いもの(辛い物・カフェイン)、脂っこいものは控える
- よく噛んでゆっくり食べる
- 暴飲暴食をしない
- 空腹時に刺激物をとらない
症状の激しいときには絶食で水分補給のみして、医療機関を受診してください。
漢方的視点:「寒邪による痛み」や「肝胃不和」、「気滞」などが関与。冷えを除き、気血の巡りを整えることが必要。
過敏性腸症候群
→過敏性腸症候群(IBS)① ~症状と原因について~
→過敏性腸症候群(IBS)② ~使用される薬の特徴と注意点~
生活
- ストレスへの対策をする(十分な睡眠・趣味・適度な運動・入浴など)
- 夜遅い時間の食事や飲酒を避ける
- 夜更かしをせず、疲労をためない
- できるだけ起床、食事、睡眠の時間を毎日一定にする
- 早く起きて、朝食の時間とトイレに座る時間を充分に確保する
- そして時間的余裕を持って家を出る
- お腹や足腰を冷やさないように気をつける
- 腸内環境を整える
- 軽い運動や呼吸法、瞑想などで自律神経を整える
食事
- 基本的には食べてはいけないものはないので、神経質になる必要はありません
- 食物繊維をとることを心がけて、色々な食品をバランスよく摂る
- 腸にやさしい発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト)
- ゆっくりとリラックスして食べること
- 冷たいものや香辛料などの刺激が強いもの、カフェイン、アルコールは一度に摂り過ぎない
- 低FODMAPダイエット(消化吸収されにくいために腸内で発酵してガスを産生しやすい糖類を含む食品の摂取を制限する食事療法)
不溶性食物繊維(野菜・キノコ・穀類・豆類に多い)は腹部膨満感の原因になることがあります。腹部膨満感のある場合は、水様性食物繊維(寒天・ワカメ・昆布・里芋・熟した果物など)の方を多めにしましょう。
便秘や下痢の症状に応じて↓の養生法も参考にしてください。
便秘や下痢の症状に応じて↓の養生法も参考にしてください。
漢方的視点:「肝気鬱結」「脾虚」「腸の寒熱不調」が原因。心身のバランスを整える漢方が効果的。
便秘
生活
- 排便習慣をつける。便意をガマンしない。
- 規則正しい生活。睡眠時間をしっかりとる。
- 朝起きてすぐコップ一杯の白湯を飲む。朝食を抜かない。食後トイレに行ける時間を十分確保する。
- かるい運動(体をひねる運動、ウオーキング、腹筋、ヨガ、フラダンスなど)をする。
- おなかを時計回りにマッサージをする。
- ストレスをためない。
- 腹式呼吸を行う。
排便回数は個人差があるので、1日1回という回数にはこだわらなくて構いません。
理想的な排便の姿勢
- 背筋は伸ばして、やや前かがみになり、両ひじを太ももの上に置き、顔はやや下向きで、腹筋にだけ力を入れる。
- 便座の高さは人によって高い低いがあるので、かかとを持ち上げるか足元に台を置くかして、太ももの高さを調節し、できるだけ少ない力で排便できるようにする。
- 前かがみの姿勢を維持するのがしんどいときは、大きめのクッションを抱きかかえて安定させる。
食事
- 食物繊維(きのこ、海藻、ゴボウ)をとる
- 発酵食品(納豆、味噌、キムチ、ヨーグルトなど)をとる
- 朝食に水分の多い食品をとる(発酵食品と水分をバランスよく)
- 香辛料をつかう
- 無理なダイエットをしない
- 冷たいものの摂りすぎには注意
漢方的視点:「腸燥」「血虚」「気虚」など原因はさまざま。体質に応じて調整が必要。
下痢
生活
- 体を冷やさない(夏は冷房で冷やしすぎないように)
- ストレスを避ける
- 規則正しい生活をこころがけ、十分な睡眠をとる(疲労・睡眠不足をためない)
- 暴飲暴食をしない
- お風呂はぬるめのお湯でゆっくり浸かる
食事
- 冷たいビール、ジュース、水、牛乳は飲みすぎない(※脱水症状を防ぐための水分補給は必要:湯冷まし、麦茶、番茶、経口補水液などで)
- お粥のような消化吸収のよいものをとる
- ビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜をとる
- 生もの(火の通っていないもの)や生野菜は控えて、温野菜や温かいスープにする
- 脂っぽいもの、甘いもの、乳製品、香辛料、海藻類、アルコールはできるだけ避ける
- 少量ずつ回数を分けて食べる
漢方的視点:「脾陽虚」や「寒湿」、また「気虚」による吸収力の低下が関与。
痔
生活
- 便通を整える(便秘・下痢ともに悪化要因)
- 便は無理にいきんで出そうとしないこと
- 立ちっぱなし座りっぱなしの姿勢を長時間続けない
- 十分に水分を摂取する
- ウォシュレットは使い過ぎない(肛門が乾燥しやすい)
- タバコを控える
- お風呂はぬるめの温度(38~39℃程度)でゆっくり浸かる。(体の冷えは血流を悪くし、症状を悪化させる)
食事
- 辛いもの、香辛料(スパイス・唐辛子・からし等)、脂っこいものを控える
- アルコールを控える
- 便秘しないように野菜、果物、海藻類、きのこ類をきちんととっておく
- 腸内環境を整える食品、発酵食品、乳酸菌飲料などをとる
- 無理なダイエットはしない
漢方的視点:「瘀血」や「気虚」、「湿熱」などが原因となる。血流を整え、炎症や痛みを鎮める漢方が用いられる。
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