過敏性腸症候群(IBS)② ~使用される薬の特徴と注意点~

症状別

過敏性腸症候群(IBS)の治療に使われる薬をまとめています。

薬を使用するときの注意点

生活習慣の見直し

とりあえず今一番困っている症状を抑えるために薬を服用する、というのが最初の対処だと思います。
ですが、それでひとまず症状が落ち着いたら、薬を使う使わないにかかわらず、
生活習慣(睡眠や日々の食事の摂りかた)について改善できるところがないか見直してみてください。
神経質になる必要はありません。
すぐに変えるのが難しいことも多いと思いますが、
日常生活がなるべく苦痛なく過ごせるように、症状の出にくい生活のリズムへ整えていきましょう。
過労や睡眠不足、食生活の乱れが改善することで、薬の効果がより早く出てくることもあります。

過敏性腸症候群以外の可能性も考えておく

薬によっては、市販薬(OTC)で手に入るものもあります。
症状が軽いときには、まずはそういう薬をまず試して頂くのも結構です。
しかし、症状が下痢型であるか便秘型であるか、いずれにしても、
薬を使っても良くならない場合は、他の疾患の可能性も含めて、医療機関で相談されることをお勧めします。

専門家に確認する

便秘薬には、常用し続けると次第に効かなくなってきてしまうものがありますし、
下痢止めに関しても、常用に適しているものとそうでないものがあります。
また適切に使わなければ副作用のおそれもありますので、薬局の薬を購入されるときは、薬剤師や登録販売者にご相談ください。
数種類の薬を併用することに関しても、組み合わせによっては効果が減弱したり、副作用のリスクが増したりするおそれがありますので、あらかじめ確認されてください。

薬の特徴を理解して使う

それぞれの薬の特徴(作用と副作用)を理解して使用してください。
今現在一番困っている症状をとりあえず今だけ抑えるのか
症状をある程度まで軽くできる薬を気長に飲み続けいくのか
病気の根本となっている原因・体質の方を治していくのか
効能効果だけみて選ぶのでなくて、きちんと目的を考えて使用しましょう。
他の人がよく効いたと言っている薬が、自分にも合うとは限りません。

胃腸の薬以外の治療法も

過敏性腸症候群の症状は、消化器系の問題だけではなく、ストレスによる自律神経の乱れも大きく関係しています。または、不安やうつなどへの対応が必要こともあります。
ですので、消化器症状を改善する薬を服用していても、限界がある可能性もあります。
抗不安薬や抗うつ薬の他、必要に応じて心理療法なども検討されてください。

西洋薬

では、消化管にはたらく過敏性腸症候群の主な薬とその特徴です。

以下の説明には、基本的な特徴のみを記載しております。実際に使用する場合は、添付文書の注意事項をよく読んでからご使用ください。

消化管機能改善薬(オピオイド受容体作動薬)

トリメブチン(商品名:セレキノンなど)

  • 消化管運動の促進または抑制に関わるオピオイド受容体に作用するとともに、消化管平滑筋にも直接作用します。
  • 下痢のときは消化管運動を抑制し、便秘のときは消化管運動を促進するため、下痢と便秘どちらにも効果があります。
  • 下痢と便秘を交互に繰り返すときによく用いられます。
  • 腹痛には即効的にはたらきますが、効き目はやや穏やかです。
  • 市販薬(第2類医薬品)で「セレキノンS」として販売されています。

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬

ラモセトロン(商品名:イリボー)

  • 亢進した消化管運動を抑制します。
  • また、感覚神経にも作用して腹痛や内臓知覚過敏を改善する作用もあります。
  • 下痢型の過敏性腸症候群に用いられます。
  • 便秘の場合は、便秘の症状を悪化させる可能性があります。
  • 抗コリン薬や、抗コリン作用を有する抗うつ薬、下痢止め(ロペラミド)を併用すると、特に便秘の副作用が起こりやすくなります。

抗コリン薬

ブチルスコポラミン(商品名:ブスコパンなど)/チキジウム(商品名:チアトンなど)/メペンゾラート(商品名:トランコロンなど)/チメジウム(商品名:セスデンなど)

  • 消化管の運動と、消化管分泌を抑制します。
  • 平滑筋の収縮を抑制するので、鎮痙作用、鎮痛効果も有します。
  • 主に、下痢と腹痛に用いられています。
  • 緑内障、前立腺肥大による排尿障害、麻痺性イレウス、重篤な心疾患のある方など、使用ができない「禁忌」がありますので注意が必要です。

消化管運動賦活薬(5-HT4受容体刺激薬)

モサプリド(ガスモチンなど)

  • 消化管運動を促進します。
  • 消化管運動が低下して起こる便秘に用いられます。
  • 消化管の内容物の通過時間を短縮させ、腹痛・腹部膨満感の改善・ガス量の減少なども期待して使われることがあります。

高分子重合体

ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフルなど)

  • 非溶解性の親水性ポリアクリル樹脂の一種であり、消化管内で水分をよく吸収・保持し、膨張・ゲル化します。
  • 下痢に対しては、便の過剰な水分を吸収して便を硬くし、ゲル化によって便の流動性を低下させ、それにより水分の吸収がさらに促進されて、下痢症状を改善します。
  • 便秘に対しては、保水作用によって便を軟らかくするとともに、便の膨張によって大腸が刺激されて便を排泄しやすくします。
  • つまり下痢にも便秘にも対応しています。
  • 膨張を助けるために、コップ一杯ほどの十分な水分で服用することも大切です。
  • 薬剤そのものは体内に吸収されないので、全身への影響は少ないです。
  • 効果の発現まで数週間くらい要することがあり、その間は他の薬と併用されることもあります。
  • 胃酸によって薬剤中のカルシウムがはずれて、胃を通過後の中性条件下で水分を吸収しゲル化します。このため、胃内のpHを上昇させる薬剤(PPIや制酸剤、酸化マグネシウムなど)を併用すると効果が減弱するおそれがあります。
  • 高Ca血症のある方、腎結石、腎不全、腸閉塞を引き起こすおそれがある方など、使用できない「禁忌」のことがあるので注意が必要です。

整腸剤(プロバイオティクス)

ビフィズス菌・酪酸菌・乳酸菌・ラクトミン・カゼイ菌・糖化菌など、またはこれらの配合製剤(商品名:ビオフェルミン、ラックビー、ミヤBM、ビオスリーなど)

  • 腸内細菌のバランスを改善します。
  • ヒトにとって有益な善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑え、腸の調子を整えます。
  • 下痢でも便秘でも使用できますが、どちらかというと下痢に用いられることが多いです。
  • おならの臭いの改善に用いても良いです。
  • 同様の機能をもっている食品(機能性表示食品)で摂取しても構いません。
  • 腸内細菌のバランスは、ストレスや食生活の乱れによっても崩れやすいものなので注意してください。

止痢薬

ロペラミド(商品名:ロペミンなど)

  • 腸管のオピオイド受容体作動薬です。
  • 消化管運動を強力に抑制して下痢をとめます。
  • 感染性の下痢、潰瘍性大腸炎のときは原則では使わない方が良いので注意が必要です。
  • タンニン酸アルブミンと一緒に服用すると作用が減弱するおそれがあります(服用間隔をあけてください)。

タンニン酸アルブミン(商品名:タンナルビンなど)

  • 腸粘膜の表面に膜をつくって覆い、消化管分泌や刺激を抑え、下痢の症状を改善させます。
  • 牛乳アレルギーのある方は使用できません(禁忌)。
  • 鉄剤とは相互に作用を減弱させるので併用ができません(併用禁忌)。

ベルベリン・ゲンノショウコ(商品名:フェロベリンなど)

  • 腸内細菌叢の正常化、腸内腐敗・発酵の抑制などの作用があります。
止痢薬はいずれも長期的な使用は望ましくありません。対症療法です。

粘膜上皮機能変容薬

ルビプロストン(商品名:アミティーザ)

  • 消化管のClC-2(クロライドイオンチャネル)を活性化して、腸管内への水分の分泌を促進します。
  • 便の水分含有を増やして軟らかくして、腸管内の輸送能力を高め、自然な排便を促します。
  • 慢性便秘症に用いられています。(器質的疾患による便秘を除く)
  • 妊婦または妊娠の可能性のある女性は使用できません。

リナクロチド(商品名:リンゼス)

  • 消化管のGC-C受容体(グアニル酸シクラーゼC受容体)を活性化し、腸管分泌や、腸管内の輸送能力を高めます。
  • また痛覚過敏改善作用があり、腹痛や腹部不快感も和らげます。
  • 便秘型の過敏性腸症候群に用いられます。
  • 体内へはほとんど吸収されないので、全身的な副作用の心配が少ない薬剤です。
  • 食前(1日1回)に服用します。食後に服用した場合、食前に服用するよりも下痢を起こすおそれが増すからです。

その他の便秘薬(下剤)

浸透圧性下剤…酸化マグネシウム(マグミットなど)

大腸刺激性下剤…ピコスルファート(ラキソベロンなど)、センナエキス(ヨーデルなど)

漢方薬

東洋医学では、心と体を一体のもの(心身一如)として捉えることに長けていますので、
過敏性腸症候群のような、消化器の症状とストレスなどの精神症状とが絡んでいる疾患にも、漢方薬は適しています。

過敏性腸症候群に使われる代表的な漢方薬

桂枝加芍薬湯

  • 過敏性腸症候群に対してファーストチョイスとなることが多い代表的な漢方薬
  • 腹痛、下痢、便秘、または下痢と便秘を繰り返すタイプ、しぶり腹、腹部膨満感などに、幅広く使用できます

桂枝加芍薬大黄湯

  • 桂枝加芍薬湯に瀉下作用のある大黄を加えたもの
  • 特に便秘と腹痛が強い症状に用いられます

小建中湯

  • 桂枝加芍薬湯に膠飴を加えたもの
  • より虚弱体質で疲れやすく、下痢と便秘を繰り返す

半夏瀉心湯

  • ストレス性の下痢や腹痛、または下痢や便秘を繰り返すものに用いられます
  • 下痢の方は、食べるとお腹がゴロゴロと鳴って、下してしまう
  • 便秘の方は、下剤を服用すると下痢や腹痛が起こってしまうような方に、使われています

加味逍遥散

  • のぼせやイライラのある方、心の奥に怒りの感情を抱いている方
  • それによって胃腸の働きが悪くなり、便が出にくい、残便感が強いタイプに用いられます
  • 女性の場合は、症状が月経と関係して強弱することがあります

その他の漢方薬

四逆散:緊張・不安が強くて、便秘になる
真武湯:体が冷えていて、下痢、常に元気がない、歩いていてもフラフラとする
人参湯:胃腸の冷えが強くて下痢しやすく太れない、疲れやすい
柴胡桂枝湯:ストレスによる腹痛、胸脇苦満
大建中湯:お腹の冷えによる、腸の蠕動亢進・腹痛・腹部膨満
胃苓湯:胃もたれ・消化不良の下痢、腹痛
甘草瀉心湯:半夏瀉心湯の甘草を増量したもので、より精神症状や下痢、腹鳴の強いもの
六君子湯:胃腸が弱くて体力がない、食欲がない、食事のたびに下痢が心配になる
芍薬甘草湯:お腹が急に引きつったように痛むときに頓服で用いる
等々

過敏性腸症候群の方は、どちらかという虚証のタイプが多いですので、西洋薬では副作用が心配な方も多いかもしれません。
漢方薬には、虚証向きの方剤もたくさんありますので、ぜひ取り入れてみてください。

過敏性腸症候群(IBS)① ~症状と原因について~
消化器系症状に対する養生法

参考文献
・過敏性腸症候群はここまで治る(主婦と生活社)
・機能性消化管疾患診療ガイドライン2014

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