【養心安神薬】~酸棗仁・遠志・柏子仁・合歓皮~

養心安神薬

14-(2) 養心安神薬(ようしんあんじんやく)

酸棗仁(さんそうにん)

漢方薬で使用する酸棗仁(さんそうにん)

クロウメモドキ科サネブトナツメの成熟種子

【性味】甘 酸 平
【帰経】心 肝 胆
【効能】養心補肝 寧心安神 斂汗

心陰を養ったり肝血を補ったりして心神を安んずる、滋養性の安神薬の代表的生薬で、
虚に属する心神不寧を治す要薬とされます。

  • 陰虚内熱があって、虚労、虚煩、不眠のときは、知母茯苓と一緒に配合して用いられます。⇒酸棗仁湯
  • 心脾両虚で、不眠、眠りが浅い、動悸、食欲不振、疲れやすいなどのときは、人参竜眼肉遠志などと併用されます。⇒帰脾湯
  • 心腎の不足によって起こる陰虚陽亢の不眠、動悸、健忘、遺精などには、地黄麦門冬柏子仁などと使われます。⇒天王補心丹

また、斂汗の効能があるので、虚証の、自汗や盗汗(寝汗)などの多汗症に、人参五味子などと一緒に利用することができます。

遠志(おんじ)

遠志(オンジ)

ヒメハギ科イトヒメハギなどの根または(芯を除いた)根皮

【性味】辛 苦 微温
【帰経】心 腎 肺
【効能】寧心安神 袪痰開竅 消散廱腫

寧心安神の作用によって、
心神不寧の不眠、多夢、動悸、(または心腎不交の健忘)などに、茯苓酸棗仁人参などと用いられます。例⇒帰脾湯人参養栄湯、加味温胆湯

また、痰濁を除き開竅する効能があります。
痰が心竅をふさいで起こる(痰阻心竅による)精神の錯乱、意識障害、健忘などに応用されます。(現代における、てんかん、統合失調症、脳梗塞などの一部にみられる症状だと考えられますが、先人はこれらに(広義の)痰が関係していると考えたようです。意識を失うときに口から泡を吹くことなどから連想されるのかもしれません…)

あるいは、杏仁桔梗半夏陳皮などと配合して、(狭義の)痰が多くて咳嗽するもの、痰が粘稠で喀出できず気分がスッキリしないものにも用いることができます。(去痰薬に使われるセネガシロップの「セネガ」(ヒメハギ科)と類似の作用です。)

その他、水液代謝不良を伴う皮膚化膿症、乳房の腫痛に(内服や外用して)用いて消腫効果が得られる、とされています。

関連記事⇒物忘れの改善薬とされる遠志(オンジ)の漢方的な効果とは

柏子仁(はくしにん)

ヒノキ科コノテガシワ(側柏)Platycladus orientalis Francoの成熟種仁(胚乳)

【性味】甘 平
【帰経】心 腎 大腸
【効能】養心安神 潤腸通便

柏子仁の養心安神作用は(緩和ではありますが)、酸棗仁とよく似ており、同じように応用することができますし、併用されることもあります。
心血不足を伴う不眠、多夢、焦躁、動悸などに地黄当帰遠志などと用いられます。⇒柏子養心丸
酸棗仁は止汗にも優れるのに対して、柏子仁の方は油の成分が多いため、陰虚タイプの腸燥便秘のあるときに適しています。

合歓皮(ごうかんひ)

ねむの木の花

マメ科ネムノキの樹皮

【性味】甘 平
【帰経】心 肝
【効能】安神解鬱 活血消腫

薬の力としては緩和なものなので、漢方薬というよりは、健康茶としての利用の方が多いと思われます。
不安やストレスによる情志失調(憂うつ、不眠、心煩、怒りっぽい、忘れっぽいなど)に適しています。
夜になると葉が閉じて木が眠ったように見えることが由来の「ネムノキ」ですが、実際に安眠の効果を期待して用いられているのが興味深いです。
ネムノキの花は合歓花(ごうかんか)といって、こちらも同様に使われることがあります。
その他、
活血の効能をもち、打撲の皮下出血や、骨折による瘀血腫痛などのとき、当帰川芎桃仁のような活血薬と一緒に用いてもよいとされています。

 

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