過敏性腸症候群(IBS)① ~症状と原因について~

症状

腸が敏感に反応してしまう

ストレスと消化器症状の関係

消化管の動き(食べたものを消化・吸収・排泄するはたらき)は、自律神経によって調節されていて、普段は特に意識をしなくても、正常に動いてくれています。
しかし、緊張や不安があるとき、寝不足のとき、時差の大きい海外旅行のとき等に、誰しも少なからず、便秘や下痢、腹痛、いつも違って不意に便意がきたりといった、お腹の不調を経験することがあると思います。
一過性のことであれば良いのですが、過敏性腸症候群の人の場合は、消化管があきらかに敏感になっています。
そのためちょっとした刺激(ストレスや食べ物、生活リズムの変化)ですぐ、便通異常、腹痛が起こってしまうことが繰り返されます。
腸の検査をしても炎症などの特別な(器質的な)異常がみつからず、腸のはたらきだけ(機能的な)異常が認められる疾患です。

典型的な3つの症状

下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す交替型の3つのタイプがあります。

下痢型は例えば、家を出るときは何ともなかったのに、通勤中や通学中に急に腹痛が起こって、トイレに駆け込まなければいけなくなります。
トイレのことが心配で乗り物に乗れなかったり、いつも一番近いトイレの場所が気になっていたりします。男性に多い症状です。
便秘型は逆に女性に多くて、コロコロの便しか出ず残便感がずっと気になって憂鬱になるとかがみられます。
そして交替型では、昨日は下痢だったのに今日は便秘、という下痢と便秘と交互に悩まされます。腹痛があるけど仕事中トイレに行けないのでやむを得ず下痢止めを服用したら、翌日は便が出ずお腹が張って仕事に集中できない、ということなどもあります。

悪循環が起こる

子供では下痢や便秘でなくても、不安があるときには腹痛を訴えることが多く、検査しても異常がないので仮病じゃないかと疑われてしまうことがあります。
試験や会議の大事なときばかりお腹が痛くなってしまい実力が発揮できないとか、ゴロゴロとお腹が鳴ってしまって恥ずかしい思いをするとか、ガスがたまりやすく臭いオナラが出てしまうとか、下痢や便秘以外にも様々な支障が起こってきます。

命にかかわる疾患ではないのですが、
ストレスによってお腹の調子が悪くなり、その症状によって生活に影響が出てしまい、そのことがまたストレスになる、という悪循環に陥るのがこの疾患の大変なところです。

原因

ストレスと腸

最も影響が大きいのは、ストレスなどの心理的要因が考えられます。

性格的には、神経質、几帳面、完璧主義、優等生など、自分に厳しく、まじめに頑張りすぎてしまう人に起こりやすいと言われています。

  • ストレスを発散するのが苦手
  • 人に悩み事を相談するのが苦手
  • プレッシャーが大きいのに断るのが苦手など

状況としては、環境の変化(引っ越し、職場の異動、昇進、進級、長期間の集団生活など)、または寝不足などの生活リズムの変化があるときに注意が必要です。逆に、休みの日、一人でいるとき、眠っているときには症状が軽減することが多いです。

体質的には、もともと胃腸が弱い人で、
暴飲暴食、冷飲食、刺激の強い食品、下剤のような薬剤、寒冷な気候など、外からの物理的な刺激によって引き起こされる場合があります。

最近では、感染性腸炎(細菌やウイルスによる急性腸炎)にかかった後に、続けて過敏性腸症候群になる例も多いことが言われています。

漢方的な原因

では、漢方的に過敏性腸症候群をどのように捉えるかというと、
表現的なものが違うだけで、基本的には上に書いたものと概念としてはそれほど違いはありません。
大きく分けると原因は2つです。やはり、ストレス(肝)かまたは胃腸虚弱(脾)かです。

肝脾不和(かんぴふわ)

五行論の肝と脾の関係

西洋医学的に「ストレスによって自律神経が乱れて、さまざまな消化器症状を招く」
というのを、
漢方的には「肝気鬱結によって疏泄作用が阻害され、肝が脾を調節できなくなる」な感じで表現しますが、
根本的には同じことです。
一言で「肝気横逆」(かんきおうぎゃく)と言うこともできます。
※「肝」は自律神経や情緒をつかさどる臓器という概念です。

そして肝と脾の連携がうまくいっていない状態のことを「肝脾不和」と表した場合、
漢方ではこれを実証か虚証かに分けることができます。
精神的な問題が大きすぎたために、本来は正常だった脾にまで影響が及んだというのが実証。
もともと脾が弱いために、ちょっとした精神的トラブルで脾が病んでしまうのが虚証になります。
肝の気の流れを整えることが治療になりますが、当然、実証か虚証かで処方される漢方薬は違うことがあります。

脾虚(ひきょ)

胃腸が弱っていることを脾虚といいます。
これには、もともと体質的に胃腸虚弱な場合と、
病後、疲労の蓄積、飲食の不摂生などから生じる場合とがあります。
そして脾虚であっても漢方薬を選ぶときにはさらに…

  • 慢性的に胃腸(脾)のはたらき(気)が低下(虚)している単純な脾気虚
  • 脾虚のために水分の吸収が悪く、痰飲や痰湿がからんでくるもの
  • 飲食の不摂生(暴飲暴食・過剰な冷飲食)によって脾胃が影響を受けているもの
  • 胃腸内の冷えが関係しているもの(脾虚裏寒)
  • 長期的な脾虚が腎に影響しているもの(脾腎両虚)
  • 脾虚のせいで精神が不安定になっているもの(脾虚肝乗)

などに細かく分析していくことができます。

過敏性腸症候群(IBS)② ~使用される薬の特徴と注意点~
消化器系症状に対する養生法

参考文献
・過敏性腸症候群はここまで治る(主婦と生活社)
・機能性消化管疾患診療ガイドライン2014

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