【四逆散(しぎゃくさん)の解説】~精神的ストレスによる不調の基本処方~

漢方薬の解説

四逆散(しぎゃくさん):SGS

四逆散の「四逆」とは、、、

体内には熱やほてり(または炎症)があるのに、四肢は逆に冷えている状態を指します。

四肢の末端の冷え、つまり手足の冷えを表します。

体を温めるための「陽の気」が体の中心にはあるけれど、

気の流れが悪いために、その「陽気」(熱エネルギー)が四肢に十分行きわたらず、手足が冷えてしまう状態に用いられるのが、四逆散です。

体の芯から冷えているわけではないので、この場合必要なのは、体を温めるための生薬よりも、鬱滞している「気」を動かす生薬の方が重要です。

四逆散ではそれが柴胡枳実です。

柴胡と枳実が協力して気の鬱滞を解きます。柴胡が昇性(気を発散させる)で、枳実が降性(気を下降させる)です。

手足の冷え以外にも、気を巡らせる作用を利用して、(他の方剤と組み合わせながら)ストレスからくる様々な症状に対して応用されています。

柴胡を含むので、柴胡剤の仲間に入れられることがあります。

このとき四逆散は、「気」の巡りは悪いけど「気」自体は虚していない状況ですので、「小柴胡湯」よりは実証向き、ですが「大柴胡湯」よりは虚証向きの方剤と考えられます。

名前のよく似た方剤に「四逆」がありますが、「四逆」とはまったく異なる方剤ですので、気をつけてください。

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四逆散の出典

傷寒論(3世紀)

少陰病、四逆、其の人或いは咳し、或いは悸し、或いは小便利せず、或いは腹中痛み、或いは泄利して下重する者は、四逆散之を主る。

(咳する者には五味子・乾姜を加え、并せて下痢を主る。悸する者には桂枝を加う。小便不利の者には茯苓を加う。腹中痛む者には附子を加う。泄利下重する者にはまず水五升を以て薤白三茎煮て三升取り滓を去り・・・)

少陰病篇 第318条

→少陰病になって、手足の冷えがあります。咳したり、動悸がしたり、小便が少なくなったり、お腹が痛かったり、下痢する者は、四逆散で治療します。
(肝気鬱結により様々な症状がみられるので、それらの症状に合わせて他の生薬も加えればさらに有効です)

四逆散の成分(構成する生薬)

  • 柴胡(サイコ)
  • 枳実(キジツ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 甘草(カンゾウ)

芍薬甘草湯に、柴胡と枳実が加わった方剤とみることができます。

柴胡を主薬として、ストレスや異常な緊張を緩和させる生薬で構成されています。

四逆散の効能・適応症状

  • 緊張したときに手足が冷たい、手のひらに異常な汗をかく
  • 腹痛、胃痛、胃酸過多、神経性胃炎、ストレス性潰瘍、腹部膨満感、食欲不振、逆流性食道炎
  • 過敏性腸症候群、胆のう炎、胆石症(胆石炎)、肋膜炎、腸炎、尿路結石、膀胱炎、インポテンス
  • 気管支炎、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎
  • 月経不順、おりもの過多、更年期障害、不妊症
  • 精神神経症状(心悸亢進、動悸、不眠、不安、イライラ、抑うつ、ため息、肩こり、ヒステリー、情緒不安定、神経質、癇症、神経過敏症、呑気症)
  • 肋間神経痛、腰痛、歯痛、顎関節症
注意

上記の症状に応用されることがあるという意味であり、すべての症状が四逆散で治せる、ということではありません。 保険適応外の症状を含みます。

四逆散の使用のポイント

傷寒論の方剤ですが、急性熱性疾患(感染症)に使われることは少なく、

精神的ストレスがあって、手足に冷えがみられる人に使われていることが多い漢方薬です。

「柴胡・枳実」+「芍薬・甘草」の組み合わせと見れば

「精神的な緊張」+「筋の緊張(痙攣・収縮)」がみられる症状に適していると考えられます。

ストレスによる肩こり、ストレスで悪化する咳、精神不安による胃痛や便通異常(過敏性腸症候群)、緊張による頻尿、等々。

ストレスを解消させるために暴飲暴食をしてしまって膨満感や胸焼けを起こしている場合では、胃腸薬を用いるだけではなくて、四逆散のようなストレスを緩和させる漢方薬が有効なこともあります。(市販の胃腸薬にも四逆散を配合しているものがあります)

冷えについて現代医学的には、交感神経の緊張によって、末梢血管が収縮するため手足への血流量が低下し、また手のひらや足のうらが汗で湿りその気化熱で体温を奪われて手足が冷える、と説明できます。

冷えは一般的にひどくはなく、指先が冷える、または、温かくない程度の軽いものを含めます。また、手が冷たいことを自覚していなくて、他の人に手を触れられたときに冷たいねと言われて気付くこともあります。

四逆散の副作用・注意点

  • 医療用エキス製剤にはありませんが、「四逆湯」(しぎゃくとう)という方剤は、体の芯から冷えている人に用いられます。名前が似ていますが、構成生薬も使用する病態も異なりますので、混同しないように注意が必要です。
    (四逆散→熱があるのに寒証がみられる真熱仮寒証、四逆湯→熱証がみられるとしても真寒仮熱証である)
    四逆散の甘草以外の生薬は、やや冷やす性質を持ちます。

  • 胃腸虚弱の方は、枳実で下痢をすることがあります。

  • 他の漢方薬と併用される場合、または長期間服用する場合は、甘草の副作用に注意してください。

  • 四逆散の構成はシンプルです。例えば柴胡・芍薬・甘草のコンビは、逍遥散加味逍遥散、柴芍六君子湯などでもみられます。症状が月経に関連して起こるとか、食欲不振を伴うとか、症状によってはそれに見合った生薬の配合されている他の方剤が良いかもしれません。

  • 枳実が含まれるので、妊娠中の使用はできるだけ控えてください。

用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

四逆散の加減方

四逆散の枳実を枳殻に代え、香附子・川芎を加えたものは「柴胡疏肝散」(さいこそかんさん)です。理気と活血の効果が加わります。

OTCにあるエキス剤の「柴胡疏肝湯」(さいこそかんとう)は、四逆散に香附子・川芎・青皮(セイヒ)が加わったものです。

四逆散に、土別甲・茯苓・大棗・生姜が加えられると、「解労散」(かいろうさん)となります。

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