【竹筎温胆湯】の解説~痰がからんで眠れないときの漢方薬~

竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)の解説

竹筎温胆湯ちくじょうんたんとう

発熱性の感染症、カゼや気管支炎、肺炎などに用いたり、

または、それらの熱が下がったあとも、咳や痰が続き、安眠できないものに用いられる漢方薬です。

特に高齢者や体力の低下している人に使われることが多いです。

構成生薬

※の5つで「二陳湯にちんとう」です。痰飲たんいんをとる基本処方が入っています

また、半夏・麦門冬・甘草・人参は、麦門冬湯ばくもんどうとう」と共通。

さらに桔梗も入りますから、ここまでで鎮咳・去痰作用が期待できるのは一目瞭然です。

柴胡・半夏・甘草・生姜・人参のあたり、「小柴胡湯しょうさいことう」にも似た構成が入っていることから、長引いているカゼの咳に使えそうなのも納得できるかと思います。(黄芩は入りませんが黄連が入っています。)

枳実・香附子・柴胡をみれば、肝(胆)の気を巡らせる生薬も入っています。

効能・適応症状

風邪のあと咳や痰がいつまでも続いて、

いらいら、のぼせ、で気分がスッキリせず安眠できないといった不眠、

または、(湿熱、痰熱の存在が見られれば)感染症以外でも

不安感から、不快で怖い夢をよくみる、というような精神的症状の不眠についても竹筎温胆湯は使われます。

自律神経失調症、神経症、動悸、精神不安など。

添付文書上の効能・効果

インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、また平熱になっても、気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠が出来ないもの

温胆湯と竹筎温胆湯の違い

竹筎温胆湯に似た方剤に、温胆湯(うんたんとう)があります。

違いを整理しておきましょう。

温胆湯について

胆を温めるとは

温胆湯だからといって、胆のうを温める作用の薬ではありません。

東洋医学では、「胆は決断をつかさどる」とか「胆は勇気をつかさどる」と考えています。

胆が充実していると、物事に簡単に驚いたり恐れたりはしない。

逆に、胆が弱っていると決断力が乏しくなる、ビクビクしていて驚きやすい、ストレスに弱い、などとなります。

大胆だいたん胆試きもだめしという慣用句に「胆」が使われたり、
「キモ」は「肝」を使うこともありますが、度胸があることをきも(肝)がわると言ったりします。

また、「きもを冷やす」という言葉があります。本当に冷えたわけではありません。驚きやすい、恐怖で眠れない、といった症状が胆を冷やしている状態です。

これを治療する漢方薬だから、温めるわけではないけど、「温胆」の名がつけられたと考えられます。

温胆湯の配合

温胆湯は、二陳湯(にちんとう)に竹筎、枳実、大棗などを加えたものです。

温胆湯 = 二陳湯 + 竹筎・枳実・大棗

(※温胆湯はメーカーや書籍によって少し配合が異なります。黄連や酸棗仁が入ることもあります)

二陳湯の適応症状としての、胃の機能低下で、水分(津液)の停滞がまずあります。

またストレスによる気の滞りが原因でも津液の流れが止まります。

停滞した津液が濃縮すると痰飲(痰濁)が形成されます。

そして時間の経過とともに、痰熱が生じます。これがこころ(心神)を乱しているような状態になります。

枳実は、停滞している気や痰飲を降ろします。

竹筎は、鎮静作用があり、興奮性を鎮めます。(一説には、というか噂では、パンダは竹を食べているので、興奮したり怒ったりしないという話)

竹筎温胆湯の特徴

竹筎温胆湯=温胆湯+(柴胡・黄連・香附子・桔梗・麦門冬・人参)

となりますので、

竹筎温胆湯の中に、温胆湯の要素は含まれています。

温胆湯と同じような不眠に、温胆湯の代わりとして使うこともあり得ます。

竹筎温胆湯においては…

柴胡・黄連 → 消炎、鎮痛、解熱

柴胡・香附子 → 自律神経の調整

桔梗 → 去痰

麦門冬・人参 → 身体を潤す(滋潤)

これらの作用が、「温胆湯」に加わっています。

よって、発熱性の疾患、もしくは脳の興奮、自律神経系の緊張がしばらく続いてしまった場合、

それに身体の抵抗力の低下や、軽度の栄養・水分の不足を招いている状態に対応します。

竹筎温胆湯という処方名について、

竹筎は、配合される生薬の中で、興奮性を鎮める、熱を冷まして痰を除く作用をもつ代表的生薬として、この方剤の冠に値しますが、

竹筎を配合に加えることと、胆を温めることとは、作用的には関連しません。

また、わざわざ書かなくてもお分かりだと思いますが、

温胆湯に、竹筎その他を配合して、竹筎温胆湯となったのではありません。

温胆湯にすでに竹筎は含まれています。

出典

『万病回春』(16世紀)

「傷寒、日数過多してその熱が退かず、夢寝寧からず。心驚、恍惚、煩躁して痰多く、眠らざる者を治す」

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