【清化熱痰薬】~竹筎・桔梗・貝母・瓜蔞(栝楼)~

清化熱痰薬

13-(2) 清化熱痰薬(せいかねったんやく)

竹筎(ちくじょ)

竹筎(チクジョ)

イネ科のハチク(またはマダケ)の(茎⇒)稈(かん)の内層(を薄く帯状に削ったもの)

【性味】甘 微寒
【帰経】肺 胃 胆
【効能】清熱化痰 除煩 止嘔

①清熱化痰+除煩
肺熱の咳嗽での熱痰(粘稠で黄色い痰)に、黄芩栝楼桑白皮などと用いられます。例⇒清肺湯
また、熱を清して煩躁を除く効果もあるので、よく胆虚で熱と痰が鬱結し、心煩、不眠、不安、驚きやすい、などの症状に半夏枳実などと用いられます。⇒温胆湯、竹筎温胆湯

②清熱止嘔

胃熱の嘔吐(または吃逆)には黄連半夏などと、または胃虚で熱を帯びるときの嘔吐(または吃逆)には人参大棗などと配合して使われることもあります。⇒橘皮竹筎湯

【関連生薬】

  • 竹瀝(ちくれき):イネ科ハチクなどの竹竿を火で炙って流れてくる黄色の液汁。/清熱豁痰/定驚利竅/
  • 天竺黄(てんじくおう):イネ科ホウライチクなどに寄生する竹黄蜂により竹竿に穴があき、その傷から病的に流出した竹幹内の分泌液が乾燥し塊状になったもの。または人工的に竹稈を加熱して節間内に竹瀝を出させて凝固させたもの。/清熱化痰/清心定驚/
  • 竹葉(ちくよう):イネ科ハチクの葉。/清熱除煩/

※「竹筎」は、「竹茹」と書かれていることもあります。
よく見ないと気づきませんが、「筎」(たけかんむり)か「茹」(くさかんむり)か。
本来はどちらなのか、どちらでも構わないのか、よく分かりません。
竹筎(チクジョ)は、イネ科のハチク(またはマダケ)を使用している生薬なので、
竹であるという意味では「筎」が正しいような気がしますけど、薬草だという意味では「茹」なのかもしれません。

桔梗(ききょう)

漢方薬で使用する桔梗(キキョウ)の刻み

キキョウ科キキョウの根

【性味】苦 辛 平
【帰経】肺
【効能】開宣肺気 袪痰 利咽 排膿

①開宣肺気+袪痰(宣肺袪痰)
性味の理屈では、辛は発散して開く、苦は泄する性質をあらわし、肺気を通じさせて宣発のはたらきを回復させるのと同時に、去痰の作用にも優れています。
寒熱を問わず、痰の多い咳嗽に用いることができます。
(例⇒参蘇飲清肺湯、杏蘇散など)
一般的には、風寒の咳嗽(うすい痰、鼻水などを伴う)には、蘇葉杏仁陳皮などの温性の生薬と併用し
風熱の咳嗽(粘っこい痰を伴う)には、桑葉菊花などの辛涼解表薬と併用されます。

②利咽

その他にノド(咽喉)の症状に対してもよく使用されます。
嗄声(声がれ)に薄荷牛蒡子と併用したり、
のどの痛みが強いときは甘草と一緒に用いたり、
炎症が強くてのどが腫れて赤いときには石膏と組み合わせて使用されます。
(⇒響声破笛丸、桔梗湯桔梗石膏、駆風解毒湯など)

③排膿

また、排膿作用を利用して各種の方剤に配合されています。
桔梗湯排膿散及湯十味敗毒湯清上防風湯荊芥連翹湯など。

その他、桔梗は「舟楫しゅうしゅう(ふねで物を運搬すること)の剤」といわれ、一緒に配合する各生薬の効果を、身体の上部に導く引経薬としての役割があります。(例…滋腎明目湯、洗肝明目湯)

貝母(ばいも)

ユリ科アミガサユリの鱗茎
※多種基原の生薬で、中国ではアミガサユリ由来のものを特に浙貝母(せつばいも)と称し、その他別のアミガサユリ属植物に由来するものに川貝母(せんばいも)、平貝母(へいばいも)等があり使い分けられている。

【性味】苦 寒
【帰経】心 肺
【効能】化痰止咳 清熱散結

①化痰止咳
肺熱を清し、痰を除き、咳嗽を納める効能があります。
咳嗽、咽痛、熱痰(黄色で粘稠な痰)に清熱の効果がある知母と併用して用いることができます。
慢性化した呼吸器疾患で体力が低下したものの痰に対して、よく麦門冬当帰などとともに配合されます。⇒清肺湯滋陰至宝湯
②清熱散結
また、苦参と併用すれば膀胱の鬱熱を散じることができるので、小便のしぶって出にくいもの(妊娠中の排尿困難など)に応用されることがあります。⇒当帰貝母苦参丸

なお、浙貝母の性味は苦・寒で、火熱を清する効能に優れるのに対して、
川貝母の性味は、苦・,微寒で滋潤性があり、潤肺(肺を潤す効果)を兼ねることができます。

瓜蔞/瓜呂/栝楼(かろ)

括楼仁(カロニン)

ウリ科キカラスウリ、オオカラスウリなどの成熟果実(または種子)
※次のように細かく分けることもあります。
果実全体⇒全栝楼/栝楼実、果実の皮殻⇒栝楼皮、種子⇒栝楼仁/栝楼子、種子を圧搾して油分を除いたもの⇒栝楼霜
日本では主に栝楼仁(かろにん)が使われています。

【性味】甘 寒
【帰経】肺 胃 大腸
【効能】清熱(潤肺)化痰 利気寛胸 滑腸通便

①清熱化痰
肺熱の咳嗽、粘稠で切りにくい痰、胸苦しいなどの症状に、貝母杏仁枳実などと用いられます。
②利気寛胸
痰濁を下降させるはたらきによって、小結胸証に黄連半夏ととも用いられます。⇒小陥胸湯、柴陥湯
(小結胸証…『傷寒論』で、熱邪と痰飲が胸部で結びついて形成されるもので、大結胸証に対して、症状の比較的軽いもの。深く呼吸をしたり咳をしたときに、胸部や心窩部に痛みや苦満感を伴う。)
また、痰濁阻滞による胸痺(狭心症のような症状)の胸痛に、半夏薤白などと用いられます。⇒栝楼薤白半夏湯
③滑腸通便
腸燥便秘には麻子仁郁李仁と、食滞の便秘には山楂子神麹などと用いられます。

なお、栝楼皮の方が特に清熱化痰や利気寛胸に優れ、栝楼仁は潤肺化痰や滑腸通便に適しており、栝楼実であれば両方の効果を兼ねます。

【関連生薬】
栝楼根(かろこん)

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