【活血行気薬】~川芎・延胡索・鬱金(姜黄)・乳香・没薬・三稜・莪朮~

活血行気薬

12-(1)  活血行気薬(かっけつこうきやく)

こちらは活血化瘀薬の中でも、特に気滞血瘀証(気滞⇒瘀血)に用いられる生薬です。

活血化瘀薬(かっけつかおやく)とは?

活血涼血薬はこちら(血熱⇒瘀血の場合)
活血温経薬はこちら(血寒⇒瘀血の場合)

川芎(せんきゅう)

センキュウの葉

セリ科センキュウCnidium officinaleの根茎(日本産)

【性味】辛 温
【帰経】肝 胆 心包
【効能】活血行気 袪風止痛

血行を促進すると同時に気も巡らせるという優れた生薬。「血中の気薬」と言われています。
特に当帰との相性が良く、併用すれば活血や止痛の効果が高まるため、当帰とともに婦人科疾患の常用薬です。(当帰芍薬散温経湯など)
また、止痛に関しては、頭痛の要薬でもあります。

①活血行気
各種の血瘀気滞証に用いられます。

  • 気血瘀滞による月経不順、月経痛などに、当帰芍薬地黄と一緒に用いられます。⇒四物湯
  • 瘀血で下腹部(骨盤内)に痛みの強いものには、延胡索牛膝なども加えられます。⇒折衝飲
  • 肝鬱気滞で血行が悪くなり胸脇痛のときは、柴胡香附子などと使用されます。⇒柴胡疏肝散
  • 肝気の亢ぶるものには、肝血を疎通させるはたらきが利用されます。⇒抑肝散
  • 打撲による内出血の腫れや痛みに、川骨や樸樕と配合されます。⇒治打撲一方
  • この他、瘀血による狭心症の症状や、虚血性の脳血管疾患(脳卒中の後遺症)などにも使われています。⇒冠心Ⅱ号方、補陽還五湯など

②袪風止痛
各種の頭痛に用いられます。

延胡索(えんごさく)

延胡索(エンゴサク)

ケシ科Corydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y. H. Chou et C. C. Hsuの塊茎
※玄胡、玄胡索と呼ばれることもあります

【性味】辛 苦 温
【帰経】心 肝 脾
【効能】活血 行気 止痛

鎮痛作用に優れていて、身体の諸疼痛に広く用いることができる生薬。
気滞血瘀の痛み、月経困難症など(⇒牛膝散、折衝飲)に、または胃痛、腹痛など(⇒安中散)に利用されています。

鬱金(うこん)[日本]/姜黄(きょうおう)[中国]

ウコンの根茎

  • 日本薬局方ではショウガ科Curcuma longaの根茎
  • 一般的には秋ウコンとよばれるもの
  • いわゆる「ウコン色」(赤みがかった黄色)をしている
  • カレーに使う香辛料のターメリック、たくあん等の着色料としても使われる
  • 中国での生薬名は姜黄(きょうおう)
  • だが、日本で姜黄というと春ウコン(断面が黄色い)をさすので混乱に注意(断面の色調も違うし成分の組成も異なる)
  • ちなみに春、秋は開花時期を表しています
【性味】辛 苦 温
【帰経】肝 脾
【効能】破血行気 通経止痛

日本の漢方薬では、華岡青洲による中黄膏(ちゅうおうこう)に配合されます。黄柏と鬱金という黄色い生薬を二つ配合した黄色い軟膏で、うち身や捻挫などに使われます。
中薬としての効能では、辛温の性で風寒を散じ、温めながら経脈を通じさせ、気血を運行させるものです。寒凝気滞血瘀の証に適しています。

[関連生薬]⇒莪朮(がじゅつ)※紫ウコン

欝金/郁金/玉金(うこん)[中国]

一方、中国(中薬)で欝金とされるものは、使用部が塊根、性味が寒、など日本で習慣的にウコンと呼んでいるものとは異なっています。
(郁は欝の略字、玉は欝と同音、ということで特に手書きの際は簡単な文字で代用されます。)

【性味】辛 苦 寒
【帰経】心 肝 胆
【効能】活血止痛 行気解鬱 涼血清心 利胆退黄

乳香(にゅうこう)・没薬(もつやく)

どちらもカンラン科の樹木(乳香樹と没薬樹)の樹幹から滲出して凝固した樹脂
※香料としては、乳香はフランキンセンス 、没薬はミルラといわれる
※日本漢方ではほとんど見かけません

【性味】乳香:辛 苦 温 没薬:苦 平
【帰経】心 肝 脾
【効能】活血止痛 消腫生肌

中薬としては活血止痛の効能があるので、瘀血による月経痛や閉経などに当帰川芎と配合したり、胃痛には延胡索と配合したりして用いられます。
また粉末を外用すれば、化膿症や外傷に、腫れや痛みを抑えたりキズの治りを早めたりする効果があるとされています。
古くは、乳香の方が活血伸筋(筋脈を伸ばす作用)に優れるとして風湿痺証の屈伸不利などの痛みに多用され、没薬の方が活血散瘀に優れて瘀血のより重症のものに適する、という違いがあって使い分けたり、また効果を高めるため併用もされていたようです。
※煎じたものは薬液が濁るし味も苦く臭いも独特。そのため胃気が弱い人は悪心や嘔吐を起こしやすいので注意。

三稜(さんりょう)

ミクリ科ミクリの(外皮を去った)塊根
またはカヤツリグサ科ウキヤガラの塊茎に由来するものも混在する
(どちらも断面が三角形)

【性味】苦 平
【帰経】肝 脾
【効能】破血袪瘀 行気止痛

効能はほぼ莪朮(がじゅつ)と同じで一緒に使用されることもありますが、破血の作用が莪朮よりも強い。
酢炒すれば止痛の効果を高まるとされています。
気滞血瘀の腹痛、月経痛、腹腔内の腫瘤などに応用されます。
また食積気滞(飲食の積滞)の腹満、脹痛に用いられます。

莪朮(がじゅつ)

ショウガ科ガジュツの根茎
※紫ウコン、夏ウコンともいわれる

【性味】辛 苦 温
【帰経】肝 脾
【効能】破血袪瘀 行気止痛

効能はほぼ三稜(さんりょう)と同じで一緒に使用されることもありますが、行気(理気)の作用が三稜よりも強い。
それで現在は漢方薬よりも胃腸薬に配合されているのを見かけることの方が多いです。
※芳香性健胃薬としても利用されますが、もし脾虚(胃腸虚弱)であれば人参白朮など補気健脾の薬の配合が必要です。

 

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