【活血涼血薬】~丹参・牛膝・益母草・虎杖・䗪虫・水蛭・虻虫・王不留行・穿山甲~

活血涼血薬

12-(2)  活血涼血薬(かっけつりょうけつやく)

活血化瘀薬のうち、性が寒涼に偏っていたり、清熱や消腫のはたらきをもつ生薬。
血行を良くしつつ血熱を冷やすので、特に血熱の血瘀証に用いられます。

丹参(たんじん)

シソ科タンジンの根

【性味】苦 微寒
【帰経】心 心包 肝
【効能】活血袪瘀 涼血消癰 養血安神

①活血袪瘀
婦人科の疾患(月経痛、月経不順、無月経、産後の腹痛)、狭心痛、気滞血瘀の脇痛、打撲傷など各種の瘀血証に用いられますが、性が寒涼に偏っているので、特に血熱の瘀滞に適しています。
活血調経にはたらくという点では川芎と共通ですが、川芎は温性、丹参は微寒性です。
血寒(冷え)による瘀血の場合は、温裏薬などを適宜配合して使用しなければいけません。

②涼血消癰
血を冷やしながら血瘀を消散させるので、金銀花連翹など清熱解毒の効能をもつ生薬を一緒に用いて、乳癰(乳腺炎)など皮膚の化膿症に応用することができます。

③養血安神
=清心除煩
微寒性で、心によく帰経するということで、心神を養う(精神を安定させる)とされ、熱入営分の不眠、焦躁、心悸、不安などにも有効です。

牛膝(ごしつ)

漢方薬で使用する牛膝(ゴシツ)の刻み

ヒユ科ヒナタイノコズチの根

※茎の節の部分がこぶのように膨れることがあり、それが牛の膝に似ていることが名前の由来とされます。
※ですが使用部は根であり茎ではないし、動物の牛の膝のように見えている前足のコブの部分は実際には手根関節(手首)ですし、後ろ足の膝と思われている部分(足根関節)は踵(カカト)です。

【性味】苦 酸 平
【帰経】心 肝 膀胱
【効能】活血袪瘀 補肝腎 強筋骨 利尿通淋 引血下行

①活血袪瘀
活血の力は比較的強くて、婦人科の瘀血証(月経痛、月経不順、無月経など)によく桃仁紅花当帰などと用いられます。⇒牛膝散、折衝飲
また打撲など外傷の腫れや痛み(腰、膝、足の傷痛)に当帰や川芎など配合して使うこともできます。

②補肝腎+強筋骨
腰や膝のだるい痛み、下肢に力が入らないなどの症状によく応用されます。
肝腎不足(高齢)による膝腰の虚弱(フレイル)に熟地黄などと配合して⇒牛車腎気丸
風湿痺の下肢の関節痛、関節の腫れ、運動機能障害には独活防風などを配合して⇒大防風湯、独活寄生湯
風湿に瘀血を兼ねる足腰の疼痛に、四物湯に桃仁などと加えて⇒疎経活血湯
湿熱の下注による下肢の関節痛、しびれ、マヒ、熱感、腫脹に、蒼朮黄柏などと配合して⇒四妙丸、加味四物湯

③利尿通淋
湿熱による排尿痛、排尿困難、血尿などの症状に用いることができます。

④引血下行
味の苦は下降性を表し、上部の血熱を下部に導くことができるとされます。
そのため上部の血熱妄行による衄血(鼻血)や吐血、陰虚火旺による歯痛や口内炎、および肝陽上亢の頭痛やめまいなどの症状に応用されることがあります。
また「諸薬を引き、下行す」といわれ、薬物の効果を下方へ導く引経薬としての役割をもつと考えらています。
つまり、①~③の効能においても、牛膝を配合することによって他の生薬のはたらきを下半身に導いて、効果が発揮されやすくしているということです。
例えば、八味地黄丸に牛膝と車前子を配合した牛車腎気丸においての牛膝は、八味地黄丸を膝腰の痛みに対する効果に導くだけでなく、車前子の利尿作用を明らかにするための役割もあります。

【注意】
脾虚(胃腸虚弱)の下痢、月経過多、妊娠中などは使用を控えるか慎重に用いてください。

益母草(やくもそう)

シソ科メハジキなどの花期の全草(地上部)

【性味】辛 苦 微寒
【帰経】心 肝 膀胱
【効能】活血化瘀 利水消腫

産後の漢方薬として知られる芎帰調血飲第一加減などに配合されます。
活血化瘀の効能で経脈を通じ(活血調経に優れ)、婦人科の瘀血証によく適応するので「益母」の名前がついています。
婦人科の症状の他は、打撲傷の内出血による疼痛にも用いることができます。
また(大量に用いれば)利水消腫の効能があり(腎炎などの)浮腫や尿量減少に応用されます。

虎杖(こじょう)

タデ科イタドリの根と根茎

【性味】苦 寒
【帰経】肝 胆 肺
【効能】活血定痛 清熱利湿 解毒 化痰止咳

活血定痛に優れていて、打撲傷、外傷等、瘀血の様々な痛みに用いられます。
風湿痺の関節痛にも適するので、袪風湿薬に分類されることもあります。
その他、苦寒の性味により、湿熱の黄疸、淋濁(尿の濁り)、帯下(おりもの)、熱傷(やけど)、肺熱の咳、熱結の便秘などに使われます。

䗪虫(しゃちゅう)

ゴキブリ科シナゴキブリなどの雌の成虫体(主に薬用に飼育されたもの)

【性味】鹹 寒
【帰経】肝
【効能】破血逐瘀 続筋接骨

動物性の駆瘀血薬は、血行をよくする作用が強いとされますが、水蛭虻虫に比べると穏やかです。
血瘀による無月経、腹腔内腫瘤(子宮筋腫など)の腹痛に、大黄や水蛭などと用いられます。⇒大黄䗪虫丸
また、打撲や骨折、捻挫、ぎっくり腰などの痛みに使われます。

水蛭(すいてつ)

ヒルド科ウマビルなどの全虫体

【性味】鹹 苦 平
【帰経】肝
【効能】破血逐瘀

破血逐瘀の作用は強力で、作用の持続性もあるとされています。
抵当湯や大黄䗪虫丸などの方剤に配合される他、
生きたヒル(活水蛭)を患部に外用して吸血させる瀉血療法にも用いられます。

虻虫(ぼうちゅう)

アブ科アブ属の昆虫の雌の全虫体

【性味】苦 微寒
【帰経】肝
【効能】破血逐瘀

破血逐瘀の薬力は猛烈で迅速性があると言われます。服用後に激しい下痢を起こすことがあるので注意が必要です。
よほど瘀血の重症のものでなければ使われません。

王不留行(おうふるぎょう)

(現在は主に)ナデシコ科ドウカンソウの種子※異物同名品あり

【性味】苦 平
【帰経】肝 胃
【効能】活血通経 下乳 利水通淋

血瘀による月経痛、無月経などの他、乳汁分泌不全、乳腺炎の初期の腫痛に使用されます。
また利尿作用を利用して排尿痛、排尿困難、尿管結石に用いられます。
(帰経が肝や胃なのは、乳頭の方を通っている経絡の関係だと思われます)

穿山甲(せんざんこう)

センザンコウ科ミミセンザンコウの鱗甲(うろこ)

【性味】鹹 微寒
【帰経】肝 胃
【効能】活血通経 下乳 消腫排膿

王不留行とともに通経下乳の要薬、
また化膿性の疾患(膿を含んだ腫れもの)にも良い薬、
などとされ、かつては珍重されていましたが、
そのため密猟、密輸、密売も後を絶たず、絶滅が危惧されていて、
現在は国際取引は禁止されていますし、漢方薬の原料としての使用も許可されていません。

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