袪風湿薬(きょふうしつやく)の概念

袪風湿薬(きょふうしつやく)

4.袪風湿薬とは

袪風湿薬は、風湿の邪気を排除する効能をもつ生薬です。

風湿の邪気の除去によって、痺証という症状を改善するために用いられます。

痺証(ひしょう)について

古典(『黄帝内経』)によれば、
風・寒・湿の3つの邪気によって、あるいはそれらが入り混じった邪気によって、痺証という状態が形成されます。

邪気が、肌表(皮膚)から入り、筋肉、筋骨の間、経絡などに侵入する。

正常な気血の運行が阻害される

関節が痛い、関節が動かせない、しびれる、腰や膝が重だるい、などの症状が出る。

これが痺証です。

長期間慢性的になると関節の変形が起こることがあります。典型的なものが、関節リウマチや、変形性膝関節症などです。

痺証の症状と特徴

痺証は風・寒・湿の3つの邪気が影響するわけですが、どの邪が勝っているかによって、現れてくる症状も少しずつ異なってきます。
以下のように区別されます。

  • 風邪が主なもの→行痺
    痛みの場所が移動しやすく、多発的な痛みやシビレ、発症の初期にみられ、表証を伴うことがある。
  • 寒邪が主なもの→痛痺
    固定性で激しい痛み、運動障害、痛みは温めるとラクになり、冷えると強くなる。
  • 湿邪が主なもの→着痺
    身体や四肢の重だるい痛み、動かしにくい、皮膚のしびれ感。
  • 熱邪が主なもの→熱痺
    関節に腫れ、発赤、熱感が起こる。風熱が直接侵入することもあれば、風湿などが除去されずずっと停滞することで、熱に転化することがあります。

風邪(ふうじゃ)は百病の長であり、寒や湿など他の病邪と結び付くことが多く、一般には痺証は風寒湿として発症します。

実際には、風寒痺証、風湿痺証、風寒湿痺証、風熱痺証という様々な複合的な状態でみられることがあります。

また、筋骨に侵入した風湿の邪は、「腎は骨を主り、肝は筋を主る」ことから、五臓においては肝や腎を損傷しやすいと考えられ、それによって慢性的な症状が続くと、肝腎不足の症状として、腰や下半身が軟弱になってきたり、関節が変形したり、歩行が困難になったりします。

袪風湿薬の分類と使い方

そういうわけで、痺証の症状にも特徴があるように、袪風湿薬の方もその特徴に合わせた使い分けがあります。

袪風湿薬は基本的には風湿の邪を除去します。
それをさらに次のように区別することができます。

袪風湿散寒薬・・・風寒湿痺証に用いる
袪風湿清熱薬・・・風湿熱痺証に用いる
袪風湿強筋骨薬・・・慢性的な痺証(久痺)に用いる

一緒に配合する生薬

邪気の性質によっては、袪風湿薬だではなく、ケースバイケースで他の種類の薬が重要になってくることがあります。
理論的にというか臨床経験上、その方が効果的ということだと思います。

風邪がメインのとき、当帰などの活血養血薬(例えば疎経活血湯
湿邪がメインのとき、茯苓薏苡仁などの健脾薬や利湿薬(例えば薏苡仁湯
寒邪がメインのとき、桂枝細辛などの温陽通経薬(例えば独活寄生湯)
また熱邪も加われば、石膏知母などの清熱薬(例えば桂芍知母湯
という具合。

また症状の段階によっても異なります。
初期の頃は、表証を伴うので、麻黄羌活防風などの解表薬を(例えば麻杏薏甘湯
慢性になると、補肝腎薬や、補気養血の薬の併用(例えば大防風湯など)が必要になることがあります。

注意点

袪風湿薬は辛温の性質のものが多く、風湿を発散させるということは、逆に乾燥させることでもあるので、陰血を消耗しやすくなります。
もともと陰虚や血虚のある場合は特に、配合薬の内容に慎重にならなければいけません。

 

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