四君子湯(しくんしとう)の解説
脾胃(胃腸)というのは、食べたものを消化吸収して自分のエネルギーに変える、という生命活動における大事なはたらきを支えています。
体力が落ちて元気がないとき、またはたとえ元気なときであっても、胃腸は正常にはたらいている状態の方が当然いいわけで、
四君子湯はその脾胃を整える漢方薬の基本方剤です。
胃腸のはたらきが良くなれば、生命活動に必要なエネルギー(気)を増やすことができます。
四君子湯を単独で服用することはあまりないかもしれませんが、 数ある漢方薬の生薬構成のなかには、四君子湯の要素が含まれるものが多くあります。
生薬の構成について
もともとの原典の『和剤局方』では人参・茯苓・白朮・甘草の4種類。
今の四君子湯は、それに大棗と生姜がオマケで入ります。このペアによって効果が高まるし、服用しやすい味付けとなっています。⇒大棗と生姜をペアで配合することが多い理由は大棗の生薬解説を参照ください
なお、 人参・茯苓・白朮・甘草の、「茯苓」を「乾姜」に変えると、人参湯になります。
四君子湯の名前の由来
人参・茯苓・白朮・甘草で構成される四君子湯は、
『神農本草経』で上品にランクされる四つの生薬(君子)からなる処方。
君子は、聖人君子(せいじんくんし)の君子。素晴らしい理想的な人物を指す言葉です。
君子のように優れた薬の4種類で構成されている処方という意味合いです。
君子のごとく、穏やかな作用で、服用しても体に弊害がでないように作られた処方とも言えます。
適応症状
4つの生薬それぞれが、消化吸収機能を高めて気を補うように作用します。
消化吸収機能が低下したことによる下記のような症状を改善します。
- 食欲不振、疲れやすい、声に力がない、顔色が白い、四肢の無力感
- 食べるとお腹が脹る、胃がもたれる、慢性胃炎
- 消化がわるい、胃の不快感
- 軟便・下痢または便秘(排便の最初が硬い便であとが水様便)
添付文書上の効能効果
【医療用エキス製剤】
やせて顔色が悪くて、食欲がなく、つかれやすいものの次の諸症:
胃腸虚弱、慢性胃炎、胃のもたれ、嘔吐、下痢
【薬局製剤】
体力虚弱で、痩せて顔色が悪くて、食欲がなく、疲れやすいものの次の諸症:
胃腸虚弱、慢性胃腸炎、胃のもたれ、嘔吐、下痢、夜尿症
四君子湯の飲み方について
脾虚の方、食欲不振の方に対して使われる漢方薬です。
バイキングに自分からよく食べに行く人は、脾虚ではありません。
仕方なくバイキングに連れていかれて、食べないと損だと分かっていても、頑張れないような人です。
もっと脾虚の程度がすすむと、1日3食は食べられず、お腹が空いたときに、食べられる量だけ少しずつ食べるという人もいます。
ただでさえ胃が飲食を受け付けない状態かもしれませんので、場合によっては、通常処方される「1日3包服用してください」の指示が、負担になることがあるかもしれません。
1日1包または2包くらいから飲み始めたり、服用できそうなときにだけ服用することにしたりして、そして徐々に服用量を増やしても構いません。
また、漢方薬を飲み慣れていない方は、味や匂いが苦痛になることもあるかもしれません。
味が慣れてくるまで、お湯で溶かしたりせず、ご自身の服用しやすい方法で無理せず服用しても構いません。
特に、水分の摂取が胃腸に負担になることもあるので、漢方薬の服用の際には、なるべく飲む水の量を少なくする工夫も必要です。
そういう意味でも、1日3回が基本とは考えずに、服用回数を1日2回にするなどしても大丈夫です。
補足
胃腸の機能(消化吸収)を高めることで気を補う、という方剤です。
一般に補剤と言われる六君子湯、十全大補湯、加味帰脾湯などの漢方薬には、そのベースに四君子湯が含まれています。
いきなり六君子湯や十全大補湯などを服用すると、かえって胃に負担になるくらいに胃腸が弱いひとは、まず四君子湯から始めてみるといいかもしれません。
さらに四君子湯でも合わないような胃腸虚弱な体質の方は、小建中湯を検討してください。
吸収障害による下痢と、ぜん動不足による便秘の両方に適応します。(便秘はあっても排便時のはじめは硬くあとは水様のことが多い)
また、虚証の方に併用される便秘の漢方薬としては、麻子仁丸などがあります。
血虚証がみられる場合は四物湯を合わせて用いることがあります。四君子湯と四物湯を合方したもを「八珍湯」と言います。
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