“た行”の漢方用語の説明
あ行 | か行 | さ行 | た行 | な行 |
は行 | ま行 | や行 | ら行 | わ行 |
た
太陰病(たいいんびょう) |
一般には脾気虚(腹満、下痢、吐き気がして食べられない等)や脾陽虚による裏寒(虚寒)の症状(お腹が冷えて痛い等)。太陰病の下痢は(熱証ではないので)口渇を伴わないことが特徴。『傷寒論』では三陰病の最初の段階。外感病では、三陽病から経過とともに三陰病に転ずることが想定されるが、もともと脾気虚があれば寒邪を受けて直に発症する(直中太陰)。また、太陽病や少陽病に瀉下薬を用いる、いわゆる誤治によっても発症する。代表方剤は、人参湯、附子理中湯など。 |
大逆上気(だいぎゃくじょうき) |
肺(ノドや気管支粘膜)の乾燥によって突発的に噴出する吐きそうになるくらいの激しい咳嗽。麦門冬湯の適応症状。 |
帯下(たいげ) |
おりもの。こしけ。 |
大腸(だいちょう) |
六腑の一つ。腹腔にあって、上端は闌門、下端が肛門。小腸から濁なるものを受け取り、水分を吸収し、残った食べ物の残渣を糞便として排出する。大腸の機能は、胃の降濁・肺の粛降・腎の気化作用などによって維持される(肺気虚や腎陰虚による便秘、腎陽虚による下痢など)。肺と表裏の関係にある。 |
大便秘結(だいべんひけつ) |
便が硬くなった重症の便秘。 |
代脈(だいみゃく) |
不整脈で、脈拍が規則的に飛ぶもの。 |
太陽頭痛(たいようずつう) |
後頭部の頭痛。 |
太陽病(たいようびょう) |
外感熱病の初期でよくみられる、頭痛、悪寒、発熱、脈浮などの症状(風寒表証)。治療には辛温解表薬が用いられる。参照⇒『傷寒論』第1条 |
濁(だく) |
⇔清。不要な成分。体外に排泄されるべきもの。小腸は(正常であれば)飲食物を、清なるもの(必要な栄養分)と濁なるもの(残渣)に分別する。 |
濁気(だくき) |
体に不要な老廃物。体内をまわって汚れた気。⇔清気。 |
濁涕(だくてい) |
濃く濁った鼻水。膿が混じっていることもある。副鼻腔炎などでみられる。 |
田代三喜(たしろさんき) |
1487年に明に渡り、金元時代に発展した李朱医学を修め帰国、その知識を日本に広めた。後世方派の代表。弟子の曲直瀬道三とともに活躍した室町中期から後期、日本の医療が、天皇中心とした支配階級の医療から広く大衆の医療へと変貌する。(1465~没年不明) |
脱液(だつえき) |
熱性病などでみられる脱水症状で、程度の重いもの。傷陰。(程度のやや軽いものは傷津。) |
胆(たん) |
六腑の一つだが、奇恒の腑にも属する。主な機能は胆汁の貯蔵と排出により消化を助けること。この機能は「肝」(の疏泄)によってコントロールされる。また、決断や勇気に関わるとされる。(胆が据わる、大胆不敵) |
痰(たん) |
①痰飲のうち、粘稠なものは「痰」、稀薄なものは「飲」と区別することができる。が明確に区別する意義はあまりないので、まとめて「痰飲」と言うことが多い。 ②気道から分泌される痰。有形の痰。主に呼吸器系の障害を起こす。その性質により寒痰・熱痰・湿痰・燥痰に分けられる。「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」。 ③臓腑や経絡などに停滞している痰。無形の痰。全身のいたるところを障害し、めまい、ふらつき、嘔気、動悸、息切れ、しびれ、痛み等、様々な症状を起こす。 |
痰飲(たんいん) |
①体の水液代謝の異常によって生じ、いろいろな病理変化を引きおこす病理的な産物。参照⇒痰飲とは ②『金匱要略』では、(広義の)痰飲は、その飲邪が存在する部位によって(狭義の)痰飲・懸飲・溢飲・支飲に区別され、(狭義の)痰飲とは「脾胃の痰」、つまり消化管内の水液の停留をさす。 |
短気(たんき) |
①呼吸の促拍。呼吸が早くなる。呼吸苦。息切れ。 ②気が短いこと。ガマンできずすぐにイライラしたり怒ったりする。「 |
淡滲利水(たんしんりすい) |
利水滲湿とも言う。浮腫、尿量減少、水様性下痢などで用いる治療法。いわゆる「利水」によって水湿の停滞を除去する。参照⇒利水滲湿薬とは |
単方(たんほう) |
①他の配合を加えない単一の方剤。 ②簡単な組み合わせの処方。 |
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ち
逐水(ちくすい) |
体内に貯留した水液を下痢として排出させること。参照⇒峻下逐水薬 |
地図舌(ちずぜつ) |
舌の苔が地図状に剥がれていて、時間経過とともに形や位置が変化するもの。気虚でみられることがある。(※西洋医学の「地図状舌」とは異なる) |
治則(ちそく) |
弁証にもとづいて最も有効な治療手順を決める、という治療の大原則。 |
血の道(ちのみち) |
治標(ちひょう) |
対症療法。 |
治病求本(ちびょうきゅうほん) |
病気の根本から治療することを目標とする。病気の根本的な原因である「本」を突き止めてそれを治すことで全身の治療ができる。 |
治法(ちほう) |
治則にもとづいた具体的な治療法。 |
治本(ちほん) |
疾病の根本原因に対する治療。 |
遅脈(ちみゃく) |
正常の脈拍にくらべて遅い脈。1分間に50~60以下。陽虚を示唆する。 |
着痺(ちゃくひ) |
痺証のなかで、湿邪の影響が大きいもの。湿痺。身体や手足が、重だるく痛む、だるくて動かしにくい、しびれ感がある等。参照⇒痺証の症状と特徴 |
注夏病(ちゅうかびょう) |
夏バテ、夏ヤセ、夏負け。 |
中寒(ちゅうかん) |
寒邪が直接臓腑にあたるもの。(寒邪が肌表を傷するものは「傷寒」) |
中気(ちゅうき) |
中焦の気。脾胃の気。 |
中気下陥(ちゅうきげかん) |
脾気虚にともなって、内臓下垂や脱肛、子宮脱がみられるもの。脾気下陥、気陥とも言う。代表方剤は補中益気湯。 |
中焦(ちゅうしょう) |
三焦の真ん中。三焦が水液の通路であるという意味では、水分が胃の受納・腐熟、脾の運化によって肺に運ばれていく場所。身体の部位をあらわすときは、人体の胸(みぞおち)以下~へそ以上のあたり。脾と胃、肝、小腸をさすこともある。 |
中成薬(ちゅうせいやく) |
中国で製剤化された漢方製剤。錠剤・丸剤・散剤・シロップ剤・注射剤などがある。 |
中風(ちゅうふう・ちゅうぶ) |
①『傷寒論』では感冒・カゼのような熱性疾患。悪風・自汗あり・脈浮緩のもの。風寒表虚証。(参照⇒『傷寒論』第3条) ②『金匱要略』では脳出血、脳梗塞などから半身不随を起こしたもの。 |
中薬(ちゅうやく) |
中国の伝統的な薬物の総称。生薬。 |
癥(ちょう) |
腹部の腫瘤(しこり)で、固く触れるもの。 |
腸燥便秘(ちょうそうべんぴ) |
陰虚や血虚(陰液不足)で、腸内の潤いが不足したことによる便秘。便がコロコロの兎糞状になり排出されにくくなる。主には慢性的な陰虚(虚証)であるが、熱邪(実熱)による脱水の場合との区別は必要。関連記事⇒潤下薬 |
張仲景(ちょうちゅうけい) |
後漢の時代に『傷寒雑病論』を記したとされる伝説的な人物。その序文に「傷寒の病(疫病)によって、私(張仲景)の一族の多くが亡くなった。そこで人々を救うために多くの書物や処方を集めて『傷寒論』を著した」ということが記されている。が、張仲景自身については謎の部分が多い。耳の凍傷を防ぐために張仲景が発案したスープの(耳の形をした)具が、餃子のルーツだという逸話がある。 |
潮熱(ちょうねつ) |
発熱や熱感が、潮の満ち引きのように毎日一定の時間になると現れたり悪化したりする。潮が満ち引きする干潟のように全身にくまなくしっとりと濡れるように汗をかく。陽明病でみられる。 |
腸癰(ちょうよう) |
腸内の炎症や化膿性の病症。虫垂炎や大腸炎など。 |
調理(ちょうり) |
病気が癒えてきてからの最後の仕上げ。病気を治して終わり、手術をしたら終わり、ではなく、治療後に養生したり体調を整えるための薬を使うことを「調理する」と言う。 |
沈脈(ちんみゃく) |
軽く触れただけでは感じられず、強く圧迫して感じられる脈。裏証をあらわす。 |
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つ
通因通用(つういんつうよう) |
反治法のひとつ。下痢に瀉下薬を用いるといったような、一見反しているようだけれども正しい治療原理。細菌性の(湿熱の)下痢に対しては、(止瀉薬を用いるよりも、)大黄のような清熱と瀉下の効果がある薬物を用いることで、根本的な原因である炎症を速く除去することができる。 |
痛痺(つうひ) |
痺証のなかで、寒邪の影響が大きいもの。寒痺。固定性で激しい関節痛があり、痛みは温めると軽減し、冷えると増悪する。参照⇒痺証の症状と特徴 |
て
涕(てい) |
①中国語では「鼻水」。 ②日本語では一般に「なみだ」を意味する漢字だが、東洋医学的にはやはり「鼻水」をさす。 |
転化(てんか) |
発症から治療の過程のなかで、表証が裏証に、寒証が熱証に、実証が虚証に、というように症候が変化すること。 |
天癸(てんき) |
①腎精の充実によって生じる生殖機能の成熟を促す物質。「女子は14歳、男子16歳(の前後)で天癸に至る」とされる。老年になるにつれ、精気が衰えてくれば天癸も徐々に減少し、性機能、生殖能力が減退、消失していく。 ②月経。 |
転筋(てんきん) |
こむらがえり。 |
と
土(ど) |
五行説における5つの要素(木火土金水)のうちの一つ。万物を生み出す大地の象徴。また季節の変わり目を示し(土用)、四季それぞれにも関わる。臓腑では脾と胃に対応。金を生み、木に負け、水に勝つ。 |
怒(ど) |
怒るという感情。生体に影響をおよぼす七情のひとつ。怒りが過剰になりすぎると五臓の「肝」を乱す。肝気が激しく上昇し、血も一緒に昇る。怒って逆上すると頭に血がのぼり、顔が赤くなったり、青筋を立てたりする。 |
湯(とう) |
「〇〇湯」の湯。湯液。煎じ薬。生薬を煮込んだスープ。 |
湯液家(とうえきか) |
主に漢方薬を使って病気を治療する者。⇔鍼灸家 |
盗汗(とうかん) |
寝汗。ねあせ。日中はほとんど汗をかかず、夜間睡眠中に汗をかく。陰虚でよくみられる。 |
統血(とうけつ) |
血液が本来あるべき血脈から漏れ出ないようにコントロールする。統血は脾の機能であるが、実質、気の固摂作用による。血管壁の機能維持や止血因子の供給などを含めたもの。 |
導滞(どうたい) |
消食導滞。消導。暴飲暴食などによる食べ物の停滞(食積)を除去する治療。参照⇒消導薬 |
同病異治(どうびょういち) |
①同じ病気でも人によって証が異なれば治療方法が異なる。 ②同じ人の同じ病気でも時期や経過によっては治療方法が異なる。 |
東洋医学(とうよういがく) |
中国発症の伝統医学のこと。漢方も東洋医学に含まれる。また広い意味で、インドのアーユルヴェーダやチベット医学などアジア圏の伝統医学全般をひっくるめて東洋医学とよぶ場合もある。 |
吐逆(とぎゃく) |
①胃に飲み込んだ食べたものが口に逆流してくること。嘔気を伴わない。 ②食べ物を吐き出すことを「吐」として、それの激しいものを「吐逆」と言う。 |
土臓(どぞう) |
脾の別称。脾(土壌)がしっかりしていれば、養分を使って様々なものを生み出すが、脾が弱い(土壌が管理されていない)場合は水が溜まって湿が発生する。 |