『傷寒論』第3条
いよいよ「傷寒」とは、です。
第1条、第2条から読みたい方は、こちら↓からどうぞ。
第3条
読み方⇒太陽病、或は已(すで)に発熱し、或は未だ発熱せず、必ず悪寒し、体は痛み、嘔逆し、脈陰陽倶(とも)に緊なる者は名づけて傷寒と曰う。
意味⇒太陽病で、すでに発熱している場合、または、まだ発熱していない場合もあるが、必ず悪寒、身体の痛み、吐き気があって、脈がいずれにしても緊である時は、傷寒という。
第2条の
太陽病で、発熱、発汗、悪風があって、脈が緩である者は、中風である。
に対して、第3条で
太陽病で、悪寒、身体痛、嘔気があって、脈が緊である者は、傷寒である。
と、中風と傷寒の違いを対比させて書かれた文章になっています。
太陽病で
これもやはり、第1条で説明済みの太陽病の症状、
脈が浮、頭~項の痛み、悪寒といった症状があって、太陽病だと考えられるときに、ということです。
或已発熱、或未発熱、
この言葉のあとに必ず悪寒があると言っているので、
まだ今は発熱していないとしても、悪寒があればいずれ発熱があるだろう、と考えています。
必ず悪寒し
第2条では、発汗して悪風する、のに対して
第3条では、悪寒としか書かれていません。
が、悪寒は、悪風よりも強い症状であり、対比的な文章からして、無汗(汗がでない)で悪寒するのだと考えられます。
体痛
筋肉痛や関節痛。
痛みが、頭や項背部だけでなく、身体の方へも及んでいるので、やはり症状としてはキツくなってきています。
嘔逆
胃は食べ物を受け入れるので、上から下への向きが正常だとすると、
その逆の症状が起きて、上向きに嘔気がします。
嘔吐の「嘔」の字は、オエッという声が一緒にでてしまうようなときによく使われます。
(「吐」は実際にモノが吐き出されるときによく使われます。声とモノが両方出れば「嘔吐」です。)
脈陰陽倶緊
ここの陰陽が何を指しているかの解釈は、説(脈のとり方、または病気の経過)が割れているようなのですが、
大事なのは、中風が「脈が緩」なのに対して「脈が緊」であるということ。
血管が収縮しているような引き締まった脈のことです。
名曰傷寒
以上のような症状を「傷寒」と言います。
第2条の中風に比べて、症状の激しいものになります。
風に中(あた)ったのが「中風」、寒邪に傷(やぶ)られたのが「傷寒」、と名前だけでもキツイ感じがしますが。
中風に使う代表的な方剤が「桂枝湯」(けいしとう)だとしたら、傷寒に使う代表的な方剤は「麻黄湯」(まおうとう)です。
まとめ
虚実 | 症状の重さ | 汗 | 特徴的症状 | 脈 | 基本方剤 | |
中風 | 虚証 | 比較的軽い | 自汗 | 悪風 | 浮緩 | 桂枝湯 |
傷寒 | 実証 | 比較的重い | 無汗 | 悪寒・身体痛 | 浮緊 | 麻黄湯 |
一般的に、中風はフツウの感冒(カゼ)の症状で、傷寒はインフルエンザのような症状として例えることが多いです。
しかしながら、『傷寒論』にはそういうウイルスの違いなどの説明はなくて、
あくまでも症状の違いを書いているだけです。
病気の原因の違いもありますが、身体の抵抗力・免疫力の個人差も関係してくるものなので、
インフルエンザ⇒傷寒⇒麻黄湯
というのがいつも正しいとは限りません。
中風と傷寒の違いは、確かに軽症か重症か、ということではありますが、
実際問題、難しいのは
中風と傷寒の中間のような症状もあるはずですし、
中風の中にも軽症~重症があり、傷寒の中にも軽症~重症があり、
病名ではなくて、
症状の違いを見極めて、対策をとることが『傷寒論』では要求されています。
そしてこれは、太陽病の初期の症状であって、このあと第4条からは、その症状が変化していくことが書かれています。
方剤が出てくるのはまだその後です。
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