漢方用語集ーか~こ

漢方用語集 (か行)

“か行”の漢方用語の説明

あ行か行さ行た行な行
は行ま行や行ら行わ行

(か)
①五行説における5つの要素(木火土金水)のうちの一つ。熱の性質。季節では夏の象徴。臓腑では心と小腸に対応。土を生み、水に負け、金に勝つ。
②六淫における熱(ねつ)の極まったもの。火と熱の違いは、わずかな程度上の問題。
外因(がいいん)
からだの外からくる病気の原因。↔内因(ないいん)
外寒(がいかん)
⇒寒邪(かんじゃ)・寒証(かんしょう)
外感病(がいかんびょう)
外邪によって発生した疾患。例えば感冒、インフルエンザ、腸チフス…。
咳逆(がいぎゃく)
こみあげてくる咳。喘息。咳逆上気(がいぎゃくじょうき)。
開竅(かいきょう)
「心は舌に  する」のように、五臓の機能がよく反映されるつながりのある場所を示すことば。それぞれ、心⇒舌、肝⇒目、脾⇒口、肺⇒鼻、腎⇒耳と二陰に開竅する。
開竅法(かいきょうほう)
芳香性の強い薬物によって意識を覚醒させる救急措置的な方法。参照⇒開竅薬
開闔(かいこう)
腎の作用の一つ。開閉の意味で、開は水の排泄、闔は水を体に保つことを意味する。腎は開闔を支配しており、膀胱をコントロールして尿の排泄と貯蔵を調節している。腎の開闔作用の異常によって排尿障害が起こる。
齘歯(かいし)
歯ぎしり。歯を食いしばる。噛歯(ごうし)。軋歯(あつし)。
カイジ(かいじ)
槐耳。サルノコシカケ科に分類される真菌(キノコの仲間)。マメ科の落葉高木である中国えんじゅ(の老木にのみ)に成長する。中国では抗がん薬として研究されているが、日本に輸入されているのは食品扱いである。
外湿(がいしつ)
外から湿邪の影響をうけたために生じる症候。外湿は脾の運化機能を障害しやすい。⇔内湿(ないしつ)
外邪(がいじゃ)
からだの外から生体機能に悪影響を及ぼす邪気。細菌・ウイルス・汚染物質・異物、または気候などの自然環境も外邪となることがある(風邪・寒邪・湿邪・暑邪・燥邪・熱邪)。 ⇔内邪(ないじゃ)
咳嗽(がいそう)
痰がない乾いた咳(コンコン)が「咳」で、痰がある湿った咳(ゴホゴホ)が「嗽」。ひっくるめて「咳嗽」。
外風(がいふう)
自然界からの風邪ふうじゃの侵入により発症したと考えられる、外感風邪(いわゆるカゼなど)の原因(病因)。
回陽(かいよう)
失った陽気や精気をとりもどす(回復させる)こと。亡陽証に用いられる回陽救逆の要薬は附子です。
鵞雁風(ががんふう)
汗疱。水虫。
鶴膝風(かくしつふう)
ひざの関節の部分だけが鶴のひざのように肥大している症状。膝関節炎や膝関節リウマチでみられる。(ただし実際のツルは、つま先立ちのようにして立っていて、膝のように見えている部分は実はかかと・・・なのである)
加減方(かげんほう)
症状により合うように、本来の方剤に生薬を加えたり除いたり、分量を増減したりの調節を加えたもの。漢方のさじ加減。結果として処方名が異なるものになることがある。熟練した漢方家の技であり、本来の方剤の使い方をマスターしてからじゃないと行えない。
火邪(かじゃ)
六淫(ろくいん)の一つ。火が燃え上がっているような現象をおこす発病原因。体が燃えるように熱や炎症が生じ、火が燃え上がるように体の上部に症状が出て、火が水分を蒸発させているように乾燥や脱水をきたす。外邪としては、熱邪(ねつじゃ)と同じ意味で使われる。
仮象(かしょう)
見かけ上の症候が、疾病の本来の性質とは逆に現れていること。「真熱仮寒」「真寒仮熱」「真実仮虚」「真虚仮実」など
鵞掌風(がしょうふう)
手掌角皮症。主婦湿疹。
火臓(かぞう)
五臓の「心」の別称。心は五行論では火に属すため。血液を循環させ、体を温めている。
華佗(かだ)
三国志にも登場する後漢の時代の名医。麻酔薬を用いて開腹手術も行っていたとされる逸話が有名。
牙痛(がつう)
歯痛。
喀血(かっけつ)
気管・肺など呼吸器から出血を咳ととも吐き出す症状。(胃や食道など消化器からの出血を吐き出す場合は吐血)
活血化瘀(かっけつかお)
血行を促進し、瘀血を除去する。そのような効能を主にもつ薬物を活血化瘀薬と言う。
活血薬(かっけつやく)
活血化瘀薬または活血袪瘀薬の略。日本での駆瘀血薬くおけつやく
②血の巡りの悪い血瘀の治療薬を作用の強さで分けたときに、作用のおだやかなものを活血薬と呼ぶ。当帰川芎丹参など。(次に強いものが化瘀薬かおやくで、作用のとても強力なものを破血薬はけつやくと称する)
滑脈(かつみゃく)
脈診において、脈がなめらかで円滑に流れているもの。丸い玉が転がっていくように触れる脈。血管がすばやく拡張と収縮を行っている。体力の充実した健康人にもみられるが、妊娠の可能性を示すこともある。
(かん)
五臓の一つ。五行の木に属する。生理機能として、疏泄そせつ蔵血ぞうけつをつかさどり、気・血・津液を全身に巡らせるための要。ストレスに弱い。他の組織器官との関係として、筋を主り、その華は爪にあり、目に開竅する。関連記事⇒東洋医学における「肝」のはたらき
(かん)
寒い、という自然現象。六気(風・寒・暑・湿・燥・火)の気候のひとつ。冬に多い。寒すぎると寒邪となる。
(かん)
①神経質な小児、腺病質(虚弱な児童)、夜泣きやひきつけなど。「疳の虫」によって起こると考えられていた症状。
②走馬牙疳や下疳などで使われる字。あたかも虫に浸蝕されたかのような病変。
(かん)
甘味。五味の一つ。甘草、黄耆、人参、大棗などの生薬の味。①急性の症状を緩和させる、②胃腸を整える、③気血を補う、などの作用をもつもの。五臓では脾にはたらきやすい。
(かん)
鹹味。五味の一つ。芒硝、牡蛎、地骨皮などの生薬の味。①塩からい味のするもの、②乾燥して固まったものを潤したり軟らかくしたりする、などの作用をもつもの。五臓では腎にはたらきやすい。⇒生薬の五味について
肝胃不和(かんいふわ)
「肝」と「胃」の協調が崩れた状態。ストレスなどで肝の疏泄機能が低下し、胃の機能も失調する。肝気犯胃や肝火犯胃がある。神経性胃炎など。逆に、飲食の不摂生により胃気が上逆して肝に影響することもある。
肝鬱(かんうつ)
⇒肝気鬱結(かんきうっけつ)
乾嘔(かんおう)
嘔吐しそうにはなるが、実際には何も吐かない(吐けない)もの。物の出ない嘔吐。からえずき。
肝火(かんか)
肝気の流れが鬱滞することで熱を帯びて生じる証。肝気鬱結の症状に加えて、怒りっぽい、頭痛、のぼせ、ほてり、目の充血、口渇、口内炎などの熱症状がみられる。「専門家として  の問題は看過できない。」
肝火上炎(かんかじょうえん)
肝火上逆(かんかじょうぎゃく)とも言う。肝の熱(火)が顔や頭部へ上炎することで生じる病理現象。頭痛、めまい、赤ら顔、目の充血、耳鳴り、不眠、イライラ、怒りっぽい等。肝気の鬱滞(肝気鬱結)がさらに進展して熱(火)をもつもの、あるいは激しい精神感情によるもの、またはその他の原因によるものが考えられる。肝の蔵血作用に影響して喀血、吐血、鼻血、月経過多などが起こることもある。高血圧や更年期でもみられる。
肝気(かんき)
肝の機能のこと。全身へ気血を巡らせている。
肝気鬱結(かんきうっけつ)
気滞のひとつで、特にストレスや抑うつなど精神的な素因が関連するもの。「肝」の疏泄機能の失調により、イライラ・憂うつ感、ヒステリーや胸脇部の脹った痛みが起こる。肝鬱、肝気鬱滞、肝鬱気滞、気鬱などはどれも同じ意味合いで使われる。過剰な精神刺激の他、肝の陰血不足、外邪の侵入などさまざまな原因が絡んでいることもある。「肝気鬱血」と書かれた誤字がよく見つかる。
肝気横逆(かんきおうぎゃく)
肝気鬱結によって(肝の横にある脾胃に影響し)消化器系の症状まで引き起こされること。胃が障害されるものを「肝胃不和」、脾が障害されるものを「肝脾不和」という。
肝血(かんけつ)
肝に貯蔵されている血。肝血の不足によって肝の機能が低下した状態(虚証)を「肝血虚」という。
肝血虚(かんけっきょ)
肝に貯えられておくべき血が不足した状態。慢性疾患による陰血の不足、または出血過多が原因で起こりやすい。全身的な貧血症状の他、めまい・多夢・不眠・眼精疲労・かすみ目・夜盲症・筋肉のしびれや引き攣れ・爪がもろい・顔色に艶がないなどの症状がみられる。
完穀下痢(かんこくげり)
食物が消化吸収されず、食べたものの形が残った状態の下痢便。脾胃の機能がかなり低下している裏の寒証などが推測される。
寒湿(かんしつ)
湿邪に寒邪をともなったもの。湿邪の影響の他に、寒湿が生じると人体の陽気も損傷しやすい。脾陽虚のものに発生しやすい。↔湿熱(しつねつ)
寒邪(かんじゃ)
外因のひとつ。寒冷を受けることによって発症する病因。冬に多くみられる。自然の寒邪を受けることを外寒という。
特徴①:寒症状が起こる。寒い・冷える・悪寒する・顔色が青白い・温かいものが欲しくなる。
特徴②:凝結させる性質をもつ。気血津液を滞らせて、痛みが生じやすくなる。
特徴③:熱気は↑に向かうのに対して、寒気は↓に向かい、下半身を侵しやすい。
特徴④:汗腺が閉じて汗が止まる。分泌物(尿・痰・鼻水)は薄く透明で、量は多くなる。
特徴⑤:以上の症状は、温めることで軽減がみられる。
特徴⑥:風邪と湿邪を伴いがちで、それぞれ風寒邪と寒湿邪、さらには風寒湿邪となる。
「私のカンじゃが、最近  におかされる患者が増えておる。」
寒証(かんしょう)
寒冷の症状。外寒と内寒とがある。外寒は、寒邪を受けて体を冷やしたり、冷たいものの飲食で引き起こされる場合。内寒は、陽気の不足によって新陳代謝が衰えて体内から冷える場合。外寒と内寒は相互に因果関係をもち、外寒によって内寒を生むことがあるし、内寒のある人は外寒に侵されやすい。
肝腎陰虚(かんじんいんきょ)
肝と腎の陰虚。肝血と腎精がともに不足した状態。頭・目・耳・骨髄など養えなくなり、めまい・耳鳴り・忘れっぽい・目がかすむ・足腰がだるい等の症状がみられる。虚熱が出て、ほてり・喉の乾燥・寝汗・遺精・生理不順などをともなう。
寒疝(かんせん)
寒冷刺激によって発生するとされる強い持続性の下腹部痛。鼠径ヘルニア、陰のう水腫など。
神田橋処方(かんだばししょほう)
四物湯+桂枝加芍薬湯。神田橋條冶の草案で、こころの病気(PTSD、フラッシュバック、発達障害など)に使用されることがある処方。メカニズムは不明。保険適応外。
寒熱(かんねつ)
病態を表現するときの対立概念の一つで、病気(邪)の性質は寒と熱に分けられる。陰が強い、または陽が弱いと寒証。陽が強い、または陰が弱いと熱証。寒か熱かは主に自覚的症状または他覚的症状から判断されるもので、体温計が示すデジタル数値の低い高いとは必ずしも一致しない。寒熱を判断することを寒熱弁証と言う。
寒熱錯雑(かんねつさくざつ)
人体の異なる部位に寒証と熱証が同時にみられること。上熱下寒や、表寒裏熱など。
寒痛(かんつう)
主に上腹部(胃部)の冷感と疼痛。胃寒いかん。基礎に陽虚がある場合は特に起こりやすいが、寒冷の環境や冷たい飲食物の摂取によって生じる。
肝脾不和(かんぴふわ)
肝は疏泄機能により脾を助けているし、逆に脾は運化機能により肝を助けている、この協力関係が崩れた状態。肝気欝結の症状の他に、食欲不振、膨満感、腹痛、下痢などの消化器症状を伴う。過敏性腸症候群など。
漢方(かんぽう)
①医学や医術のことで「漢方医学」を意味する。最初は古墳時代の大和朝廷の頃に中国から朝鮮半島を経由して伝えられたもだが、その後色々あって、日本の気候風土や日本人に合うように日本で独自に発展をとげた日本の伝統医学。江戸時代に日本に入ってきた西洋医学の「蘭方」と区別が必要になり、相対する言葉として作られた日本独特の呼称。だから中国には「漢方」という言葉は無い。「漢字」と同じように、日本と中国では似ているようで結構違う。
②漢方で用いる薬のことを「漢方薬」というのだが、漢方医学で用いる処方という意味で「漢方」が使われていることもある。
③東洋医学という意味合いで、中医学も含めて「漢方」と言ったりあいまいな使い方もされることがあるので文脈で判断してください。
頑麻(がんま)
ひどい知覚麻痺。
肝陽上亢(かんようじょうこう)
肝陰の不足(または肝腎陰虚)のため肝陽を抑制できず、肝陽が過度に上昇する病理変化。頭痛、めまい、赤ら顔、目の充血、耳鳴り、イライラ、怒りっぽい等、上部の熱盛状態のほかに、足腰が弱い、腰痛などの下虚または全身的な陰虚の症状が見られることがある。

肝気鬱結…肝の疏泄(気を巡らせる)機能の減退により滞った気実証

肝火上炎…肝気の鬱結が進展して火と化し、肝火が逆上した実熱証(陰血の不足はみられない)

肝陽上亢…肝陰(肝の陰血)が不足して肝陽を抑制できなくなったために、肝陽が上昇した虚熱証

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(き)
①Qi。人体を構成している最も基本的な物質であり、かつ、人体の生命活動を維持している最も基本的な物質。でも、空気のように気配はあるが直接目で見ることはできない。体の機能をコントロールするエネルギー。ATP(アデノシン三リン酸)。先天の気と、飲食物からの気と、肺から吸い込んだ気とが合わさったものであり、すなわち腎や脾や肺の協力の下で生成されている。
②各臓器の機能(はたらき)を表す。肺気、脾気、腎気など。
③ 気が付けば毎日気に障らないように気にかけて、気を利かして気をまわして気を配り気疲れして、正気とは思えないほど気苦労多くてお気の毒。 そんなに気を遣ってたらいつか気を失うのではないかと気になって気絶しそうでしょ。お気を大事に。って日本にはこんなに「気」を使う慣用句が多くて気は確か?
(き)
①喜ぶという感情。生体に影響をおよぼす七情のひとつ。喜びが過剰になりすぎると五臓の「心」を乱す。気が緩み、集中力が低下し、失態をおかす。
②しばしば。たびたび。喜嘔きおう→たびたび吐くこと。喜唾きだ→たびたび唾をはくこと。喜欠きけつ→たびたびあくびをすること。喜忘きぼう→記憶障害。
喜按(きあん)
疼痛(腹痛)があるときに、手で押さえたりさすったりすると痛みが和らぐ状態。「手当て」による癒し効果も高い。虚証でみられる。↔拒按きょあん
気化(きか)
  作用。「気」の機能の一つ。ある物質を別の物質に変化させる。例えば食べた飲食物が体の中で別の物質に変わる全過程を促進させている。新陳代謝。
気陥(きかん)
気虚下陥(ききょげかん)。
①気の上昇が足りない、または気の過剰な下降。下痢を起こしやすい、頻尿、立ちくらみなど。
②気が足りずに臓器などを正常な位置に持ち上げておく力がはたらかない。胃下垂、脱肛など。
気機(きき)
「気」の運動(巡り)のこと。昇(下から上)・降(上から下)・出(内から外)・入(外から内)という運動形式を基本とする。肺の宣発粛降、胃の降濁、脾の昇清、などはこれを具体的に表したもの。気の運動のバランスが乱れている状態を「  失調」と称し、気滞や気逆などが起こる。「肝」の疏泄そせつ機能により調節される。気機の失調を改善する薬は理気薬(行気薬)
気虚(ききょ)
気の不足、または気のはたらき(推動・温煦・防御・固摂・気化)の低下。パワー不足。元気がない、気力がない、息切れ、倦怠感、食欲がない、カゼをひきやすい、冷えやすい、出血しやすい、泥状便、脈無力など。四君子湯補中益気湯などの適応する症状。
気逆(きぎゃく)
気の過剰な上昇、もしくは、上昇すべきではないのに気が上昇すること。めまい、頭痛、イライラ。胃の気の上逆でげっぷ、吐き気。肺の気の逆上で咳や喘息。
気血弁証(きけつべんしょう)
気血津液弁証ともいう。人体の基本的な構成成分である陽気(気)や陰液(血・液・精)についての病理的な状態を判断すること。具体的には気虚・陽虚・血虚・陰虚、気滞、血瘀、水毒などを弁別する。「体力がなくて疲れやすいなら気虚です」とか。
奇恒の腑(きこうのふ)
脳・髄・骨・脈・胆・女子胞(子宮)の6つ。人体の臓腑で、ぞうにもにも分類できないもの。機能上は五臓に似るが、形態的には六腑に近い。胆だけ例外的に腑にも含まれる。
気剤(きざい)
気を巡らせて、上衝する気を引き下げる薬物のこと。ストレスなどで気が巡らなくなったものに用いられる。半夏厚朴湯香蘇散など。
刻・刻み(きざみ)
①煎じ薬で使用する生薬全般。煎じ薬の意味で、エキス剤(漢方製剤)に対する言葉として使う。「きざみで治療した方がよさそうなので、きざみで処方します」
②生薬の形状のひとつ。不整形で約3~10㎜の大きさに刻まれたもの。煎じ薬として用いるのに一番扱いやすいサイズ。
気滞(きたい)
気の動きが悪く、あるところに滞っている状態。お腹が張って痛い、げっぷまたはおならが多い、憂うつ感、神経質など。「理気薬で  の改善を期待する」
気脱(きだつ)
気が過剰に出て行ってしまった危険な状態。大量出血時など。
気短(きたん)
息切れ。
吃逆(きつぎゃく)
しゃっくり。呃逆(あくぎゃく)とも言う。「柿のヘタが  に効くってよ」
肌肉(きにく)
筋肉を、筋と肉に分けたときの、筋(筋膜・腱・靭帯)ではなく、やわらかい肉の方。筋は肝と関連するのに対して、肌肉は脾と関連する。脾が悪くなると肌肉がおちて、急にやせてくる。
肌膚甲錯(きふこうさく)
皮膚に艶がなく、カサカサしている。サメ肌。血瘀の症状でもみられる。
気不摂血(きふせっけつ)
気虚によって、気の固摂こせつ作用が弱くなり、血液が脈から外へもれて、出血症状をおこすこと。脾不統血ひふとうけつも[脾虚→気虚→気不摂血→出血]なので原理的には同じこと。
気分(きぶん)
温病学における外感熱病の発展過程の中のひとつの段階を指す。「  の熱」は血管の外側の熱で、主に清熱瀉火薬が用いられる。
(ぎゃく)
瘧疾。間歇熱(周期的に高熱と悪寒を繰り返す)のみられる疾患。マラリアなど。
客証(きゃくしょう)
方剤を決定するうえで、かならず必要な主訴・・に対する言葉で、人によってあったりなかったりする、なければならない症状ではないもの。兼証けんしょうともいう。
久瀉(きゅうしゃ)
慢性の下痢。
(きょ)
必要な何かが足りていない。不足。何が足りていないかは文脈によって違う。↔実(じつ)
拒按(きょあん)
疼痛がある部分を手でおさえたりすると、痛みが増悪する、あるいは嫌がる。瘀血の痛みの特徴のひとつ。↔喜按(きあん)
(きょう)
体にある外界へ通じている穴(あな)。目・耳・口・鼻・尿道口・肛門の9つ(目・耳・鼻は二つずつ)で九竅きゅうきょう
(きょう)
恐れるという感情。生体に影響をおよぼす七情のひとつ。過剰な恐れは気を下降させる。五臓では「腎」の気がとどまれなくなり、水分の代謝に影響する。恐怖でおしっこを漏らすことも。
(きょう)
驚くという感情。生体に影響をおよぼす七情のひとつ。過剰に驚くと気が乱れる・気が動転する・混乱する。
胸脇苦満(きょうきょうくまん)
胸~脇腹が張って苦しい。腹診においては胸脇部を圧迫したときの抵抗と圧痛により判断される。気が横隔膜あたりで停滞している(肝鬱気滞かんうつきたい)、あるいは横隔膜周囲の臓器の炎症と考えられ、柴胡剤さいこざいを選択する目安となる。
胸痺(きょうひ)
心臓部の痛みや苦悶感。痛みは背部や上腕におよぶこともある。狭心症や心筋梗塞の症状でもある。痰湿や血瘀、あるいは心の陽気の不足(心気虚・心陽虚)や陰液の不足(心血虚・心陰虚)などが関連する。胃の疾患や逆流性食道炎でも似た症状を訴えられることがある。
驚風(きょうふう)
ひきつけをおこす疾患、てんかんや髄膜炎など。
鏡面舌(きょうめんぜつ)
舌に苔がまったく付着しておらず、乳頭も消失していて、舌面がツルツルとテカっているように見える。陰虚や血虚、気陰両虚など陰液が消耗しているものでみられる。光滑舌こうかつぜつとも言う。
虚火(きょか)
虚熱きょねつの勢いの盛んなもの。炎症、発熱、充血などがみられる。
虚寒(きょかん)
陽虚(体を温める機能の低下)により、寒証かんしょうがみられる状態。⇔実寒じつかん
局方(きょくほう)
①『日本薬局方』の略
②『和剤局方』の略
虚実(きょじつ)
①正気の強さや病邪の勢いの強弱をあらわすものさし。病邪が虚で、正気が実ならば、薬を飲まなくても自然治癒するはず。
②漢方的診断によって、病に対して対抗するための体力が不足している状態を「虚」、充実している状態を「実」と判別する。一般には体格や体質で判断されがちだが、平素の虚実と病気になったときの虚実とは一致しないことがある。また実際には、虚から実までのあいだには様々な段階がある。
虚実錯雑(きょじつさくざつ)
虚証の部分と実証の部分とが入り混じっていて、両面に対応しなければいけない、一般にはもっとも多い状況。
虚証(きょしょう)
①体に必要不可欠な基本物質(陰液)や機能(陽気)などが不足した状態。何が不足しているかによって気虚・血虚・陽虚・陰虚などに分けられる。原則として「補法」で治療する。
②日本漢方では概して、体力がない、疲れやすい、やせている、顔色がわるい、胃腸が弱い、寒がり等のタイプ。 「あの巨匠は強そうに見えて実は  である」
虚熱(きょねつ)
陰虚にともなう熱証。陰虚内熱。津液不足による乾燥症状と、手のひらや足のうらのほてり・のぼせ・いらいら・寝汗などの熱証が同時にみられる。慢性疾患で多い。治療には清熱とともに滋陰が重要。⇔実熱(じつねつ)
虚労(きょろう)
①極度の疲労あるいは疲労の蓄積により、心身ともに虚して、治療が必要なレベルまで衰弱した状態。
②虚弱体質。
気淋(きりん)
五淋のひとつ。気滞や気虚による排尿障害。
金匱要略(きんきようりゃく)
中国の古典。『傷寒雑病論』から独立した一部。傷寒(急性熱性疾患)以外の慢性疾患(雑病)を扱った医学書。略は『金匱』。
緊脈(きんみゃく)
脈象で、弦脈よりもさらに緊張した(張りつめた)脈。寒証や疼痛をあらわす。浮・緊で表寒、沈・緊で裏寒。
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(く)
苦味。五味の一つ。黄連・黄柏・大黄・蒼朮・杏仁などの生薬の味。①降ろしたり瀉したりする、②乾燥させ堅くさせる、などの作用をもつもの。五臓では心にはたらきやすい。「良薬は口に苦し」とは、人からの忠告は受け入れがたいけど身のためになるよということの例えでも使われるが、苦いからといって良薬とは限らない。
駆瘀血薬(くおけつやく)
血瘀けつおを治すのに用いる薬。瘀血を取り除いて血液の流れをスムーズにする薬。駆瘀血剤の中に常用される生薬。桃仁、紅花、川芎など。中薬では活血薬かっけつやくとか活血化瘀薬かっけつかおやくという。
駆瘀血剤(くおけつざい)
血瘀証の治療に用いられる方剤。桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯など。
口訣(くけつ)
秘伝。経験を積み重ねた漢方家(師匠)から、漢方を学ぶ者(弟子)へ伝えられる、臨床で役に立つ奥義。極意。漢方のEBM(根拠に基づいた医療)において、口訣は根拠になり得る。
(くだき)
生薬の形状のひとつで、細かく粉砕されたもの。
君主の官(くんしゅのかん)
五臓の「心」の別称。心は精神神経活動をつかさどり、五臓六腑を統括しているとされることから。
君臣佐使(くんしんさし)
方剤おける各生薬の役割分担。それぞれが必要な役を演じて一つのチームとして運用される。
君薬:その方剤の作用の中心となる薬。主役。
臣薬:併用することで君薬の効果がさらに際立つ薬。主役の相棒。
佐薬:君臣薬と協力してその他の作用を補助したり欠点をフォローしたりする薬。名脇役。
使薬:全体を調和させてまとめる薬。大御所。
ただし必ずしもすべての方剤にこの四種類の役が割り当てられているとは限らず、組み合わせはさまざま。
麻黄湯でいえば、君:麻黄、臣:桂枝、佐:杏仁、使:甘草。
四物湯だと、君:地黄、臣:当帰・芍薬、佐:川芎、使:なし。

経穴(けいけつ)
いわゆる「ツボ」。経絡と体表部との接点。鍼灸の治療に必要不可欠なもの。皮膚に近いところを走る経絡のところどころにあり、位置はWHO(世界保健機関)によって統一されている。実際には穴はあいていない。
経脈(けいみゃく)
経絡系統を縦方向に走る太い幹線。主要な経脈として、それぞれ特定の臓腑と所属し対称的に分布する12の経脈(正経十二経脈)と、臓腑と固定の関係をもたず非対称的に分布する奇経八脈がある。
経絡(けいらく)
気血の運行の通路。臓腑、組織、筋肉や皮膚など体の隅々までをつなぐネットワーク。経絡は、縦方向に走る経脈けいみゃくと、そこから横方向に細かく枝分かれする絡脈らくみゃくがある。
解肌(げき)
解表と同じく、発汗によって体表の邪を発散させることだが、体表よりも少し深く、肌肉まで作用するというニュアンス。
下焦(げしょう)
三焦を三つに分けた場合の下部。三焦が水液の通路であるという意味では、水分が(腎の気化作用によって)便や尿として排泄される場所。身体の部位をあらわすときは、へそ・・より下の部分。(臍以下の腹部・陰部および肝・腎・大腸をさすこともある。)
(けつ)
①体の構成成分の一つで、血管内を循環する、栄養に富む赤い液体。②気・血・津液・精をすべて含んだ概念での血液。③全身に潤いと栄養を与える物質。
血は「水穀の精微」と「腎精」から化生される。つまり飲食物から栄養分を取り出す脾胃の機能、肝臓に貯蔵している栄養(ビタミンB12や葉酸を含む)、骨髄の造血作用などの協同で生まれる。
厥陰頭痛(けついんずつう)
頭頂部の頭痛。
厥陰病(けついんびょう/けっちんびょう)
六経弁証で、外感熱病の状態の推移のうちの、三陰病のさいご。身体の内部(裏)まで冷えが強くなっている状態。代表的な症候として、上熱下寒など複雑な寒熱錯雑証が出現する。臨機応変な治療によって陽気を回復させなければならない。
血瘀(けつお)
血液の循環の障害。流れがわるくなったり、滞ったり、あるいは血管から血液がもれて組織中に留まったりする病理状態。気虚、気滞、血寒、血熱などが原因にあることが多い。
血虚(けっきょ)
けつの不足。血のもつ潤したり栄養を与えたりする作用の不足。血の消耗が多いか、あるいは血の生成が足りないか。顔色がわるい、皮膚・爪・髪につやがない、ふらつき、目のかすみなど。西洋医学の貧血とは必ずしもイコールではない。さらに症状に応じて心血虚や肝血虚に分類することもできる。「問題、血虚のウグイスの鳴き声は?」
結胸(けっきょう)
結胸証。心下部(みぞおち)が膨張し、硬くつかえ、圧痛がある症状。
月経後期(げっけいこうき)
月経周期が7~9日以上遅れること。血虚や寒証(寒凝血瘀)などでおこることがある。
月経先期(げっけいせんき)
月経周期が7~9日以上早まること。気虚や血熱などでおこることがある。
月経不定期(げっけいふていき)
月経周期が早まったり遅れたり定まらないこと。先後不定期ともいう。月経痛をともなうものは肝気鬱結が多い。または腎虚などでもみられる。
血室(けつしつ)
子宮のこと(と考えられている)。
血熱(けつねつ)
血分に熱邪(実熱によるものと虚熱によるものがある)が混じった病理状態。血行を速め、甚だしいときは出血が起こる、これを血熱妄行けつねつもうこうという。
血分証(けつぶんしょう)
熱邪が血分に侵入した、温熱病のもっとも重篤な段階。意識障害やけいれんを生じることがある。営分証からさらに進行したもので、熱証のはげしいもの、陰液の消耗がはげしいもの、出血の傾向がみられるものがある。
血脈(けつみゃく)
血液(液体)とその通路である脈管(血管)のセットでの呼び方。心臓は、脈管と直接に連なっており、脈管中に血液を一定方向に運行させている。つまり血行を維持している。また、血脈は顔面に多いので、心の調子が顔色にあらわれやすい。よって「心は血脈をつかさどり、その華は面にある」という。
結脈(けつみゃく)
脈拍が緩慢(遅脈)で、不規則にとぎれる。
血淋(けつりん)
尿に血が混じる症状。尿の色が紅い、あるいは尿に血塊が混じる。排尿時の熱感や痛みを伴うこともある。淋証りんしょう(排尿障害)の分類のひとつ。
厥冷(けつれい)
四肢(手足)が冷たいこと。四肢厥冷。厥逆けつぎゃく
解表(げひょう)
表邪を発汗によって体外へ発散させること。表証を発汗させることにより治療する方法を解表法という。参照⇒解表薬とは
下法(げほう)
攻下法。瀉下法。便を排泄させることによってに入った病邪を排除する方法。たんに便通を良くすることではない。
懸飲(けんいん)
胸脇部の痰飲で、肺や胸膜などの炎症による胸水に相当する。
元気(げんき)
人体の「気」の中でもっとも重要で基本的なもの。生命活動の原動力。
健脾(けんぴ)
脾の機能を正常にする治療。それにより気・血・津液の生成を高めることが目標。
弦脈(げんみゃく)
脈診において、脈の力が強くまっすぐで、琴の弦を触れるように張りつめているもの。自律神経系(交感神経)の過緊張と考えられ、肝気鬱結などによる気の滞りが疑われる。
元陽(げんよう)
腎陽。腎陽を、生命活動のもっとも基本になるものという意味を込めたときの言い方。
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(ごう)
二つの漢方薬を合方するときに用いる接続詞。and。漢方薬Aと漢方薬Bを併用する場合は「A合B」。
行気(こうき)
理気。気滞に対する治療法のひとつ。
拘急(こうきゅう)
筋肉がひきつれること。
紅舌(こうぜつ)
正常よりも舌の色が赤い。舌色の赤みは熱の強さを示し、赤いほど熱が強い。
絳舌(こうぜつ)
紅舌よりも紅色が濃い舌。重症の熱証(実熱あるいは虚熱)をあらわし、深紅色ほど重症。紅舌と絳舌の区別がつかないときは紅絳舌という。
哮喘(こうぜん)
気管支喘息
降濁(こうだく)
飲食物の消化と運搬の過程において、清は脾によって上へ運ばれ、濁は胃によって下へ送られる。脾の昇清に対して、胃の降濁。
黄帝内経(こうていだいけい/こうていだいきょう)
前漢時代にまとめられたとされる医書(論文集)。略は『内経』。現物がそのまま残っているわけではないが、(説では)『素問そもん』と『霊枢れいすう』の2部構成ということになっている。ほとんどは黄帝(伝説上の帝王)の疑問に医学者(岐伯ら)が答えていく問答形式で記されていて、『素問』には東洋医学の基本概念が、『霊枢』には実践的な鍼灸治療の方法も記されている。
後天の精(こうてんのせい)
脾のはたらきによって、食べ物から取り入れた栄養(水穀の精微)より得られる精。先天的に備わった精(先天の精)をたえず補充し、生命活動のエネルギー源を維持している。
後天の本(こうてんのほん)
「脾」の別称。脾は食べ物などから後天的に生命力を補充していることから。(「先天の本」は腎。)
項背拘急(こうはいこうきゅう)
首の後ろ側、肩、背中の筋肉の凝り。葛根湯を用いる目安となる症状。
攻法(こうほう)
病邪を攻めて除去(袪邪)すること。
合方(ごうほう/がっぽう)
2種類以上の方剤を合わせて使用すること。重複する生薬がある場合は、原則として分量の多い方剤の量に順じる(が、エキス製剤ではそれができないので過量になることがあり注意が必要)。
攻補兼施(こうほけんし)
病邪を除去する治療(攻法)と体の抵抗力を補う治療(補法)を同時に用いること。一般的によく用いられる治療法だが、実際には病邪の勢いの程度と正気の衰弱の程度に応じて、攻法と補法の割合は変わる。
洪脈(こうみゃく)
ゆったりとした大きい脈形で、拍動が力強い。脈が来るときの方が去るときより力強い(来盛去衰)。裏実熱をあらわす。
膏淋(こうりん)
尿が米のとぎ汁様に混濁し、排尿痛を伴うもの。(排尿痛がなくて尿が混濁しているものは、たんに尿濁という。)
拘攣(こうれん)
筋肉の異常な緊張。
五液(ごえき)
五つの体液。涙・汗・涕(鼻水)・唾・涎。それぞれ五臓と対応していて(涙→肝・汗→心・涕→肺・唾→腎・涎→脾)、その臓の不調によって何らかの影響が現れてくるとされる。
五行論(ごぎょうろん)
五行学説。宇宙に存在するあらゆる物(もちろん人間のからだも)や性質を「木・火・土・金・水」に代表される5つの要素に分類し、相互の関係を解釈しようとする哲学的思想。古代の人の長期にわたる観察から獲得された理論。東洋医学においては、体の内臓・組織・器官・情志あるいは薬物の性味をそれぞれ五つに帰属させて治療原則を探る。
五更瀉(ごこうしゃ)
毎日の、夜明け前、気温のもっとも低くなる早朝に起こりやすい水瀉性下痢。鶏鳴瀉。鶏鳴下痢。脾腎陽虚の特徴。
胡臭(こしゅう)
わきが。
五心煩熱(ごしんはんねつ)
胸中、手のひら、足のうらがほてる、わずらわしい熱感。陰虚の特徴。
固渋法(こじゅうほう)
固渋や収斂の作用をもつ薬物で、正気や体液などが漏れないように、あるいは消耗しないようにすること、具体的には汗、咳、下痢、遺精、出血、帯下などを止める治療法。参照⇒収渋薬
五性(ごせい)
生薬や薬膳などの温度にかかわる性質。熱・温・平・涼・寒。熱性のものほど体を温め、寒性のものほど体を冷やす。どちらでもなければ平性。
後世派(ごせいは)
陰陽五行の理論を重視して治療を行った一流派。後世方派(ごせいほうは)ともいう。理論的に解説できる一方、理屈が先行しており実践的ではないとの指摘も受ける。弁証論治を継承しており、患者の病証をもとに一から処方を組み立てるため、症状に従って使用される生薬の種類が多くなる傾向がある。田代三喜、曲直瀬道三などにより発展。江戸初期までの日本の医学の主流。中国では時方派という。関連語⇒古方派(こほうは)・折衷派(せっちゅうは)
固摂(こせつ)
  作用。気の機能のひとつ。体内の液体物質(血液や津液、汗や尿、精液など)が漏れ出さないようコントロールしている。また、臓器を一定の場所に固定して下垂を防いでいる。
枯燥(こそう)
皮膚に光沢がなくガサガサしていること。血虚の特徴。
五臓神(ごぞうしん)
脳の機能と五臓の生理機能はお互いに影響をし合っているという認識から、脳の精神・意識・思惟活動を五臓にも分属させて表現する。「心は神を蔵し喜を主る、肺は魄を蔵し悲を主る、肝は魂を蔵し怒を主る、脾は意を蔵し思を主る、腎は志を蔵し恐を主る。」これをいわゆる五臓神と呼ぶ。
五臓六腑(ごぞうろっぷ)
五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)
臓や腑は、臓器そのものというよりも、そのはたらきや機能を含めた概念的なものとして考える。関連記事⇒五臓と六腑の違い
誤治(ごち)
①証の見誤りにより、漢方薬の服用後に不都合な症状が出てしまうこと。一方で、次の薬を考えるときの手がかりにもなる。
②『傷寒論』などの古典において、「〇〇湯を使うべきところ誤って瀉下させてしまったとき…」というようなくだりを誤治という。診断機器も治療マニュアルも抗生剤もない時代の、苦しんでいる人を前に、まず下痢させて悪いものを体から出したらどうだろうかとか試行錯誤していた、懸命な治療の一部でもあるが、誤治とそれで生じた症状への正しい対処法が記されていることで漢方薬の使い方が理解しやすくなっているという側面もある。柴胡加竜骨牡蛎湯や半夏瀉心湯なども、もともとは誤治への対処薬である。
五遅五軟(ごちごなん)
小児の発育不良をあらわすことば。
五遅:立遅(立てるようにならない)・行遅(歩けるようにならない)・歯遅(歯がはえてこない)・髪遅(髪がはえてこない)・語遅(話せるようにならない)
五軟:頭項軟(首がすわらない)・手軟(しっかりつかめない)・脚軟(うまく歩けない)・肌肉軟(筋肉が発達しない)・口軟(しっかり噛めない)
鼓脹(こちょう)
腹部膨満。
骨蒸潮熱(こつじょうちょうねつ)
潮が満ち引きするように、一定の時間帯に発熱する。一般に午後~夕方に体の内部から熱感があらわれ、夜半~早朝には汗が出て熱感がなくなる。陰虚内熱の特徴の一つ。
古方(こほう)
『傷寒論』『金匱要略』の方剤。中医学では経方けいほうと呼ばれる(それ以外の方剤は「時方」)。
古方派(こほうは)
江戸時代に起こった、『傷寒論』『金匱要略』の実践的理論を尊重して治療を行った一流派。古医方派(こいほうは)ともいう。基本的に古典(先人がまとめた治療マニュアル)に書かれていることを模範とし、使用される方剤の生薬構成は比較的シンプルである。吉益東洞など。証(臨床の症候)とそれに対応する方剤を結びつける「方証相対」という日本独自のシステムが広まった。中国では経方派という。関連語⇒後生派(ごせいは)・折衷派(せっちゅうは)
五味(ごみ)
5つの味。酸・苦・甘・辛・鹹(しおからい)。味をあらわす以外に、からだに対する作用・効果を示す意味もある。参照⇒生薬の味(五味)について

 

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