疎経活血湯(そけいかっけつとう)の解説
疎経活血湯は、
組織に溜まった余分な水を排泄したり、筋肉や腱などの部分の瘀血をとったりすることにより
経絡の気血の流れを回復させる漢方薬で、
それによって「痛み」や「しびれ」の治療に用いられています。
疎経活血の意味
名前の最初の「疎」は、意思疎通などで使われる、疎通の意味で、ふさがっていたものが通じることを指します。「うとい」ことではありません。(本来は「疏」が正しい?)
次の「経」は経絡のことなので、
「疎経」とは、経絡が通じるようになることです。
経絡は気血の運行ルートです。
経絡が通じるようになれば、「血」の流れも活発になります。つまり活血させます。
だから、疎経により活血する薬ということで、「疎経活血湯」。
疎通による鎮痛
そして、
「不通則痛(通じざれば則ち痛む)」の漢方的理論がありますので、
通じていないために痛みが起きているならば
「通則不痛(通じれば即ち痛まず)」です。
疎通によって痛みが止まります。
経絡の流れを悪くしている「湿邪」を除く
経絡の流れを悪くしている原因には、風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、湿邪(しつじゃ)が考えられます。
例えば、湿邪があることの特徴として「重だるさ」「痛みとしびれ」が生じます。
疎経活血湯は、風・寒・湿すべてに対応できますが、
特に、経絡上の湿邪を除くための生薬がたくさん配合されて、
基本的に疎経活血湯は、「痛み」または「しびれ」の症状に対して使われています。
構成生薬
17種類もの生薬が配合されている多味の方剤です。
※の当帰・芍薬・地黄・川芎の4つが配合されているので四物湯がベースの構成…補血薬。
桃仁・牛膝は駆瘀血薬。
茯苓・蒼朮は利水薬。
他の防已・防風・羌活・威霊仙・白芷は止痛のための薬です。
蒼朮か白朮かについては、どちらでも可ですが、経絡上の風湿を除くという目的で使うなら、蒼朮の方が適しています。
効能・適応症状
体力中等度で,痛みがあり,ときにしびれがあるものの次の諸症:
関節痛,神経痛,腰痛,筋肉痛
で、具体的には、
次のような症状に使われることがあります。
- 腰痛(椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、ぎっくり腰など)
- 関節痛(変形性膝関節症、慢性関節リウマチ、痛風など)、肩関節周囲炎
- 神経痛(坐骨神経痛、上下肢神経痛)
- 筋肉痛(ねちがい、五十肩)
- 末梢神経障害、脳卒中後遺症
- こむらがえり、腱鞘炎(テニス肘、ばね指)、手根管症候群
作用の特徴
配合されている生薬の特徴
配合生薬の多い漢方薬であり、
痛みに対しても、広範囲に用いられています。
痛みやしびれを除くために配合されているのが防已・防風・羌活・威霊仙・白芷。
これらは痛みの原因である経絡上の風湿(風邪+湿邪)を除くはたらきがあります。
そこに経絡以外の、余計な水滞(湿)を除く蒼朮・茯苓も足されています。
桃仁・牛膝には活血のはたらきがあります。
それだけではなく、四物湯(当帰・芍薬・川芎・地黄)がベースとして入っています。
つまり、痛みを止めるのと、活血させるのと、それに最も重要なのが、
「血虚」(栄養状態が悪い)に対しての処方でもあることになります。
もともと虚弱で、栄養状態が悪い人が、血の流れも悪くて、そこに痛みが現れだした場合や、
または、痛みが長期にわたって続いている人の、それとともに生じた瘀血や血虚もあわせて改善する薬となっています。
痛む場所の特徴
疎経活血湯は「腰から下肢にかけての痛みに用いる」と言われることがありますが、
これは「湿邪」というものが(湿は重いので)下半身を冒しやすいからです。
逆に「風邪」だと上半身に症状が出やすくなります。
疎経活血湯は、手足のしびれ、肩関節も含め・腰・膝など上半身でも下半身でも対象になります。
痛みの特徴
血虚や瘀血の存在があるとすれば、
「さすったり押したりすると増す痛み」
または
「夜になると増す痛み」
というのが特徴ですし、
また、生薬としては温性のものが多いことから、
「冷えると増悪する(慢性の)痛み」
に用いられることが多くなります。
逆に、患部が赤くて炎症しているような強い痛みにはあまり用いられません。(竜胆には清熱・消炎作用があります)
注意点
胃腸をフォローするような陳皮・生姜・甘草も含まれてはいますが、
四物湯で起こりやすい副作用と同様に、
地黄や当帰などで、胃腸障害(腹痛、下痢など)を起こすことがあります。
空腹時に服用すると胃もたれや胃痛が起きやすい場合は、食後に服用しても構いません。
飲酒は(湿邪ですから)控えましょう。(まず少なくとも週に数日飲まない日をつくってみて)
その他、用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。
1カ月位服用しても効果を感じない場合は、薬が合っていない可能性がありますので、専門家にご相談ください。
出典
『万病回春』(16世紀)
「偏身走痛し、日軽く夜重きは、これ血虚なり。」
「偏身走痛して刺すが如く、左足痛とくに甚しきを治す。左は血に属す。多くは酒色損傷によって筋脈虚空にして風寒湿を被り、熱内に感じ、熱は寒に包まれ、すなわち痛み筋絡を傷る。これ昼軽く夜重しをもって、よろしく疎経活血行湿をもってす。これ白虎歴節風(関節リウマチ)に非ざるなり。」
⇒全身に痛みが走って、昼は軽く夜に重くなるのは、血による栄養作用が足りないからです。
疎経活血湯は、全身に痛みが走って刺すようで、左の足の痛みがひどいのを治します。これは血の問題です。多くは飲酒や色情の過多によって筋も脈も空虚となり、風寒湿の邪を受ければ熱を内に感じ、寒に包まれて痛み、筋や経絡が障害されます。そのため昼は軽く夜重いのですから、疎経・活血・行湿するのが良いのです。
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