過敏性腸症候群(IBS)の漢方薬
「大事な場面になるとお腹が痛くなる」
「出かける前にトイレの場所が気になってしまう」
「病院では異常がない。でも症状がつらい」
そんな過敏性腸症候群の悩みに、漢方でアプローチしてみませんか?
漢方では、過敏性腸症候群は心と体のバランスの乱れととらえます。
あなたの体質に合わせて、内側からやさしく整えていきます。
過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群は、検査では異常が見つからないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・ガス・腹部の張りなどが慢性的に続く状態です。
特に以下のような特徴があります:
- 緊張やストレスで症状が悪化する
- 出勤・通学・会議前に腹痛や便意が起こる
- トイレの不安で外出を控えてしまう
- 下痢と便秘を繰り返す/ガスがたまる
病院では「異常なし」…でもつらい方へ
「検査しても異常がない」
「整腸剤・下痢止め・便秘薬を出されるだけ」
「改善しないまま、薬を飲み続けている」
こうしたお悩みを持つ方に、漢方は体質からのアプローチを行います。
「気の乱れ」「胃腸の虚弱」「冷え」「巡りの滞り」など、根本にある原因を見極めて処方します。
過敏性腸症候群を漢方ではどう考えるか?
東洋医学では、心と体を一体のもの(心身一如)として捉えることに長けていますので、
過敏性腸症候群のような、消化器の症状とストレスなどの精神症状とが絡んでいる疾患にも、漢方薬は適しています。
過敏性腸症候群の原因は人それぞれ異なります。
症状としては下痢型、便秘型、交替型(不安定型)などに分類されますが、過敏性腸症候群は自律神経系の乱れが消化器系に影響して症状があらわれることから、漢方ではとくに脾(胃腸虚弱)と肝(ストレス)の状態を分析して薬を選びます。
主に、以下のように分類できます。
- ストレスで自律神経が乱れ → 肝気鬱結
- 胃腸の弱さ → 脾胃虚弱
- 過労・飲食の不摂生 → 脾腎陽虚
原因が同じであれば、下痢であっても便秘であっても同じ漢方薬が使われることもあります。
漢方薬
過敏性腸症候群に使われる代表的な漢方薬
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
- 過敏性腸症候群に対してファーストチョイスとなることが多い代表的な漢方薬
- 腹痛、下痢、便秘、または下痢と便秘を繰り返すタイプ、しぶり腹、腹部膨満感などに、幅広く使用できます
桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
- 桂枝加芍薬湯に瀉下作用のある大黄を加えたもの
- 特に便秘と腹痛が強い症状に用いられます
小建中湯(しょうけんちゅうとう))
- 桂枝加芍薬湯に膠飴を加えたもの
- より虚弱体質で疲れやすく、下痢と便秘を繰り返す方に
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
- ストレス性の下痢や腹痛、または下痢や便秘を繰り返すものに用いられます
- 下痢の方は、食べるとお腹がゴロゴロと鳴って、下してしまうような方に、
- 便秘の方は、下剤を服用すると下痢や腹痛が起こってしまうような方に、使われています
加味逍遥散(かみしょうようさん)
- のぼせやイライラのある方、心の奥に怒りの感情を抱いている方
- それによって胃腸の働きが悪くなり、便が出にくい、残便感が強いタイプに用いられます
- 女性の場合は、症状が月経と関係して強弱することがあります
その他の漢方薬
- 四逆散(しぎゃくさん)
…緊張・不安が強くて、便秘になるような場合 - 真武湯(しんぶとう)
…体が冷えていて、下痢、常に元気がない、歩いていてもフラフラとする人に - 人参湯(にんじんとう)
…胃腸の冷えが強くて下痢しやすく太れない、疲れやすいなど - 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
…ストレスによる腹痛、胸脇苦満 - 大建中湯(だいけんちゅうとう)
…お腹の冷えによる、腸の蠕動亢進・腹痛・腹部膨満 - 胃苓湯(いれいとう)
…胃もたれ・消化不良の下痢、腹痛 - 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
…半夏瀉心湯の甘草を増量したもので、より精神症状や下痢、腹鳴の強いもの - 六君子湯(りっくんしとう)
…胃腸が弱くて体力がない、食欲がない、食事のたびに下痢が心配になる - 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
…お腹が急に引きつったように痛むときに頓服で用いる
等々
過敏性腸症候群の方は、どちらかという虚証のタイプが多いですので、西洋薬では副作用が心配な方も多いかもしれません。
漢方薬には、虚証向きの方剤もたくさんありますので、ぜひ取り入れてみてください。
過敏性腸症候群改善のための養生アドバイス
生活
- ストレスへの対策をする(十分な睡眠・趣味・適度な運動・入浴など)
- 夜遅い時間の食事や飲酒を避ける
- 夜更かしをせず、疲労をためない
- できるだけ起床、食事、睡眠の時間を毎日一定にする
- 早く起きて、朝食の時間とトイレに座る時間を充分に確保する
- そして時間的余裕を持って家を出る
- お腹や足腰を冷やさないように気をつける
- 腸内環境を整える
- 軽い運動や呼吸法、瞑想などで自律神経を整える
食事
- 基本的には食べてはいけないものはないので、神経質になる必要はありません
- 食物繊維をとることを心がけて、色々な食品をバランスよく摂る
- 腸にやさしい発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト)
- ゆっくりとリラックスして食べること
- 冷たいものや香辛料などの刺激が強いもの、カフェイン、アルコールは一度に摂り過ぎない
- 低FODMAPダイエット(消化吸収されにくいために腸内で発酵してガスを産生しやすい糖類を含む食品の摂取を制限する食事療法)
便秘や下痢の症状に応じて↓も参考にしてください。


