麻黄(マオウ)エフェドリンの作用と副作用|禁忌・併用注意・ドーピングまで
漢方薬は自然由来だから「副作用が少ない」と思われがちですが、配合生薬によっては作用がはっきりしている分、注意点も明確なものがあります。
代表例が麻黄(マオウ)です。
麻黄にはエフェドリン類(エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン等)が含まれ、咳・鼻づまりに非常に有用な一方で、動悸・血圧上昇・不眠などの副作用が起こり得ます。
この記事では、麻黄の作用を「なぜ効くのか」から、避けるべき人、併用注意、胃薬との関係、さらにドーピングまで、薬剤師の視点で重要なポイントをまとめます。
特に高血圧の方/心臓の病気がある方/高齢の方/不眠がある方/前立腺肥大のある方/アスリートは、必ず最後まで確認してください。
麻黄が含まれる代表的な漢方薬(葛根湯・小青竜湯など)
麻黄は、主に発汗(体表の邪を散らす)、鎮咳・平喘(咳をしずめ呼吸を楽にする)などを目的に、さまざまな方剤に配合されます。配合量は処方により異なります。
「市販薬でよく見かける漢方薬」にも含まれるため、複数の麻黄含有製剤を併用して飲むことで副作用が出やすくなる点も要注意です。
麻黄(マオウ)とは|含まれる成分の特徴:エフェドリン
生薬としての「麻黄」
「麻黄」は乾燥地に生育するマオウ科の常緑小低木(樹高30~70cm)
基原植物として
Ephedra sinica,
E. intermedia,
E.equisetinaの3種が使用されていて、
薬用部位は地上茎です。(根は除きます)
茎は細長くて、多くの節があります。
それを乾燥したものが生薬として使われます。

局方の「麻黄」(去節)の刻み
麻黄の主な成分
麻黄の作用の中心になるのが、アンフェタミン誘導体ともいえるエフェドリン系アルカロイドです。
麻黄には主要成分として、エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、ノルエフェドリンなどが含まれます。
麻黄の作用の多くは、このエフェドリン系アルカロイドの交感神経刺激作用と考えてもいいくらいです。
日本薬局方でも、麻黄はエフェドリン系アルカロイドを0.7%以上含むものと規定されています。
エフェドリンの主な作用(咳・鼻づまり・血圧)
医療用のエフェドリン塩酸塩製剤は、咳・鼻粘膜の腫れ、麻酔時の血圧低下などに用いられます。麻黄が効くときも、基本は同じ方向の作用が関与します。
- 気管支平滑筋をゆるめる(呼吸が楽になる)
- 鼻粘膜の血管を収縮させ、腫れ・鼻づまりを抑える
- 交感神経刺激により血管収縮→血圧が上がりやすい
この「交感神経刺激」が、メリットにもリスクにもつながります。
麻黄で起こりやすい副作用(動悸・血圧上昇・不眠・排尿障害)

麻黄を含む漢方薬で問題になりやすいのは、交感神経刺激と中枢興奮作用です。起こりやすい副作用は次のとおりです。
これらは「たまたま起こる」というよりも、エフェドリン類の薬理作用として起こり得る反応です。
「漢方だから安全」という理解は危険で、体質・基礎疾患・併用薬をふまえた適正使用が必要です。
麻黄の使用にとくに注意が必要な人
次に該当する場合、麻黄含有製剤は原則として慎重に使用してください。
- 高血圧、不整脈など循環器疾患がある
- 狭心症・心不全など心臓の病気がある
- 不眠、強い不安、興奮しやすさがある
- 前立腺肥大など排尿トラブルがある
- 高齢で複数の薬を飲んでいる(相互作用・過量になりやすい)
特に、高血圧の人、心臓に疾患のある人は要注意であり、とくに循環器系の病態が悪化すると危険な人は、原則、「麻黄」は服用すべきではありません。(もし服用するときは短期間のみです。)
眠気が出ない=メリット、とは限らない
葛根湯や小青竜湯が「抗ヒスタミン薬みたいに眠くならない」と言われることがありますが、麻黄が関与している場合、覚醒方向に働くため当然ともいえます。
使い方を間違えると、逆に眠れない・落ち着かないなどが続いてしまうことがあります。
漫然と続けず、早めに相談してください。
通常の用法用量では大きな問題にはならないと思いますが、赤ちゃんが寝てくれない等が気になる場合は、使用は慎重にし、医師・薬剤師に相談してください。
一方で、乳汁移行よりも「乳汁分泌の低下」を懸念される場合もあります。授乳初期や母乳量が安定していない時期には慎重に。

排尿困難・尿閉に注意(特に前立腺肥大)
エフェドリン類が尿路の平滑筋や交感神経系に影響すると、排尿困難・尿閉が悪化することがあります。
麻黄が配合されている漢方薬のすべてで起こるということでは決してありませんが、
前立腺肥大がある方が、感冒時に麻黄附子細辛湯などを使って「尿が出にくくなった」と感じる場合は、麻黄の影響も疑います。市販のかぜ薬などにはエフェドリン系以外にも尿閉を起こしやすい成分を含むものが多数ありますので、併用薬にも注意してください。
(これはあくまで麻黄の副作用の話であり、麻黄と他の生薬との組み合わせによっては、利尿効果が得られる場合もあります)
その他の副作用
その他の副作用として、
胃腸の弱い方では、食欲不振、腹痛を起こす可能性があります。
またすべての生薬に言えることですが、薬疹や肝機能障害が起こることもあり得ます。異変があれば中止し受診してください。
服用時の注意点|いつ飲む?胃薬(PPI・H2ブロッカー)との関係

食前なら安全、ではありません
一般的に、漢方薬は食前(空腹時)に服用するのが良いと言われています。
その理由の一つとして、
胃内pHの関係で、「空腹時の方がアルカロイドの吸収が抑えられるから副作用が出にくい」と説明されることがあるかもしれません。
しかし、食前に飲めば副作用が出ないから安全だとは絶対に言えません。
麻黄を含む漢方薬は「いつ飲むか」より先に、そもそもその漢方薬の服用が適しているかが重要です。
胃薬との併用に注意
繰り返しますが、麻黄のエフェドリンはアルカロイドであり、アルカロイドの吸収は胃内のpHの影響をうけます。
通常は、胃内のpHは胃酸があるため酸性です。
しかし、逆流性食道炎の薬(プロトンポンプ阻害薬)や、ガスターなどで知られるH2ブロッカーというのは、胃酸を減らして胃内のpHを高めます。
よって、そのような胃薬を併用している場合は、通常よりもエフェドリンなどのアルカロイドの吸収が高まると考えられます。
つまり副作用も起こりやすくなる可能性があります。
(逆に、葛根湯や麻黄湯をお湯で溶いて服用した方が良いと言われる理由の一つは、胃内pHの上昇により、麻黄の効果がより速やかに表れやすいから、という側面もありますが。)
麻酔時は申告を
中枢興奮作用があるわけですので、
麻酔薬の効き方に影響を及ぼす可能性があります。
手術や検査の予定がある場合、麻酔薬を使用することが分かっている場合は、可能な限り、あらかじめ麻黄の摂取は控えておいた方が良いと思います。
麻黄を含む漢方薬や市販の感冒薬の使用があるときは、事前に医療者へ伝えてください。
西洋薬との併用で作用が強まることがあります
すでに、交感神経刺激作用のある薬、中枢神経興奮作用のある薬、強心作用のある薬などを服用されている場合、
麻黄と併用することで作用が増強されるおそれがあります。
キサンチン系製剤
甲状腺ホルモン剤
MAO阻害剤
ジギタリス製剤
など
また、尿のアルカリ化剤は、エフェドリンの尿からの排泄を減少させる可能性があります。
逆に上記と反対の作用の薬剤と併用すれば、作用の減弱が考えられます。
α遮断薬や、β遮断薬、硝酸薬など。
心配なときは予め、処方医やかかりつけ薬剤師にご相談ください。
麻黄はドーピング検査の対象|アスリートが確認すべきこと
覚せい剤原料として、覚せい剤取締法によって規制されるのは、エフェドリンを10%以上含有するものです。
それに比べれば麻黄のエフェドリン量は微量ですので、漢方薬が覚せい剤として問題になることはありません。
しかし、
エフェドリンの類はドーピング検査では禁止薬物であり、「麻黄」も対象です。
漢方薬は「うっかりドーピング」の例が多いです。スポーツ選手の方(スポーツ選手に漢方薬を販売される方)は気をつけておかなければいけません。
※昔の参考書には「半夏(ハンゲ)にもエフェドリンが微量含まれている」と記載されていることがありますが、現在は否定的に扱われることが多く、根拠の取り扱いには注意が必要です。
※一般の方が、麻黄からエフェドリンを単離しようとするのは違法です。
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