にきび・吹き出物|漢方で内側から整える肌ケア

にきびや吹き出物の漢方薬

内側から整える、肌の自己治癒力。繰り返さない素肌を目指して。

にきびや吹き出物は、単なる「皮膚の表面の問題」ではありません。
皮脂や毛穴の詰まり、アクネ菌の繁殖などの直接的要因のほか、ホルモンバランスの乱れ、胃腸機能の低下、ストレスや睡眠不足など、体の内側の不調が深く関係しています。
漢方では、このような肌トラブルを「熱」「湿」「瘀血(おけつ)」「血虚」などの体質的背景から捉え、根本原因を改善することで、繰り返さない健康な肌を目指します。
体質改善で、見た目の変化だけでなく、生活の質そのものを向上させます。

症状の原因

にきびは、思春期にホルモンの影響で起こるものの他、
思春期以降は、胃腸の問題、チョコレートなどの甘いものや油ものの摂り過ぎ、月経周期の問題、ストレスや睡眠の問題、便秘といったものが影響して起こるものがあります。

【西洋医学的な原因】

にきび(尋常性ざ瘡)は、毛包と皮脂腺の慢性的炎症で、次の4つの要因が複合的に関わります。

  1. 皮脂分泌の増加
    思春期や生理前、ストレス時にアンドロゲンが増加し、皮脂分泌が過剰に。
  2. 毛穴の閉塞
    古い角質や皮脂が毛穴に詰まり、アクネ菌の温床に。
  3. アクネ菌の増殖
    毛穴内で増殖し、炎症を引き起こす。
  4. 炎症反応
    免疫反応により赤み・腫れ・膿が生じる。

【漢方医学的な原因】

漢方では、にきび・吹き出物を「肌に現れた内臓の不調」として捉えます。主な原因は以下の4つです。

  • 熱毒型:体内にこもった熱(実熱)が炎症を悪化させ、赤く腫れる
  • 肝火型:ストレスや感情の高ぶりで肝に熱がこもり、顔に炎症を引き起こす
  • 血瘀型:血行が滞り、赤黒く色素沈着しやすく、炎症や跡が長引く
  • 血虚型:血の不足で皮膚に栄養が届かず、回復が遅れる

これらは単独で現れる場合も、複数が組み合わさる場合もあります。
体質を見極め、根本から整えることが改善への近道です。

漢方では皮膚は「肺」や「脾(胃腸)」の健康状態を映す鏡とされ、消化吸収や水分代謝、ストレスによる気の停滞など全身の状態を総合的に判断します。

 にきび・吹き出物 漢方4タイプ分類チャート

タイプ別の漢方薬例

1. 熱毒型(赤く炎症が強いタイプ)

体質の特徴
顔や背中に真っ赤なにきびが出やすく、腫れや熱感が強い。痛みやズキズキ感を伴うことが多く、触れると悪化する傾向。時に化膿します。便秘傾向や口の渇き、イライラしやすさを伴うことも多い。

発症の背景(漢方的解釈)
体内に「実熱(余分な熱)」がこもり、それが皮膚表面に押し出されて炎症を引き起こしている状態。暴飲暴食、脂っこい食事、香辛料の多い食事、ストレスや寝不足が火に油を注ぐ形で悪化させます。

代表的処方の作用

  • 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
    …上半身にこもった熱を冷まし、炎症を鎮めると同時に、皮膚表面の代謝を促進。若者の、鼻の周囲・頬・額の赤く腫れたにきびに適応します。
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
    …強い清熱作用で熱邪を冷まし、炎症を抑えます。赤みが強く、化膿、痛みや痒みを伴うにきびに有効です。

2. 肝火型(ストレス・情緒の変動で悪化しやすいタイプ)

体質の特徴
額やこめかみ、あご、耳の下、に赤く硬いにきびが出やすく、症状がストレスや怒り、緊張の後に悪化しやすい。口が苦い、目の充血、肩こり、月経前の悪化などを伴うことも多い。

発症の背景(漢方的解釈)
「肝」は気血の流れを調整し、感情とも深く関係します。強い緊張・ストレスや感情の抑圧が続くと、肝に熱がこもり「肝火」となります。この火が上昇して顔面の皮膚に炎症を生じさせ、にきびや吹き出物を悪化させます。暴飲暴食や夜更かしは火をさらに強めます。

代表的処方と作用

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
    …更年期、月経前の悪化、ストレス、イライラまたは落ち込み、不眠、のぼせをなど伴う場合に。
  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
    …アレルギー体質だったり、精神的にも敏感なタイプ。脂性肌で、炎症が慢性化しているものに適応します。

3. 血瘀型(赤黒く治りにくいタイプ)

体質の特徴
赤黒く硬いしこり状のにきびや、治った後も色素沈着が長く残る。肌の新陳代謝が遅く、月経痛や生理不順、肩こり、冷えを伴うことが多い。

発症の背景(漢方的解釈)
「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血行不良が原因で、肌の再生が遅くなり、炎症後の跡が長引く状態。ストレスや冷え、慢性炎症が背景にあります。

代表的処方と作用

  • 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
    …血行を促進して瘀血を取り除き、皮膚の修復を助けます。色素沈着やニキビ跡の凸凹にも適応します。
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
    …桂枝茯苓丸よりも瘀血の停滞が強いものに用いられ、冷えのぼせ、便秘傾向にも対応。月経に伴い増悪する場合にも適します。

4. 血虚型(肌の栄養不足・回復力低下タイプ)

体質の特徴
肌の色艶が悪く、青白いまたはくすみやすい。にきびができても治りが遅く、跡が残りやすい。乾燥や軽いかゆみを伴うこともあり、疲れやすい、めまい、爪や髪が弱いといった全身症状を伴うことが多い。

発症の背景(漢方的解釈)
「血虚」により皮膚への栄養と潤いが不足し、再生能力が低下している状態。長期の病気や過度なダイエット、慢性的な胃腸の虚弱、月経過多や出産後などで血が不足することが原因になります。

代表的処方と作用

  • 四物湯(しもつとう)
    …血を増やし、皮膚の修復と潤い保持をサポート。肌のバリア機能を回復させ、再発予防にも有効。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    …なかなか大きくならない白いニキビがポツポツできるタイプに。冷えやむくみを伴う血虚タイプの女性に適応します。

その他の漢方薬

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)…強い赤みのない急性期のニキビ

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)…なかなか排膿しない場合に

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)…飲食の不摂生で胃腸が弱って生じるニキビ

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)…肥満、常習的な便秘がある場合に

など。
現在のニキビの状態を改善するために漢方薬を選ぶ方法と
ニキビのできにくくするための体質に合わせた漢方薬を選ぶ方法とがあります。

体質・体調に応じて適した処方をご提案いたします。

タイプ別 養生法(生活・食事)

にきびや吹き出物の改善には、漢方薬による体質調整と同じくらい、毎日の生活習慣の見直しが大切です。

1. 熱毒型の場合

熱毒型は、体内にこもった熱が炎症となって肌表面に現れます。このタイプの養生では、「熱を生むものを減らし、熱を冷ますものを取り入れる」ことが大切です。
食事では、揚げ物や脂っこい肉料理、チーズやバターなどの高脂肪食品を控えましょう。香辛料やアルコールも体内に熱を生むため、症状が落ち着くまでは避けることが望ましいです。代わりに、きゅうり・トマト・れんこん・大根などの清熱作用を持つ野菜を積極的に摂りましょう。緑茶やはと麦茶も体内の熱と湿を取り除くのに適しています。
生活面では、夜更かしは炎症を悪化させるため、早寝早起きを心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。日中の強い日差しも炎症を助長するため、外出時は帽子や日傘で紫外線対策を行うと良いでしょう。

2. 肝火型の場合

肝火型は、精神的な緊張や怒り、抑圧された感情によって肝の働きが乱れ、熱が上昇して炎症を引き起こします。このタイプでは「肝の熱を鎮め、気の流れをスムーズにする」ことが重要です。
食事では、辛味や脂っこい料理、アルコールをできるだけ控えましょう。特に刺激物は肝火を強めます。代わりに、セロリ・菊花・ミント・レモンなど、香りがよく肝の気を巡らせる食品を取り入れると良いでしょう。緑茶やジャスミン茶もおすすめです。
生活面では、ストレスをためない環境づくりが大切です。仕事や勉強の合間に深呼吸をする、軽いストレッチや散歩を習慣にするなど、感情の高ぶりをクールダウンさせる時間を作りましょう。また、スマホやPCの長時間使用は神経を緊張させるため、休憩時間をこまめに取り入れることも有効です。

3. 血瘀型の場合

血瘀型は血流の滞りが原因で、肌の新陳代謝が低下し、にきび跡や色素沈着が残りやすくなります。このタイプの養生では「血行を促進し、滞りを取り除く」ことがポイントです。
食事では、冷たい飲み物や生野菜の食べすぎは血行を阻害するため控えめにします。代わりに、生姜・玉ねぎ・にら・黒酢・サバ・イワシなど、体を温めて血の巡りを改善する食品を積極的に摂りましょう。特にサバやイワシなどの青魚はEPA・DHAが豊富で、血液をサラサラにする作用があります。
生活面では、長時間同じ姿勢で過ごさないことが大切です。デスクワークの方は1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かしましょう。また、入浴はシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくり浸かって血流を促すことが有効です。

4. 血虚型の場合

血虚型は、血が不足して皮膚に十分な栄養と潤いが行き渡らず、回復力が低下している状態です。このタイプでは「血を補い、肌の栄養状態を改善する」ことが最優先です。
食事では、レバー・赤身肉・まぐろ・カツオ・黒ごま・ほうれん草・人参など、血を作る作用のある食品を積極的に摂りましょう。甘味では黒砂糖やなつめ(棗)がおすすめです。冷たい飲食や過度な生野菜は胃腸を冷やして消化吸収を妨げるため控えめにします。
生活面では、無理なダイエットや過労を避け、十分な休養を取ることが大切です。睡眠不足は血の生成を妨げるため、できるだけ日付が変わる前に就寝しましょう。また、軽い運動は血の巡りを改善しますが、過度な運動はかえって血を消耗するため注意が必要です。

このように、日々の食事・睡眠・運動・ストレス管理を整えることは、漢方薬の効果を最大限に引き出し、肌トラブルの根本改善と再発予防に直結します。

 

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