大防風湯(だいぼうふうとう)の解説
大防風湯は、おもに慢性の関節痛(とくに膝)に用いられています。
気血を補う生薬がベースに配合されており、体力の衰えた高齢者、やせている方、虚弱な方に適した漢方薬です。
倦怠感、冷え、栄養不良をともなう、慢性の膝関節痛に用いられます。
構成生薬について
大防風湯には、15種類の生薬が配合されています。
当帰・芍薬・川芎・地黄の4つで、四物湯。(血を補うのに欠かせない)補血剤の基本方剤です。
黄耆・大棗は、気を補います。
人参・甘草・乾姜・朮で、人参湯。(附子も合わせれば附子人参湯)
ですので、消化器を温めならがら機能を改善して、栄養状態を高めようという配合があります。
さらに四物湯+人参・黄耆というところは、十全大補湯と共通です。
十全大補湯の、桂皮と茯苓以外はすべて大防風湯にも入っていることになります。
まずここまでで、大防風湯が虚証向きの漢方薬であることが明らかです。
そして、防風・杜仲・羌活・牛膝が、筋骨を丈夫にし、痛み、しびれやマヒ(下肢に力が入らないなど)を改善する生薬です。
とくに牛膝は、腰や膝のだるい痛み、下肢の関節の腫れなどの症状に対して適します。
附子は冷えをともなう痛みに適します。
また、エキス製剤ではめずらしいのですが、温める作用の強い、附子と乾姜が両方とも配合される点も大防風湯の特徴です。
効能効果
添付文書上の効能効果
関節がはれて痛み、麻痺、強直して屈伸しがたいものの次の諸症:
下肢の関節リウマチ、慢性関節炎、痛風
適応について補足と注意点
生薬構成から考えると、大防風湯には気血を補うための配合がベースにありますので、
通常は、やせている、皮膚の色つやが悪い、めまい、倦怠感、寝汗などがある場合(気血両虚証)に用いられます。
典型的な症状としては、鶴膝風といわれるもので、
下肢の筋肉はやせ細っているのに、ひざの関節の部分だけが鶴のひざのように肥大していて痛む状態です。
逆に、大防風湯には消炎の効果はほとんどありません。発病初期の患部の赤く腫れているものには使えません。関節に熱感が強いときは、桂芍知母湯が用いられます。
また身体を温める方剤ですので、冷えが強い人向きです。体力があって元気な人、暑がりな人、ほてりや熱感がある人にも用いません。
いちじるしく胃腸虚弱な場合は、地黄や当帰などによって、悪心、食欲不振、胃もたれ、下痢などの胃腸障害を起こすことがあるので注意が必要です。
出典
『和剤局方』(12世紀)
風を去り、気を順らし、血脈を活かし、筋骨を壮んにし、寒湿を除き、冷気を逐う。又痢を患いたる後、脚痛み、瘓弱にして行履すること能わざるを治す。(以下省略)
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