養生法⑧~皮膚症状の不調を整える基本ケア~

養生法 (皮膚の症状)

漢方で整える養生法|皮膚のトラブルにアプローチ

私たちの肌は、外からの刺激だけでなく、内側の状態――たとえば「ストレス」「食生活」「睡眠の質」などにも大きく影響を受けています。
漢方では、皮膚トラブルは「気・血・水(きけつすい)」や「五臓六腑」のバランスの乱れが関係していると考え、単なる対症療法ではなく、根本から体質を整えることを重視します。

このページでは、アトピーやニキビ、湿疹、蕁麻疹、帯状疱疹、しみなど、皮膚にまつわるさまざまな症状について、漢方的な養生のポイントを「生活」「食事」「代表的な漢方薬」に分けてご紹介します。
薬だけに頼らず、日々の習慣から体と肌の調子を整えていきましょう。

アトピー性皮膚炎

生活

  • ストレスを溜めない生活を意識し、睡眠をしっかりとりましょう。(不安やストレス、疲労が症状を悪化させることがあります)
  • 肌を清潔に保ちつつ、洗いすぎや熱すぎるお湯は避けましょう。
  • 木綿やシルクなど、肌にやさしい素材の衣類を選びましょう。
  • 軟膏やクリームで、皮膚を保護し、痒みを抑えましょう。(掻かないように)
  • ステロイド剤は医師の指示のもと適切に使用すること。

食事

  • 辛い物(香辛料などの刺激物)・アルコール・脂肪分の多い食品・チョコレートなどの糖分の多い食品の摂りすぎは避ける。
  • 野菜や豆類、白身魚など消化によい食材を中心に。
  • 子どものアトピーは偏食の改善を。肉・卵・牛乳などの動物性タンパクの過剰摂取と、野菜不足に注意。
  • 漢方的には皮膚の状態に合わせた食材(「熱」や「湿」を抑えるなど)を摂取するのがおすすめ(ページ下部参照)。

代表的な漢方薬

アトピー性皮膚炎は、漢方ではまず「陰虚(いんきょ)」体質を考えます。アトピー性皮膚炎で肌をかく女性
それから、「血瘀(けつお)」「「血熱(けつねつ)」「風湿(ふうしつ)」や「血虚(けっきょ)」などの関連を考えます。
かゆみや赤みが強い場合は「熱」や「風」の影響、乾燥が目立つ場合は「血」の不足や潤い不足(陰虚)が関与していることが多く、症状や体質によって使う漢方薬が変わります。
また、子どものアレルギーでは「脾気虚(ひききょ)」も考慮します。

  • 消風散(しょうふうさん):風・湿・熱を除き、かゆみや赤みをやわらげます。
  • 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):膿を持つ湿疹や皮膚炎に。化膿しやすいタイプに。
  • 当帰飲子(とうきいんし):乾燥してかゆみが強い、血虚タイプに。

湿疹や皮膚炎に用いられる漢方薬はこちら

アトピー性皮膚炎の漢方治療の特徴と注意点について


ニキビ

生活

  • 睡眠不足や夜更かしは避け、皮脂分泌のバランスを整えましょう。ニキビで鏡を見て悩む若者
  • 顔を触る癖をやめ、清潔を保つよう心がけましょう。
  • 紫外線にも注意を。
  • ストレスやホルモンバランスの乱れもニキビの要因になります。
  • 便秘の改善が有効なこともあります。

食事

  • 脂っこいもの、甘いもの、刺激物を控えめに。
  • コーヒーなどカフェインの摂りすぎに注意して。
  • 「肺」と「腸」の調子を整える食材(蓮根、ごぼう、味噌、海藻など)を摂りましょう。
  • 清熱作用をもつ野菜などもおすすめです。
きゅうり、トマト、梨、すいか、どくだみ茶、紫蘇、大根、白菜、納豆

代表的な漢方薬

ニキビは、ホルモンバランスの乱れとともに「肺・胃にこもる熱(肺胃実熱)」「ストレスによる肝火」「食べ物よる湿熱や瘀血」などが関係します。
また、長期化するもの、疲労によって悪化するものは、脾気虚や気血両虚などの体質を考慮します。

  • 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):顔の赤いニキビに。
  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):全身的な体質改善にも。

ニキビ・ふきでものに用いる漢方薬はこちら


蕁麻疹(じんましん)

生活

  • 急な温度変化やストレス、疲労が引き金になることがあります。規則正しい生活で疲れをためにないようにしましよう。
  • 入浴時はぬるめのお湯でリラックスを。
  • 症状のあるときの激しい運動は控えてください。
  • 便通も整えておきましょう。
  • 患部を掻かないようにケアしましょう。必要に応じて抗ヒスタミン薬の使用を。

食事

  • 原因が特定の食べ物である場合は摂取を控えること。
  • アルコールは症状を悪化させることがありますし、肝機能にも注意。
  • 濃い味のもの、刺激物、脂っこいもの、甘いものも控えめに。
  • 食べものはきちんと消化できるよう、よく噛んで食べましょう。

代表的な漢方薬

茵陳五苓散香蘇散十味敗毒湯など

蕁麻疹に用いる漢方薬はこちら


湿疹・痒み

生活

  • 洗剤、化粧品、白髪染めなどの薬品類に注意。
  • 通気性の良い服装(綿素材の肌着)と、適度な保湿を心がけて。
  • 汗をかいたらすぐに拭くこと。
  • かゆみが強いときは、冷やすなどして刺激を和らげましょう。
  • 肌をかきこわさないよう、爪は短く保ちましょう。

食事

  • アレルゲン食品への注意
  • 香辛料、アルコール、チョコレートなど、痒みを悪化させる食品は控えめに。
  • 白砂糖、加工食品、スナック菓子なども摂りすぎに注意して。
  • 消化に負担をかけない、バランスのとれた食事を心がけましょう。

代表的な漢方薬

湿疹や痒みは、漢方では「風」「湿」「血虚」「熱」など、複数の要因が絡んで発生するとされます。
「風」は痒みを引き起こし、「湿」は滲出液やジクジク感に、「血虚」は皮膚の乾燥や慢性化に関係します。

  • 当帰飲子(とうきいんし):乾燥して痒みが強いタイプに。
  • 温清飲(うんせいいん):乾燥気味で、赤み、熱感もあるものに。

皮膚・肌の症状に用いる漢方薬はこちら


帯状疱疹

生活

  • 免疫力が低下しているサインです。まずはしっかり休息を。
  • ストレスも免疫力を低下させます。
  • 喫煙も免疫機能を弱めます。
  • 患部への刺激は避け、清潔を保ちましょう。
  • 帯状疱疹ワクチンの接種を検討しましょう。

食事

  • 食事の不摂生、脂っこいものや刺激物は控えましょう。
    適度なタンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、発酵食品など、バランスのとれた食事を。
  • アルコールは控えめに

代表的な漢方薬

漢方では「肝火」(ストレス)や「湿熱」(暴飲暴食)、また「気血両虚」(加齢・過労)などが原因と考えます。

  • 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):急性期。肝火を抑え、湿熱を取り除く。
  • 柴苓湯(さいれいとう):分泌物が多いとき。
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):神経痛が残る場合に。

など。そのほか、板藍根(ばんらんこん)なども用いられます。ただし、帯状疱疹はウイルス感染によるものなので、症状が出た場合は医療機関を受診し、抗ウイルス薬の処方を受けることも推奨されます。


しみ(肝斑・加齢による色素沈着)

生活

  • 紫外線対策として、日傘や帽子を活用しましょう。
  • ゆったり過ごせる時間を取り、心の巡りも整えましょう。
  • 冷えは血行不良の原因になります。適度な運動も心がけましょう。

過労やストレスが「気滞血瘀(きたいけつお)」を招き、シミの原因になります。

食事

  • ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、リコピンなど、抗酸化物質を含む食材
  • イソフラボン(大豆製品)
  • 血の巡りをよくする食材(黒豆、タマネギ、青魚、黒酢など)もおすすめ。
  • 油っこいもの・甘いものは控えめに。
ピーマン、ブロッコリー、イチゴ、キウイフルーツ、ウナギ、アーモンド、アボカド、トマト

代表的な漢方薬

漢方では「血」を補い巡らせることが基本となります。

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の滞りによるシミに。
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):ストレスが影響しているタイプに。

しみ(肝斑)・肌あれに用いる漢方薬はこちら


皮膚トラブルにおすすめの養生食材まとめ

目的 おすすめ食材
湿を除く(利水・除湿) ハトムギ、小豆、とうもろこしのひげ、冬瓜、どくだみ
炎症を抑える(清熱・解毒) 緑豆、蓮根、ゴーヤ、紫蘇、香菜(パクチー)、薄荷
血の巡りをよくする(活血) 黒豆、クコの実、シナモン、パセリ、青魚
免疫力を補う(補気) 長芋、椎茸、鶏肉、卵、なつめ、玄米
乾燥を防ぐ(補陰・補血) なつめ、はちみつ、きくらげ、りんご、ほうれん草、小松菜

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