温胆湯(うんたんとう)の解説
冷えた胆(きも)を温めるという名前の漢方薬。
「胆を冷やす」とは、恐れを感じてヒヤリとしたり、不安を感じてビクビクしたりすることです。
だから逆に、冷えた胆を温めてあげれば、恐怖や不安から解放されるだろう。
そこで、不眠症や神経症に用いられる方剤に、温胆湯です。
構成生薬
悪心・嘔吐に対する基本方剤である小半夏加茯苓湯に、陳皮と甘草を加えたものが、二陳湯。
その二陳湯に、竹茹・枳実を加えると温胆湯になります。
もしくは、茯苓飲から白朮と人参を抜いて、代わりに甘草・半夏・竹茹を加えたものでもあります。
胆を温めるという名前の方剤ではありますが、とくに胆をぽかぽか温めるための生薬を配合しているわけではありません。むしろ竹茹・枳実はどちらかというと冷やす(微寒性の)生薬です。
※出典が『備急千金要方』(7世紀)とされる場合や『三因方』(12世紀)とされることもあります。また、組成も↑の構成にさらに黄連・酸棗仁や大棗が加えられているものもあります。本来は陳皮(ミカンの成熟果皮の古いもの)ではなく橘皮(ミカンの成熟果皮の新鮮なもの)となっています。
補足
温胆湯の由来に関して、出典の『備急千金要方』から。
治大病後、虚煩不得眠、此胆寒故也、宜服温胆湯方。
訳⇒大病のあと、虚煩し眠るを得ざるを治す、これ胆が寒ゆるがゆえなり、温胆湯を服すべし。
効能効果
体力中等度以下で、胃腸が虚弱なものの次の諸症:不眠症、神経症
温胆湯は、二陳湯に竹茹・枳実を加えたものでした。
二陳湯は、痰飲(痰湿)を除去する漢方薬です。
脾胃(胃腸)のはたらきを高めることで、痰飲を正常化します。
枳実は、比較的つよい理気作用があります。痞えている気をめぐらせます。
竹茹は、清熱化痰で(痰と熱が結びついて生じる痰熱からくる)煩躁を除く効果があります。不安や不眠に適します。
よって、『備急千金要方』にあるような、病後でまだ体力が戻っていないときの不眠や、
胃腸が弱い虚証タイプの不眠や神経症に用いられることになります。
加減方
温胆湯にはいくつかの加減方がありますが、代表的なものとして二つ。
竹茹温胆湯:温胆湯に「柴胡・黄連・香附子・桔梗・麦門冬・人参」を加えたもの。
加味温胆湯:温胆湯に「地黄、玄参、酸棗仁、遠志、人参、大棗」を加えたもの。
そのほか、温胆湯そのものが二陳湯をベースにする基本方剤に近いものですので、二陳湯と同様、
症状に応じて他の漢方薬と併用して応用することができます。
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