【逍遙散】と【加味逍遙散】の違い、使い分け、注意点

肝鬱に「逍遥散」と「加味逍遥散」

ストレスなどの感情によって、気分が落ち込んだりイライラしたり精神的な症状が表れているときに、 漢方では「肝鬱」(かんうつ)と表現することがあります。

現在の日本においては、ストレスなど全く縁がない、という人がいるのだろうかという社会であり、大なり小なり、みなさん肝鬱の経験があるのかもしれません。

そして、 不安、いらいらなどの精神神経症状、更年期障害、不定愁訴のような原因がはっきりしない症状を訴える方に使われる処方に

逍遙散(しょうようさん)または、加味逍遙散(かみしょうようさん)があります。

逍遙散と加味逍遙散、区別してる?

医療用のエキス製剤には「加味逍遙散」はありますが、「逍遙散」がありません。

保険診療の場合は、「逍遙散」の代用として、しかたなく「加味逍遙散」を使うか、
あるいは、もしかすると 「逍遙散」と「加味逍遙散」の違いはほとんど意識せずに使われている感じもしますけど、
当然、配合されている生薬が異なるので、「加味逍遙散」には、何が「加味」されているのかを注意点とともに整理しておきましょう。

逍遙散の構成

まず逍遙散の構成ですが

逍遙散 = 柴胡・芍薬・当帰・白朮・茯苓・生姜・甘草・薄荷

各生薬の大まかな働きは、

柴胡・薄荷 → 気うつ、精神不安を解消
当帰・芍薬 → (肝の)血を補う
白朮・茯苓・生姜・甘草 → 胃腸の機能を回復

という感じになります。

柴胡・芍薬・甘草が配合されているという点では 柴胡・芍薬・甘草 = 四逆散(-枳実)とみることができます。
四逆散は、ストレスでお腹が痛くなったり、手のひらが緊張の汗で湿っているような方に使う処方です。

当帰・芍薬は、四物湯(しもつとう)の構成生薬です。
四物湯は補血薬の基本処方ですが、婦人科においては月経異常を調整する目的もあります。

ストレスや気うつが著しいときは、消化器系に影響が現れます。
腹痛、腹鳴、軟便、下痢、便秘、食欲不振など。
逍遙散には、ここのあたりをフォローすべく、 白朮・茯苓・生姜・甘草という消化機能を改善する生薬も配合されています。

逍遙散についてはこちらも参考に→肝とストレスの影響と逍遙散について

逍遥散と加味逍遙散の違い

では、次に加味逍遙散。

加味逍遙散 = 逍遙散 + 牡丹皮・山梔子

ですので、加味されているのは牡丹皮・山梔子です。

山梔子(サンシシ)は、アカネ科のクチナシの果実
牡丹皮(ボタンピ)は、ボタン科のボタンの根の皮

クチナシの色素は着色料としても指定されていて、栗きんとん、たくあん、中華麺とか、お菓子とか、特に黄色い食べ物によく使われています。
加味逍遙散のエキスの色もやはり黄色っぽくて、ちなみにツムラやクラシエのなど24番の袋の色も黄色です。

ストレスで「肝」の気血の流れが悪くなると、肝の熱が発生しやすくなります。
その熱によって、精神不安、不眠、頭痛、炎症、湿疹、のぼせ、めまい等が起こることがあります。

加味逍遙散においては、 牡丹皮・山梔子はともに、熱の症状を抑える薬、清熱薬としての効果を期待して配合されています。
つまり、加味逍遙散は、逍遙散の症状の人で、さらに熱証がみられるときに用います。
熱とは体温計で測る熱ではありません。
口が渇く、 尿の色が濃くなる、 怒りっぽくなる などの熱っぽいときです。

加味逍遙散を使うのは「熱」がポイント

よく、「イライラなどの症状があれば加味逍遙散」と書かれていますが、イライラにもいろいろなイライラがあると思います。
ただのイライラだけであれば逍遙散でも適応内です。

山梔子と牡丹皮が必要なのは、上述したように熱の症状があるときです。
多汗、顔面紅潮、目の充血、便秘、 のぼせて熱がるとか、イライラが激しいとか、カッカして怒りっぽいとかのときには、冷やすために加味逍遙散が必要です。

また、逍遙散が適する方は通常、 ストレスがかかると食欲がなくなることが多いです。そして痩せることがあります。

逆に、やけ食いのように、ストレス時に食欲が増したり、過剰に食べたくなる場合もあります。
このときは胃の部分に熱があるための症状と考えられるので加味逍遙散が適します。

加味逍遙散の注意点

加味逍遙散の注意が必要なのは、山梔子と牡丹皮の清熱作用とは、体の内側の熱症状を抑えるということなので、 簡単に言えば、体を冷やします。
もし「冷え」の症状がみられるとか、 冷えると調子が悪くなるような人に、清熱薬を使い続けるのには問題があります。

冷えることもあれば、のぼせることもあるという人もいるかもしれませんが、
逍遙散で十分なときは、加味逍遙散で代用するのではなくて、本来であれば、逍遙散と加味逍遙散は、使い分けた方がよいということです。

加味逍遙散の解説ページはこちら

立てば芍薬 座れば牡丹

さいごに余談ですが

加味逍遙散には芍薬(シャクヤク)と牡丹(ボタン)が入ります。

「立てば芍薬、座れば牡丹」とは、美しい女性を例える言葉です。
ただし、美しいのは花ですが、生薬としては根を使います。

そこで別の解釈をしてみますと、
立てば芍薬、座れば牡丹、というのは、「腹が立てば芍薬の根、座り込んでしまえば牡丹の根 」
(いつも腹を立てている女性には芍薬、何をするにもおっくうで一度座るとそのまま座りこんでしまう女性には牡丹)

つまり、花のような容姿の美しさだけではなくて、 漢方的には、根っこの芍薬や牡丹によって、根本から健康になり美しくなれるのかもしれません。

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