専門家が肩こりに使っている漢方薬
肩こり、首のこりの漢方薬とは。
漢方薬の専門家が推奨している漢方薬は何でしょうか? 葛根湯? 桂枝茯苓丸? 芍薬甘草湯?
例えば葛根湯が肩こりに有効ということはよく知られていますが、実際に葛根湯がよく使われているのでしょうか。
肩こりにおススメの漢方薬はこれ!だなんて言えない!
先にお伝えしていきますが、
「肩こりによく効くおススメの漢方薬を一つ教えて?」ということであれば、
この記事ではお答えすることはできません。
逆に、肩こりに効く漢方薬を一つ紹介することが、そんな簡単なものじゃないよ、という記事になります。
ネットで検索してみれば、肩こりに使える漢方薬はすぐに見つかります。
しかしそれがあなたにおススメの漢方薬だということなんて言えるのでしょうか・・・
肩こりに使うとされる漢方薬の抽出
それではまず、漢方の専門家の書籍やサイトの中で、肩こり(または首コリ)に使う漢方薬としてあげられているものを抜粋します。
漢方薬の名前だけまず抽出しているので、一度ササッと目を通してみてください。
『健康保険が使える漢方薬の選び方・使い方』/木下繁太朗/つちや書店/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
- 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 大柴胡湯去大黄(だいさいことうきょだいおう)
- 大承気湯(だいじょうきとう)
- 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 七物降下湯(しちもつこうかとう)
- 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
『漢方診療のレッスン』/花輪寿彦/金原出版/
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 葛根湯(かっこんとう)
- 葛根湯加朮附湯(かっこんとうかじゅつぶとう)
- 二朮湯(にじゅつとう)
- 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
- 柴胡剤
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 抑肝散(よくかんさん)
- 治肩背拘急方(ちけんぱいこうきゅうほう)
『弁証図解漢方の基礎と臨床』/髙山宏世/日本漢方振興会/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
- 二朮湯(にじゅつとう)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
- 帰脾湯(きひとう)
『いのちを養う漢方講座』/髙山宏世/葦書房/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
- 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)
- 防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- その他、気虚の肩こりには補気の剤、血虚の肩こりには補血あるいは養血の処方
『漢方薬の考え方,使い方』/加島雅之/中外医学社/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
- 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 五苓散(ごれいさん)
- 治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
- 大柴胡湯去大黄(だいさいことうきょだいおう)
- 五積散(ごしゃくさん)
『症状・疾患別にみる漢方治療指針』/幸井俊高/日経BP社/
- 四逆散(しぎゃくさん)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 四物湯(しもつとう)
- 六味地黄丸(ろくみじおうがん)
- 葛根湯(かっこんとう)
『スキルアップのための漢方相談ガイド』/丁宗鐵/佐竹元吉/南山堂/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 逍遥散(しょうようさん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
- 独活葛根湯(どっかつかっこんとう)
- 応鐘散(おうしょうさん)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 甲字湯(こうじとう)
『病名漢方治療の実際 山本巌の漢方医学と構造主義』/坂東正造/メディカルユーコン/
- 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
- 独活葛根湯(どっかつかっこんとう)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
『皮膚科ジェネラリスト漢方』/橋本喜夫/メディカルユーコン/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 抑肝散(よくかんさん)
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
yomiDr.(ヨミドクター)ドクター柴原の漢方塾・肩こりは漢方薬で→サイト
- 桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)
- 加味逍遙散 (かみしょうようさん)
- 四逆散 (しぎゃくさん)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)
『臨床力をアップする漢方ー西洋医学と東洋医学のW専門医が指南!』/加藤士郎/中山書店/
- 葛根湯(かっこんとう)
- 四逆散(しぎゃくさん)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
『臨床応用 漢方処方解説』/矢数道明/創元社/
- 延年半夏湯(えんねんはんげとう)
どうでしょう、様々な漢方薬が登場しました。
例えばネットで「肩こり 漢方薬」で検索して出てきたサイトの、おすすめ漢方薬、口コミ、人気ランキングに挙がっている漢方薬と、同じものでしょうか。
もっとたくさんの書籍を開けば、さらに他の漢方薬も見つかるかもしれませんが、
書いている人が違えば、こんなに使うべき漢方薬が変わってくるものなのですよね。
確かに葛根湯はたくさん登場しているようではありますけれども、
少なくとも「肩こりの漢方薬=葛根湯」ではないことは一目瞭然です。
様々な漢方薬の使い分けの説明
では「なぜ肩こりに有効とされる漢方薬がこれほどたくさん出てきてしまうのか?」
各処方の使い分けはそれぞれの書籍等で解説されているわけですが、
概ね共通していると思われる内容を、私なりにまとめておきましょう。
以下のようになります。
一般的に、肩こりには葛根湯や葛根加朮附湯がよく使われている。
ただし、葛根湯には麻黄が含まれるので、高齢者や心疾患のある人、胃腸が弱い人には、麻黄の抜いた処方(桂枝加葛根湯など)を使うべきである。
一時的な肩こりは、漢方では風・寒・湿などの邪によるものが考えられるので、葛根湯の他、桂枝加朮附湯、麻杏薏甘湯、二朮湯なども選択肢としてあがる。
一方、慢性的な場合、体の内側にも問題がある。
なかでも痛みがあるということは、漢方的に言えば、気・血・津液のいずれかに停滞があることを考えなければいけない。
胸脇苦満のあるもの、または気滞によるものは、柴胡剤が中心になる。(柴胡桂枝乾姜湯・柴胡桂枝湯・四逆散・小柴胡湯・大柴胡湯・柴胡加竜骨牡蛎湯)
瘀血症状があれば、桂枝茯苓丸や桃核承気湯などであり、
精神症状を伴えば、抑肝散などである。
また、十味敗毒湯や延年半夏湯のようにちょっと意外と思われるものもあるが、これらも柴胡関連処方である。
その他、冷え、気虚、血虚などが明らかであれば、それらの必要に応じた漢方薬が使われる。
その結果として、たくさんの漢方薬の名前が登場しているのです。
つまり、漢方の専門家にとってみれば、「肩こり」というだけでもこれだけの考察があって、一つの漢方薬を導きだしているのであって、
「肩こりにおススメの漢方薬を一つ教えて?」という質問が、いやいやそんなに簡単に答えられるもんじゃないよ、ってことが分かって頂けるでしょうか。
まとめ
肩こりに使う漢方薬は、葛根湯だけじゃありません。本当にたくさんあります。
たくさんある漢方薬の中から最も適した漢方薬を自分で見つけるのは難しいかもしません。
しかしながら、例えば一つの漢方薬を試して頂いて、効果が無かったとしても、
それだけで「なんだ漢方薬は効かないのか」と思われてしまうのは悲しいです。
他にも選択肢がたくさんあるんだよということを知っておいてください。
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